「ある物語」
気づいたとき、僕は彼女にまたがって両手で彼女の首を絞めていた。
マダ彼女は意識があるらしく、苦しくか細い声を出していた。
われに帰った僕は自分の手の力を緩めようとしたら、
彼女は無言でそれを否定した。「なんで?」僕は問いかけた。
さっきまで苦しい顔をしていた彼女は少し微笑んで、
...弱弱しいかすれ声で「そのまま続けて...。」
といって彼女は自分の両手を僕の両手に
そっと握り、再び自分の首に持って言った。
僕は彼女がどうしてそういう行為をするかを知っていた。
...彼女は人間じゃないからだ。外見は全くそこら辺にいる至って
普通の女性となんら変わりないが、ある一定の時期・時間帯に
なると、彼女は人間の男性の眼を食べる”鬼”になるのだ。
彼女はその行為を知っていた。何度も止めようとしたけど、
自分の意志ではどうにもならないらしい。ここ最近の変死体事件の
犯人が彼女であることも、僕は知っていた。でも、僕は彼女と
いつしか付き合いだした。彼女は否定したけど、僕は彼女を否定しなかった。
...でもやはり、彼女は自分が耐えられないらしく何度も自殺しようと
したらしい。しかし、彼女は自分の意志では死ぬことができない
らしい。自分の体がその行為にさせる前にブレーキをかけるらしく、
外からの力でしか死ぬことができないらしい。
「僕は、君を殺したくない。何でこんな事をさせるの?」
「.................。」
<「僕は、君とただ一緒に御飯食べたり、外で遊んだり、遠くに旅行に
行ったり、映画見たり、楽しいことをいっぱいしたい。僕は、君の
笑顔をずっと見ていたいだけなんだ。......どうして....。」
握り締める両手の力を緩めれない。もうそろそろ、その時期・時間が来る。
彼女が”鬼”になる時間だ。僕は迷っていた。
ここで緩めたら彼女は鬼になって僕の首をはね、両眼を食いつぶすだろう。
でも、僕は彼女を死なせたくない。......。
「...........いいの。.....そのまま........そのまま」
<「どうして?」
僕の眼から涙があふれ、彼女の顔に落ちる。
「......あなたのそばで死ねるなら、これ以上のしあわせはないの。
...だからお願い、そのままで...。」
彼女の体温が、鼓動が、吐息が、苦痛に苦しむふるえが僕の両手を通して
体につたわる。
「...ありがとう。」
最後に彼女はそう言って、...死んだ。僕は彼女を抱きしめた。その一瞬だけが
僕の中では数時間に思えるくらい長く感じた。
そして、抜け殻になった彼女の体はゆっくりと小さな音を立てて崩れ、
粒の細かい砂となって抱きしめてた僕の両腕のすきまから流れ落ちた...。
僕はその砂を一握りつかみ、その場を去った...。