労働調停に出頭
(2001年3月27日)人事課長が,福永の労働ステーションから、呼び出しを受けた。
「27日午前10時 福永労働ステーションまで出頭願いたし」
わぁお,いったい何があったの?
実は、先週末解雇処分として製造部の組長(ラインリーダー)が、会社が不当な処分をしたとして労働局に訴えたのです。労働関連の揉め事は、直接裁判所に持ち込んでも受理してもらえません。裁判に持ち込むまでには下記の手順を踏まなければなりません。つまり、今回は裁判になる前の第1ステップ。
1,地元の労働ステーション(労働局の下部組織)に調停申し立て
↓
2,調停結果に意義があれば、仲裁処に仲裁申し立て
↓
3、仲裁結果が不満なら,裁判所に訴訟申し立て
いや〜ん、裁判?どうしよう、会社が負けちゃったら…と言う不安と、証拠は十分やでぇ、負けへんでぇ、という気持ちと,でも、組長が調停の場で自分の間違えを認めなかったら…って言う不安と、裁判なんて始めてだぁ、初経験?ワクワク…って言う気持ちと,複雑な気持ちで人事課長に同行した。
「私も行きましょうか?」と言う工場長に、「いいえ,工場長の出番は裁判の時です。」と言って。
工場側からは私と、人事課長、製造課長。
組長側は、彼女本人と彼女の旦那さん。
組長、けっこう,あっさり自分の間違いを認めた。
「3月7日に3月19日分の休暇申請にサインしたのは間違いです」と。
ありゃ、ありゃりゃ,そんな事言っていいの?その一言で、もう会社側の勝ちは決まりよ、と思わせておいて、ところが、ここから先の組長と旦那の主張が,もう、ほとんど屁理屈。「だけど、それが解雇にあたるのか?反省書を書いたんだから、処分はそれで十分じゃないのか?解雇にあたって経済的保証を与えないのは不当ではないか?3月7日に19日の休暇申請をしてはいけないと言う規定はない。組長が休暇承認をしてはいけないと言う規定はない。」
はぁ…,なんでこんな奴が6年間も組長してたんだぁ
そう思う私の目の前で、人事課長が次々に証拠書類を提出し、説明を開始。
資料の充実さ、確からしさに係官も感服する。
「ほぉ〜、御社はシステムがしっかりしてるねぇ。」
そう、うちは解雇にあたっては実に慎重に対処してるからね。
従業員の投書またはクレーム、上司の調査報告、本人の反省書が揃って始めて人事処分が可能になる。処分の内容も人事と当該部署長と工場長で決める。そして、必ず処分通知を出し、人事処分書には直属上司、部門長,人事課長、管理部長、工場長そして本人と最低6人がサインして始めて有効となる。社則にしたって、あらかじめ労働局の承認印を取っているから法的効力を有しているしね。普通じゃあ、うちが負けるわけがない。労働ステーションの係官も完全に会社側についている。
それでも、組長の付き添いで来ている旦那は引き下がらない。
「こんな規定なんか、呼び出しうけてから作ったものじゃないか?証人が入るって言うけど、あらかじめ口裏合わせてあるんだろ?憲法25条を知ってるか?それに違反してるんじゃないか?」
従業員に重大な過失があった場合は、会社はこれを事前通告なしに解雇出来る。
「だけど、こいつのやった事が重大な過失と言えるのか?
言えないだろう?言えないなら、解雇手当を出さなきゃ違法だろ?」
はぁぁぁ〜、じ・つ・に疲れるオジさんだ。
私が、社則を出して係官に説明する。
「我々は弊社社則第12条3項と5項により、彼女を解雇しました」
第12条3項,わざと間違いを犯した者
第12条5項、会社に対する詐欺行為があった者
旦那がイチャモンを付ける。
「大きい法と小さい法とどちらが効力を持つと思ってんだ?」
はぁぁぁ〜、実に何も知らないオジさんだ。
厳重か厳重じゃないか、何を持って判断するのか知ってるの?
『厳重か厳重でないかの判断は企業にお任せします。但し、どのような場合に、“厳重な過失”として解雇手当なしに従業員を解雇するのか,それだけは社則の中に細かく、明確に記載しておいてください。それさえあれば、企業が裁判で負けることもありません。』
(仲裁処の担当官談)
それでも旦那、まだまだ食い下がる。
「今日のところは、おれ達の負けだけど…,こいつ、労働環境が悪い現場で長年働かされたんですよ。解雇するなら、会社がこいつを病院に連れて行って検査させてくれなきゃ…。会社の規定では、3ヶ月に1回身体検査を受けさせるってあるらしいけど…」
はぁぁぁ〜、どこの会社の規定?
今度は、職業病の線で金をとろうって訳?
『広東省労働安全衛生条例』
;企業はその従業員に二年に1回、特殊な作業に携っているものには1年に1回、身体検査を受けさせる義務を有す。スイマセン、うち、条例通りやってます。(去年からだけど…)実施している。当該現場の労働環境については99年にワーカーさんから投書があったのは確か。でも,すぐに労働衛生管理専門の医者に現場をチェックしてもらい,労働環境が基準に合致していること、投書の内容は職業病ではなく個人的な病気であるとの見解をもらっている。それに、そんな劣悪な労働環境だったら、ISO14000だって取れないよ。特殊工程担当のワーカーさんならいざ知らず、現場とオフィスを行き来している組長が何を言ってるんだか!「何時、身体検査受けさせた?」と係官。
「去年の6月に全員受けています。彼女も。」と人事の回答。
それでも旦那、引き下がらない、会社の金で身体検査を受けさせろ,と。
仲裁申し立てをするのに、さっき会社が提出した書類を俺によこせ、と。
「身体検査を受けたいなら自費で受けること。会社側にはその義務はない。
調査の為に必要な資料は、仲裁処が企業に要求する。今は渡さない。」
と係官が旦那の要求を却下して、今日のところはおしまい。
恐らく、この二人、仲裁申し立てをするだろう。
それはそれ、受けて立ちましょう。
裁判まで持ち込みたいなら、それも受けて立ちましょう。
こんなに会社側の勝訴が明白な状態で仲裁や裁判を受けられるなら、
我々にとってこんなありがたいチャンスはない。
今後、もっと深刻な問題で裁判をする時の為、予め練習が出来るんだから。
訴えてくれてありがとう、練習の機会をくれてありがとう。
そう、言いたい気分で労働ステーションをあとにした。
でも、もし,本当に裁判になったら、やっぱ、ちょっと恐いな。
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