2001.12.23

 ーご主人様に初めて直接…

 待ち合わせ場所には加代の方が先に着いていた。というより、加代は谷野の顔をしらなかったので谷野が来ているのかどうかも分からなかった。それらしい人の姿は見えない。加代はかなり早めに着いていた。待ち合わせ場所の駅前西口は人通りが激しい。行き交う人が加代のことをいやらしい目つきで見ているような気がしていた。その時突然
 「すいません!」
 サラリーマン風のスーツ姿の若い男に声をかけられた。
 (この人が…?)
 加代は心臓が張り裂けんばかりに高鳴っているのを感じ取っていた。加代はドギマギしながら男の次の言葉を待った。
 「今お暇ですか?」
 ナンパだった。加代はほっと一息をついて答えた。
 「ごめんなさい。人を待っているので…。」
 丁重に断った。男が去った後も胸の鼓動は収まらない。

 加代が緊張しながら街の人通りを眺めていたとき、谷野はこれから電車に乗るところであった。まだ待ち合わせには充分時間がある。ちょうど9時には横浜駅につく予定だった。ラッシュアワーのせいか人がものすごく多い。谷野は人ごみが大の苦手であった。自動的にフラストレーションがたまる。電車はゆっくりと走り出し、窓の外の風景が後ろへと移動していった。
 次の駅は横浜であるという車内のアナウンスを聞いて谷野は正直緊張してきていた。加代がどんな男が来るのか不安になっているのと同じように谷野も本当に加代が来てくれるのか不安な気持ちと楽しみが交差して神経をすり減らしていた。
 
 
 


©Chris
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