98年12月23日

盗まれたコンクリートのカエル、
クリスマスにかえる

誘拐された前庭の置き物、世界を旅する

 マサチューセッツ州スワンジー ミステリー好きの方、こんなのはいかが?
 ガートと呼ばれているガートルード・ナイトさんはイースターが終わって少したった頃、庭で作業をしていて何かおかしいと気づいた。
 「主人は芝刈り機を使ってたもんだから、私は叫んだの。『ねー、ジョン、カエルがいなくなっちゃったわ』」
 誰かが5キロもあるカエルのペアのうち、1つを奪ったのだ。そのカエルのペアはナイト家の前庭にあるコンクリートのベンチの上にコンクリートの傘をさして座っていたのだ。
 べつにすごいミステリーってわけじゃないよ。ナイト夫妻が思ったことだった。初めのうちは…
 「どっかの子供が持っていってしまって、どこかに放ってしまったんだろうと思ったのさ」とジョンは言う。
 しかし、数週間後にその考えを変えた。1枚の葉書がメリーランド州から届いたのだ。そこにはチェサピーク湾の夕日が写っていた。
 「おたくの庭にすわってるのに飽きたんです」その葉書に大文字で書かれていた。「もう行かなきゃ。じゃ。カエル」
 それからニューヨークから手紙が届いた。「親愛なるママとパパ。お変わりありませんか? 僕はちゃんと面倒見てもらっています。今、ニューヨークに来ています。クリスマスには帰ります。僕の大事なカエル・レディの世話、お願いします。またすぐにお便りします。では。カエル」
 この手紙には写真が添えられていた。ニューヨークの地下鉄駅の外で座っているカエルとブロードウェイと52番街という標識のある通りの近くで高く持ち上げられているカエルの写真だった。
 カエルにしては、しかもコンクリートのカエルにしては、かなり筆まめだとわかった。手紙、葉書、写真がどんどんナイト家に送られてきたのだ。ナイト夫妻はガソリンスタンドのオーナーを引退して、ともに67歳である。
 スイス、スウェーデン、パリからは「ママ、パパ、こんにちは。パリにはもうこれ以上いられません。カエルの足がおいしいなんて話を聞いたんです。やばい、やばい」
 ハワイ、イタリア、ビバリーヒルズから。「ここが金持ちで有名なカエルたちがたむろしているところなんですね。僕みたいにね」
 ロンドン、デンマーク、インドネシアから。「スハルト大統領が退陣しました。僕も子供たちもインドネシアの平和と世界中のみんなのために祈っています」
 日本、ラスベガス、アムステルダム。「クリスマスの頃には顔出します」
 クリスマス? それって、もうすぐじゃないか。
 月曜の朝、マサチューセッツ州トーントンにあるスキップ・アラウンド・リムジンのオフィスに電話があった。
 「ボスに言われたんです。フォール・リバーの市役所でミスター・フロッグ(カエルさん)をお乗せするようにって」運転手のジム・スミスさん。「単に、ミスター・フロッグっていう名前の人を乗っければいいんだと思いましたよ」
 スミスさんが歩道の方に車を寄せると、誰かがリムジンにかけこんで来て、後部のドアを開け、何かを中に置き、指示と100ドルの入った封筒を運転手に手渡した。そしてその男は走り去った。スミスさんが覚えているのは、その男が長髪をポニーテールにしていたということだけだ。
 次に止まるのはブリストル・アベニュー。スワンジーの小さな通りで、ナイト家が我が家と呼んでいる場所だ。普段は静かなこの通りが、月曜日は大騒ぎになった。というのも、今ではマスコミに有名になったカエルが帰宅すると誰かが漏らしたのだ。
 テレビ・カメラがまわる中、スミスさんはカエルをガートに渡し、ガートはなんとか車の中を覗こうとした。「きっと誰か他に車の中にいるだろうと思ったわ」しかし、誰もいなかった。ただガールフレンドのカエルのためのシャンペンと花束、カエルからナイト夫妻へのクリスマス・カード、そしてこの騒動を巻き起こした人からの手紙があっただけだった。
 「ナイトご夫妻へ カエルのフィルを家に送り届けることができてうれしいです。ほんのジョークのつもりで、こんなに大騒ぎになるなんて思ってもいませんでした。たぶんわたしのことはご存知ないと思いますし、これからお会いすることもないでしょう。親友とわたしとで適当に思いついてしたことです。カエルのことは大事にしていました。もう有名になってしまいましたので、家の中に置かれることを望みます。楽しいクリスマスをお過ごしください」
 簡単なサインがあった。「カエル誘拐犯」
 しかしナイト夫妻によると、カエルの旅はまだ終わっていないそうだ。来週、結婚46周年を迎える夫妻とカエルのペアは、ニューヨークに飛び、テレビ出演するのだ。
 『カエル誘拐犯』にもいっしょに出演ほしかったようだが、彼の身元はミステリーである。
 ジョン・ナイトさんは健康状態がおもわしくなかった。「98年はわたしにとっては良くない1年だったよ」彼は言う。ジョンは肩と肺から大きな良性腫瘍を取り除いたのだ。身代わりカエルがつらいときに救ってくれた。
 「病気のときにこのカエルが元気付けてくれたんだと思うんだ」とジョン。「小さなセメントのカエルにそんなことができるなんて、信じられないだろう。人生を変えてくれたんだ」