ーご主人様に初めて直接…
加代は一番短いスカートを履いてくるように命令されていた。まだ結婚前に何度か着たことのある黒のミニスカートを履いた。上には何を着ようかと鏡の前に立つ。加代は自分の体をまじまじと見ることになった。
(いやらしい体…)
ブラからあふれんばかりの乳房がそのいやらしさを増していた。細くくびれた腰,程よく膨らんだヒップライン…。今日は黒のブラとパンツをはいている。夫が勝負下着と呼んでいた代物である。その下着を着て他の男に抱かれに行くなんて夫は想像もしないに違いない。
散々迷った挙句、加代は赤のタートルネックのセーターを選んだ。夜の街にいれば娼婦と間違われるであろう。そんな格好を加代はしていた。化粧もいつになく念入りにする。こんなにきちんと化粧をしたのは結婚当初から数えるくらいしかない。加代は谷野に嫌われることだけは避けたかった。
全て用意は整った。意を決して玄関を出る。
久しぶりの外界は驚くほど静かで平凡だった。
待ち合わせは9時。
「遅くならないようにしなきゃ。」
独り言を言いながら、加代は家を後に駅に向かった。
谷野はその頃まだ家で髭を剃っていた。谷野は20代半ばの医学部の学生であった。なかなかの好青年ではあったが、パートナーはなかなか見つからず、最近は出会い系のサイトをのぞくようになっていた。パソコンには小さな頃から興味があったので、最近独学で勉強して自分でサイトを作るまでになっていた。これがサイトを作ってから最初に会う相手になっていた。自分の好みのパートナーが欲しいと作ったサイトではあったが思ったようにメールは来ず苦心の果てにようやくつかんだチャンスであった。
待ち合わせ場所は谷野の方が指定していた。前の彼女とつい最近までよく利用していたホテルを使おうと考えていたのだ。ホテル探しに時間がかかるようならいつ加代の気が変わるか分からないと使い慣れた横浜をその舞台に考えていた。実際横浜まではかなり近いところに谷野は住んでいた。
©Chris
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