盛夏特別報道企画  ・  捕鯨対象+60 』

 米国、捕鯨問題で日本への対応硬化も     ――――  “捕鯨の象徴 ・ マッコウクジラ” 捕獲再開。
 
- 2000年 夏 -


  日本政府は5/3までに 現在のミンククジラに加え、新たにニタリクジラとマッコウクジラも日本周辺の海域での調査捕鯨の対象にする計画案を国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会に提出した。IWCは商業捕鯨を禁止しているが、科学目的の調査捕鯨は条約で認められ、実施国の政府が計画を提出すれば実施できる。
  同計画案によると、「北太平洋の西部で新たにニタリクジラ50頭 ・ マッコウクジラ10頭を捕獲し、性別や年齢、体重のほか、胃の内容物から鯨が食べているえさの種類や量を調べることによって海の生態系の研究に貢献する」。日本は87年から南極海、94年からは北太平洋でもミンククジラの調査捕鯨を行っており、現在、調査捕鯨数は年間約500頭。計画ではこのうち北太平洋分(年間約100頭)についてもニタリクジラ、マッコウクジラ同様の研究を行う。日本政府は「過剰な保護の結果、鯨の個体数が増加。大量の魚などを食べるようになって生態系のバランスが崩れている」と主張しており、今回の調査もこれを実証する狙いがある。新たな2種の調査捕鯨は水産庁が日本鯨類研究所に委託し、肉などの副産物は販売して調査費用に充てるという、従来のミンククジラの場合と同様の方法を取る見通し。


  「科学研究目的で行う調査捕鯨はIWCの設立根拠である国際捕鯨取締条約で認められている当然の権利だ」(水産庁)というのが日本政府の一貫した主張だが、反捕鯨国や環境保護団体は強く反発してきた。肉の販売などもあって「実質的な商業捕鯨」との批判は根強い。IWC総会では毎年のように調査捕鯨の中止や再考を求める決議が採択されており、99年12月の南極海の調査捕鯨では環境保護団体が激しい抗議行動を行った。日本政府は「胃の内容物など鯨を殺さなければ分からないこともあり、科学的な議論を期待する」との立場。


 
日本が87年に商業捕鯨中止に追い込まれ、その後もマグロなど遠洋漁業の規制が強化されている背景には、環境団体の国際的な反漁業活動がある。米国内において、これら団体の一部は「緑の党」のネーダー氏を支持しているが、民主党支持者も多い。ゴア副大統領(次期大統領候補)、リーバーマン氏(次期副大統領候補)ともクリントン大統領以上に環境団体との関係が深く、環境問題重視の方針を示している。
  米政府は、漁業資源保護に反する行為をしている国からの水産物輸入制限を規定したペリー修正法に基づき、日本に制裁を発動できる。この規定には世界貿易機関(WTO)協定違反の疑いもあるが、リーバーマン氏は8月の声明で「日本は捕鯨に反対する米国の決意を試している」、と 経済制裁発動など厳しい対処の必要性を強調している。今後、米政権は日本への対応を一段と硬化させる可能性があり、通商問題以上に捕鯨問題の行方が心配される事態もあり得る。

 

 

 追記     米国、捕鯨問題で対日制裁を決定
 
- 2000年 秋 -


   9/13、クリントン米大統領は日本の調査捕鯨拡大に対して、鯨類保護に反する行為への制裁を規定したパックウッド・マグナソン修正法(PM法)に基づき、「米国の200カイリ経済水域内で日本漁船の操業を禁止する制裁」の発動を決めた。しかし、米国は既に88年から同水域内で日本による漁獲を認めておらず、現状ではPM法発動に実質的な意味はない。(* 米国は90年以降には外国漁船の操業を一切認めていなかったが、近くサバ・ニシン漁を解禁する方向で検討中。これが実現しても日本は漁獲割り当ての対象とはならず、第三国の捕獲分も輸入できなくなる。)
  同日、環境団体からは同制裁決定を支持する声明が相次いだ。また、グリーンピースなど一部の団体からは「さらに強力な対日経済制裁」の要求も出されている。


  日本政府は、「同制裁決定の狙いは、11月の米大統領選をにらみ、民主党の環境保護姿勢を米国民に訴えること」であり、「経済面での実害はない」と見ているものの、捕鯨問題が日米間の感情的摩擦に発展し、米新政権の対日姿勢に悪影響を与えることがないよう、粘り強く米国の理解を求める方針。ただし、「米国が国内法に基づき真珠や冷凍ホタテなど日本産海産物の輸入制限を発動した場合には、WTOへ提訴する」。
  商業捕鯨中止に追い込まれた日本が87年から南極海でミンククジラの調査捕鯨を開始したことを受け、米国は87年と95年にペリー修正法に基づく制裁(日本製水産製品などの輸入制限)を検討したが、同法には「WTO協定に違反する一方的措置」との国際的批判が強いこともあり、発動は見送られた。ただ、米国は91年には同法発動を盾にタイマイ(べっ甲の材料となる海亀)の全面輸入禁止を迫るなど、日本の譲歩を引き出すことに利用してきた経緯がある。

水産庁発表(9/20)
8/1〜9/16、調査船5隻が北西太平洋(三陸沖からロシア・カムチャツカ半島沖にかけて)で鯨3種、計88頭を捕獲。捕獲頭数は「反対意見に配慮して少なくした」ものの、「(米国などが捕獲に反対している)大型ヒゲクジラの資源量にも回復の可能性が認められる」との報告がなされた。

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