| ■ 永遠の都 著者:加賀乙彦 2001/6/29 |
| 7巻の大作、昭和激動の時期に医者として栄え、ほろびていく過程が書かれている。 加賀乙彦本人の自叙伝でもあるらしい。戦争に組みしていく人、反対して権力から狙われる人 同じ親族に双方の立場の人がいて、それぞれが信ずる道を生きている。 著者はどちらの肩も持たないが戦争の悲惨さだけはしっかりと伝わってくる。 ただ、おおがかりな歴史小説なのに、初江と夏江の不倫騒動で メロドラマになってしまってるような気がする。 結末で唖然と言うパターンはお決まりなのかも。 |
| ■ 宣告 著者:加賀乙彦 2001/6/29 |
| 宣告に登場するゼロ番囚達、 それぞれの人物描写を見ていると、極悪非道な人間とは思えなかった。 むしろ、終点の見えない、しかしそれが近いことだけははっきりしている生活を かぎられた鉄格子の中で送りながらなお、世のためにと献体を申し出ている囚人が 善良な人にさえ思えてくる。こんな人をホントに殺してしまって良いのだろうかと思わせる。 この本は死刑制度反対の立場を押し付けてはいないが、ふわっと問題を投げかけてている。 |
| ■ 血脈 著者:佐藤愛子 2001/4 |
| 佐藤愛子の父親、佐藤紅緑からの一族の物語。すべて実名で書かれている。 佐藤愛子は乾いた文章なので結構好きだったから、集大成といった感の 本書に惹かれて買ってしまった。 「悲しいことや辛いことがあるとおもしろおかしく話してしまう」って いう一族。同じ出来事でも父紅緑が話すととても愉快になるのでみんなが 大好きだが、その父は自分の欲望にひどく弱いという性質をもっている。 ひとりのエネルギーあふれる才能が身近にいるとまわりは考えられない ほどの影響を受ける様が手に取るように描かれている。 長男のサトーハチローしかり。 運がいいとか悪いとか、成功したとか失敗したとかいうのではなく、 人はみな「かく生まれ、生きた」としか言えないのではないかという 作者佐藤愛子の死生観には、大きくうなづきながら読んだ。 上下で2冊、各2000円という本なので、本屋でしばらくうなり つつ、買ってしまったけど、わたしにとっては良い買い物だったよ。 |
| ■ 生きている心臓 著者:加賀乙彦 2001/2/11 |
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脳死からの心臓移植について考えさせられる内容。
ドナーやレシピエントの立場から
意見を充分に出し尽くし、それでもなおためらいが残る、
それくらい難しいものだと言いつつ、
最終的には当事者の考え方ひとつだと
すっきりさせている。 これは私にとって、2番目の加賀作品。 1作目で感じた「民主主義にこだわりを持った人ではないか」という思いが確信になった。 賛成意見も反対意見もそれぞれ尊重する立場を貫いている。 ねばり強く丁寧な人という印象が残った。 |
| ■ ヴィーナスのえくぼ 著者:加賀乙彦 2001/1/26 |
| 「失楽園」の加賀乙彦版。 経歴も医者あがりということで渡辺淳一と重なるものがある。 不倫の果てが自殺という破滅で終わるところもよく似ている。 主人公の主婦奈々子は、一流貿易商社マンと結婚し、 高級マンションに住み、子供は有名私立小学校。 人もうらやむ中流以上の暮らしでありながら さまざまな不満を抱えているという設定。 そこらへんに転がっているメロドラマ系のストーリーだが、 この本に登場する人たちは誰も悪くない、 それぞれがそれぞれの立場で精いっぱい対応してるという印象を受ける。 子供のイジメ問題、夫の子育て参加の問題については いろんな角度から正確に分析されているようなかんじがした。 しかし、全体としては官能小説、何も不倫相手をサディストにすることはないでしょうに!と言いたい。 加賀乙彦ファンの私としては 婦人公論の連載だとこういうサービスも必要だったのかと理解したい。 |
| ■ アルジャーノンに花束を 著者:ダニエルキース 2001/1/12 |
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S:私の3番目に好きな本、誰彼かまわず読ませて
「良かったでしょ」と詰め寄り「良かった」と言わせました。
前半がちょっと取っつきにくいという難点がありますが
そこを頑張って読み切ると、やっぱり読んで良かったと実感させる本です。
ダニエルキースの作品の中では特別ですね。
今だにSF部門では上位にランキングされてます。 B: 最初から引き込まれるように読みました。 精薄に生まれた彼が手術によって知能が与えられる。 幼かった時の自分をそして周りのみんなが自分をどう見ていたのか からかわれていた事でさえ友人としての行為と 彼は穏やかな笑顔で受け取れていた。 しかし、覚醒した彼は、その事実を知ることになる。 それが、悲しすぎた。 もっとも感動を覚えるのは最後の追伸の部分にある。 アルジャーノンを忘れないで欲しい、そして自分も・・・。 彼は、アルジャーノンとともにモルモットになっても 科学に寄与できた事を誇る事が出来たことで、読み終えた 後に後味の悪さは残らなかった。 O:これを読んだあと、SFのジャンルだったことを忘れていた。 でも、最近はSFとはいえない状況になっていますね。 DNAをデザインして優良人類が実際につくれるようになって いるし、現在でも妊娠中の胎児を調べたり、精子の購入も実際 に行われているし。 より美しく、よりIQの高い子どもを望み、不良品は早期発見 するという方向に大きく揺らいでいるような気がして、アルジャー ノンはそれとは別の方向、人間とはいったいなんなのかを考え させてくれるような気がする。 最後がハリウッド好みの「すべてハッピーエンド」ではなく自分の 運命を受け入れていくっていうのにも強く感動しました。 この作品が長く新しいファンを生み出しているのも、そういう 人間の原点を考えさせてくれるからじゃないかなって思っています。 S:知能障害のあるチャーリーが アルジャーノンと同じ脳手術を受けて だんだん普通の知能に発達してくると 担任のキニアン先生と恋が出来るようになってくるんですが、 普通を通り越して秀才→天才となってくると その恋も成り立たなくなってしまうんです。 「IQは高ければ良いというものでもないんだ」と感じたこと。 これが印象に残っています。 それにチャーリーとアルジャーノンの脱走騒動が痛快でした。 たしか大笑いしたような、その後で泣いたような・・・ とにかく人に読ませたくなる本ですね。 |
| ■ アルジャーノン、チャーリィ、そして私 著者:ダニエルキース 2001/1/6 |
| ダニエル・キイスの自伝。 「アルジャーノンに花束を」が生まれるまでの。 「アルジャーノン」は大好きな作品なのでつい買ってしまった。 作家になるまでの軌跡も辿るし、プロットが作品になっていく過程が結構 現実的に書かれている。 アメリカの作家の実業面も描かれていて、人間くささが現れてるし、なによ り、「アルジャーノン」をもう一度読みたくなった。 「アルジャーノン」は彼の中での特別の作品っていうのがよくわかる。 この一作を書くために彼は作家になったというのがよくわかる。 |
| ■ プラトニックセックス 著者:飯島愛 2000/12 |
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ご存知飯島愛のベストセラー自伝小説。
好奇心に負けて買ってしまった。
「中高生のバイブル」なんて紹介されてたしぃ。
で、赤裸々なのはいいけど、なんという自己中心。
隠すことなくやりたいようにやり、欲しいものは我慢しない。
自分の卑近な欲望にあまりにも忠実。
「淋しい」とか「愛されたい」とかいう言葉もちりばめられては
いるけどまわりの人間の気持ちにこうも無関心になれるのでは
そんな感情すら自己愛にしか見えないところがすごい。
それも隠さずに書いているからすごいんだろうなあ。
人生お金とセックスです、中身がないからブランドで飾って
隠しますってカンジなんだけど、20代後半になってすこし
周りが見えてきたところで総括の意味で出版したのか。
良いも悪いも、ありのままの自分を書いているのはスゴイ。
ええかっこしいのところがないのがスゴイけど、このまま
おばさんになられたら困るなあってカンジです。
ひらきなおってしまうとどうしようもないからなあ。 読んだ後は「面白かった」が実感でしたけど、じゃ 何が残ってるかっていうと釈然としない。 ずっとベストセラーの1位となっている本なので、自分としては一体 どうなのかと。忘れない内に書いておきたいといったところでした。 もう一言付け加えるなら、彼女は希に見る幸運者だということ。 あんな生活してたら性病はもとより、命にかかわる病気をしても ちっとも不思議じゃなかったし、少年院に入れられても不思議じゃ なかった。 その幸運さが若い人たちにどのくらいわかるのだろうかと。 いえ、自分の娘がそれを読んで、その危うさがわかるんだろうかって。 ま、そういったところで、自分の感想を現時点で残しておきたかった んですよねー。 自分では買う気がしなかったが okameが持っているので借りて読んでみた。 読み始めて思ったのは、 どの子供でも程度の差はあれ、いったん反発が始まると 大人の忠告が耳に入らなくなるのではないかということ。 自分の収まるべき場所を見つけるためには、 良からぬ場所に出入りしたり、警察のお世話になるようなことも あるのかもしれない。 親は、ただひたすら安全を祈りながら見守るしかないような気がする。 この時期に、事故や自殺で死んでしまう子だっているのだから。 飯島愛の場合あそこまで堕ちたとしても、 生きて帰ってくれたのだから、良かったのではないか。 読む前は、若者のやりたい放題に口実を与える 良くない本ではないかと思っていたが、 そのように読まれようが、読まれまいが、そんなことには関係なく 荒れる子は荒れる。だから、害にはならない。 むしろ読み終わって、つい頭の中で 親や自分のこと、子育てで苦労した知り合いのことに思いを馳せている。 飯島愛の親御さんもずいぶん心配されたと思う。 彼女の場合、舞台が東京六本木、時代はバブル全盛期、 この条件が彼女を売春、AV女優へと向かわせ、 自分を見失う期間を長期化させているので、 そのぶん親御さんは人一倍苦労されているはず。 田舎に暮らしていたのではああはなれない。 どんな環境にせよ親から自立していくときの子供の葛藤、 これは避けて通れないんだと納得したというか あきらめさせられたという点では 読んで良かったかもしれない。 |
| ■ 平然と車内で化粧する脳 著者:澤口俊之 南伸坊 扶桑社 2000/11 |
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暇つぶしに買ったのに、面白かった。 脳の出来方から見る見方って「話を聞かない男、地図を読めない女」 と同様の切り口だけど、「男と女」ではなく「人種」に的をしぼった 点と、現在の「教育」を生物学的、人種的な切り口から語ったという ことで、ふに落ちる点が多かった。 長男を共同保育所にあずけたとき、園長だった友人が「たくさんの 人間、しかも他のこどもたちからの語り掛けがとても大切。」と 言っていたのがまざまざと思いだされる。 ほんとに子どもって社会全体で育てないといけないんだよね。 |
| ■ ぼくは勉強ができない 著者:山田詠美 新潮文庫 2000/11 |
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出来ないというより、しないんですね。
しかも不良っぽくて、女の子にもてて、サッカーもできる、
ちょっとタイトルのイメージとズレてました。
本当に勉強が出来なくてどうしようもない子供が
救われるような本ではありません。 それより、家族がユニークでした。 お母さんにはいつも好きな男がいる。 ほどほどの収入がありながら、 それは自分の洋服とアクセサリーにつぎ込まれて 家はなんとなく貧しい。 おじいちゃんは、散歩で出会ったどこかのおばあちゃんに恋をしている。 過干渉気味の親が問題になっている昨今。 こんな家族の方がかえって良いのかも知れない。 山田詠美が好きになる作品でした。 |
| ■ 話を聞かない男、地図が読めない女 著者:アラン&バーバラ ピーズ 主婦の友社 2000/8 |
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男女はそもそも脳の使い方が違うのだそうだ。
たとえば、
女の脳はマルチに出来ていて同時に複数の仕事がこなせるが、
男はひとつのことしか出来ない。 TVドラマを見ながら洗濯機の終了ブザーに反応し、 洗濯物を干しながら、風呂にお湯を溜める。 私がこれだけ働いているのに夫はTVを見てるだけ。 これは、ただの横着ではなくて脳の働きが違うのかと思うと なんだかハラがたたない。 女は右側を指差しながら「左折して」と言う・・・・ 方向音痴の私だけのことかと思っていたら 女一般に見られる症状だった、なんだかほっとする。 ちょっとしたことだが説明が付くと納得して寛大になれる。 とりあえず私は静かに一気に読み終えた。 次に読み始めた夫は、一行一行に反応して笑い転げている。 「可笑しすぎて病院の待合室や、電車の中では絶対に読めない」と言う。 そんなに可笑しいところがあったかなと私も再確認したくなって 「どこ?」と覗き込むと 吹き出しそうになりながら音読してくれる。 そして「この分析は正しい」とやたら感心している。 読者にこんなに感動されたら 作家冥利に尽きると思う。 PS:そういえばこの本は男性びいきです。 |