TMDの分類

顎関節症T型 (masticatory muscle disorders) 咀嚼筋障害を主兆候としたもの

           主病変部位:咀嚼筋および関連諸筋群

           病   変:筋緊張、筋スパスム、筋炎 {臨床的特徴}

                ・筋痛が必発

                ・開口障害は顕著ではなく顎運動痛あり

                ・関節雑音は通常ない

                ・×線所見では異常なし

表3 筋スパズムの発生機序

1 種々な原因で筋緊張が増大→筋肉疲労

2 Actin,Myocinなどの収縮タンパクの工ネルギー源であるATPを枯渇→筋の病的状態を増悪

3 再び筋線維が有害な刺激(機械的、感情など)にさらされ→筋組織のspasmとshortening

4 局在的なspatic fiberがtrigger zone→中枢神経系を刺激

5 spasmの部位に血管収縮 6 嫌気性の代謝→乳酸を蓄積→spasmを永続せしめる。

顎関節症I型は、顎運動時、咀嚼筋群および関連諸筋群に筋肉痛、顎運動障害を主症状とするものをいう。 診断は比較的容易であり、咬筋・側頭筋・胸鎖乳突筋などを触診することにより、圧痛部位を明確にすることができる。この圧痛部位は、筋のスパスムなどによるもので、このスパスムのために顎運動障害を生ずる(表3)。 通常は関節雑音はなく、顎関節部の圧痛もないのが特徴である。

治療は、薬物療法として、中枢性筋弛緩剤(塩酸トリペリゾン300mg/日)、塩酸エペリゾン150mg/日)を投与すると同時に、全歯接触型バイトプレートを装用し、筋訓練療法(図1)、理学療法(マイオモニター)を行う。

顎関節症T型の治療法

1 薬物療法

 中枢性筋弛緩剤     ムスカルムS(300mg/日)  ミオナール(150mg/日) ムスカルムD(300mg/日)歯学部病院

 経皮的消炎鎮痛塗布剤    モビラ―ト軟膏  インドメタシンクリ―ム

2.歯科的療法         スタビライゼイション型スプリント(全歯接触型バイトプレート)

3,理学療法          マイオモニター  赤外線照射

4.筋訓練療法         レジスタント(図1)とストレッチ(術者によるマニピュレーションと自己牽引)がある。

顎関節症U型 (retrodiscal-casule-ligament disorders) 円板後部結合組織・関節包・靱帯の慢性外傷性病変を主兆候としたもの

顎関節症U型の臨床的特徴

        主病変部位:関節包、関節靭帯、滑膜

        病   変:関節包、靭帯の伸展、捻挫(微細外傷)、滑膜炎

{臨床的特徴}

       ・内在性外傷、外来性外傷の既往が明確 (不良補綴物、充填物、硬固食物の摂取、過度開口など)

       ・顎関節部の圧痛、運動痛が顕著で関節雑音はない

顎関節症U型は、外来性外傷(顎部を強打したり、歯科治療における過度開口)に起因したもの、または内在性外傷(硬固食物の無理な咀嚼・大欠伸・不良補綴物、・充填物など)により、顎関節部の疼痛を惹起したケースをいう。

すなわちこの症型は、慢性外傷性病変が主体で、靭帯・関節包の微細外傷により顎関節部圧痛・顎運動痛・開口障害の症状を呈する。

診断の決め手は詳しく現病歴の聴取および基本的診査にて前記外傷既往とその病態を明確にすることができる(表5・6)。

治療は薬物療法として消炎鎮痛剤の投与、理学療法として、ソフトレーザー・赤外線・歯科的療法として、明らかに顎関節に対し、障害となる不良補綴物・充填物の除去治療などが挙げられる。

これら保存療法にて改善しない場合は、副腎皮質ステロイド剤の顎関節腔内注入療法が有効なこともある(表7)。

また治療のポイントは靭帯・関節包の微細外傷が主体であることから、安静と消炎を図ることである。

すなわち、過度開口の禁止・硬固食物摂取の抑制など、顎関節構成体の安静を1ヵ月間程度は励行させる。

顎関節症U型の治療法

1 薬物療法     消炎鎮痛剤

2 歯科的療法   ・明らかに顎関節に対して障害となる不良補綴物、充填物の除去、治療

            ・単純挙上型スプリント

3 理学療法     ソフトレーザー  赤外線照射  CO2レーザー

4 顎関節腔内注入療法    副腎皮質ステロイド剤の顎関節腔内注入療法(コ―デルコートンTBA10mgなど)

顎関節症V型 (disk disorders) 関節円板の位置的・形態的以上を主兆候としたもの

V-a 復位を伴うもの

V-b 復位を伴わないもの

表9.顎関節症V型(顎関節内障)の分類と臨床症状

1)関節円板前方転位(大半はこれをいう)

@復位を伴うもの 早期クリック―相反性クリッキング、顎関節部圧痛、顎運動痛

            晩期クリック―上記症状のほかに関節包の弛緩

A復位を伴わないもの 間欠的ロック―ときに突発的な開口障害、顎関節部圧痛、ロック状態が解除されるとクリックが再燃する事が多い。                     永続的ロック(クローズド・ロック)―開口障害、最大開口時顎関節部疼痛、顎関節部圧痛、開口時下顎患側偏位

2)関節円板後方転位

@復位を伴うもの        閉口障害、オープンロック、顎運動痛

A復位を伴わないもの      閉口時の患側臼歯部のオープン・バイト

3)その他のもの

関節円板の変性線維化など

     開口障害(ただしクリッキングが突然消失して起きるのではなく、長期クローズド・ロックをきたしたの。または徐々に発症)、

     顎運動痛、

     側方・前方運動の狭少、

     最大開口時痛 (×線画像にて変形を認めるものは顎関節症W型)

顎関節症V型は、関節円板の位置的形態的異常により発症するもので(顎関節内障)・関節雑音・顎関節部疼痛・開口障害が主症状である。

主に30歳代以下の若年者に多発するのが特徴である。

臨床症状の中で、特に関節雑音(クリック)が診断の決め手となるが、関節円板の病態により、さらに表9のように分類できる。

すなわち

@関節円板が下顎頭に対し、前方転位を示すもの。

A後方転位を示すもの。

Bその他のもの(関節円板の変性線維化など)で@の前方転位を示すものが、その大半を占める。

前方転位例は、さらに復位を伴う関節円板前方転位と復位を伴わない関節円板前方転位とに分けられる。

前者の復位を伴うものでは、クリックの発現時期により、開口初期にクリックを呈する早期クリック例と、開口中期以降にクリックを呈する晩期クリック例がある。

一方復位を伴わないものは、クリックが突発的に消失し、開口障害と顎運動痛をきたすのが特徴で、一時的に復位を伴わない間欠的ロック例と、全く復位を伴わない永続的ロック(クローズド・ロック)例とがある(表9)。それぞれの関節内の病態を図2に示す。