| ■ 眠り姫 著:ダニエルキイス 翻訳:秋津和子 早川書房 1999.6.15 |
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「睡眠障害」を題材にした推理小説。一気に読んだけど、現実味がなかった。
でも、精神科医に日常接しているアメリカにとっては結構刺激的かも。
権威を持つ人に自分の内面をすべてゆだねる危険性というものを感じましたね。
「医者」は技術者であって人格者ではないってこと。日本でも心理学が人気だけ
ど、陥りやすい罠がある。複数の医者に客観的にみてもらわないと危険なんじゃ
ないかって、この小説は教えてくれる。「守秘義務」っていうのもくせものだし
ね。とはいえ、あっという間に読んでしまったってことは、スピード感があって
ぐいぐいと読ませる技量がありました。 やっと読み終えた。 1ヶ月くらいかかった。 一気に読み上げないと途中で挫折してしまう私にしては珍しい。 若い恋人2人が殺される殺人事件の謎解き的な推理小説だったが、 中身がやたらに豊富、てんこもりだった。 最後は、殺された2人の父親が実は同じ精神科医コーラーであったという思いがけない結末が 待っている。 コーラーは女性患者二人を治療中に妊娠させていた。 その子供達が恋人同士になり、その女の子、実の娘をまたコーラーが妊娠させる。 DNA鑑定で近親相姦の事実が明らかになることを恐れたコーラーは 睡眠障害のキャロルに殺人を犯させて、その罪をキャロルの夫がかぶるように仕組む。 これだけでも話は十分複雑に入り組んでいるが、 精神科医コーラーは戦争中に目の前で兵隊から強姦されて 殺された母親を自分が再び犯して生き返らせたという記憶(錯覚)を持っているし、 コーラーに立ち向かう精神科医アイリーンは、ナチスの人体実験に協力した医師を父親に持つ。 処刑されることが認識できない受刑者を、治療して処刑される資格を与える精神科医アイリーンは葛藤する。しかもその処刑者は冤罪。 最後にすべてがあきらかになってほっとする。 「アルジャーノンに花束を」のように一般受けする本だとは思わないが、 根気強い人には是非読んでもらいたい。半分くらいまではわかりにくくて退屈するかも知れないが、 頑張って読んでいれば、最後にはかならず報われる。そんな本だった。 アポロだのヒポクラテス・・・・神話が理解できている人にはもっと面白い本なのかも知れない。 |
| ■ 「少年A」この子を生んで・・・ 著:「少年A」の父母 文芸春秋 1999.5.24 |
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「少年A」は、やっぱりねっていうカンジ。というのは自分の子どもが
突然凶悪犯になってしまったとき、このように感じられるだろうなというその
まま。「なぜ」っていうのが親も世間も一番知りたいことで、その答えが想像
できない以上、もっと綿密に「育て方」より「自分の生き方」を見直した生の
声が聞きたいと思った。ということはそれは書いてなかったっていうこと。
「普通に愛情をもって育てたのにどうして?」という問いばかりで、「信じて
いた自分たちが裏切られた」ということが書いてある。自分の子どもを育てる
のに自分の子どもがわからないと考えている人は多いと思う。そういう人には
同情を得られるんじゃないかなとへんに醒めてしまった。
いろんな雑誌で書きたい放題書かれているそれへの言い訳、「わたしたちの
身にもなって下さい」っていうふうに見える。
A少年の両親は真っ先にしなければいけないことを避けて、一番してはいけないことをしていると思った。 やっぱりなんとしてでも被害者の親に詫びるべき。 顔を合わせるのが恐くても気まずくても門前払いをくってでも詫びなければいけない。 それをせずしてこんな言い訳のような本を出版した。 「こんなに一生懸命育てたのにどこが間違っていたのでしょうか」と開き直りともとれるような内容にウンザリした。 被害者の親の立場に立てば加害者は口が裂けても泣き言など言えないはずである。 「売らんかな」の出版社にどんなにあおられても出版を思いとどまるべきだった。 この非常識な親のもとなら非常識な子供が育ってもおかしくないと感じたのは私だけかなぁ。 |
| ■ スプートニクの恋人 著:村上春樹 講談社 1999.5.22 |
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「ダンスダンスダンス」や「ネジ巻き鳥クロニクル」と同じで
不安をかき立ててそのまま解決してくれないという彼流のパターンだった。自分はいったいどこに向かおう
としているのか、いったい何者なんだろうかという不安がそのまま、いつ蒸発してしまうかわからないよう
な存在そのものの不安定さにつながっている。友人や恋人とのつながりは自分の存在を確認するためであり
、単なる男女の関係や、レズビアンというような俗っぽい言葉では説明がつかない。
私の予想通り、すみれは行方不明になり最後まで姿を現さなかった。村上春樹の作品が特に好きというわ
けではないが、読むといつも胸を締め付けられるような不安に襲われる。とにかく印象が強烈。すみれ
が井戸の底にひとりぼっちでひそんでいるのではと想像するシーンがあるが、井戸はネジ巻き鳥にもでてく
る。なんかこだわりがあるのかも知れない。
村上春樹は「ノルウェイの森」で大嫌いになってから「アンダーグラウンド」 しか読んでなかったので、ほとんど初体験。今回読んでみてそれほど毛嫌い するほどでもなかったなと。 設定自体はあまりにも現実とかけ離れているんで(人物の設定、環境の設定) なかなか感情が入っていかなかったけど、書きたい気持ちは伝わってきた。 何に対するわけでもないすごい不安感と現実と自分との齟齬、寂寥感だけは ひしひしと伝わってきた。それだけがごろっと提示されているっていうカンジ。 |
| ■ 老人力 著:赤瀬川原平 筑摩書房 1999.4.27 |
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「老人力」は「そうそう」といいながら読んだ。
でもきっと若い頃に読んでもわかんなかったろうなあ。
肩の力が抜けるっていうのはやっぱりひととしとってから実感するものだもん。
でもこれも実感できる人と実感したくない人がいるような気がする。
いつまでも若い人とはりあってるとせっかくの年をとるっていうことが無駄になるような気がする。
それを象徴してるのがいわゆる「アメリカ文化」なんだろうね。「若さこそがすべて正しい」ってやつ。
読んですとんと胸に落ちましたね。だって若いときよりも随分楽になってるもん、気持ちが。 05月13日 老人力とは余計なリキミがとれて自然体になれることをいうらしい。 野球の選手などはちょっと怪我をしているくらいが調子が良いというくらいで 順風満帆ではないほうがかえって良いのだと書いてある。 老人などはまだまだ先の話だと思っている私にもすでに思い当たる節がある。 若いときは、どうしても人目が気になって自意識過剰になったり、 理想とするありかたを探して自分をそれに合わせようと無理をしていた。 それがひととし取るとまわりの目から解放されて自分のあるがままの姿がさらけ出せるようになってくる。 別の言い方をすれば厚かましくなると言うのかも知れないが、 これがとても心地良く、自分が見えてきて精神的に安定してくる。 若返りたいとは思わないと答えたこのホームーページのメンバーはすでに老人力を習得しているといえる。 |