「僕/part2」
鎖で繋がれた両腕を隠し
焼け爛れた全身を黒のシーツで覆い
僕は空気の淀んだ暗黒街を只管彷徨う。
全てを嫉み 全てを怨み 全てを憎む。
周りの人間がドズ黒い鼠や蛆虫に見え、
吐き気がして、虫唾が走る。
「お前ら、肝忌んだよ!
そんな眼でこっち見んじゃねぇよ!
笑ってんじゃねぇよ!」
見る顔見る顔吊り上った紅い眼と口が
とても鋭く、僕の皮膚に突き刺さる。
刺々しく、そして冷たい。
「こっち見んな!!!」
僕は地面に転がってた石を拾い上げ
屯っている若い連中に襲い掛かった。
僕の右手は大きな弧を描き、しゃがんでいる
若い女の子の眉間に入る。
「ぶちゅっ!」
という鈍い音。そして、鮮血と共にけたたましい絶叫。
『おどれぁ、なにさらしとんじゃぁぁぁ!!!』
隣にいた若い男がそう叫び、僕の胸座をつかみ
その拳を僕の左頬目掛けて殴る。
「ボキっ」という音と共に僕の顔が歪み、その場に倒れる。
そして殴った男の拳の皮膚から骨が飛び出る。
僕の口からは、折れた歯と黒い血が流れる。
殴った男は拳を左手で覆い、地べたをもがいている。
『こいつ、『厄』だ!!』
誰かがそう叫ぶと、周りの連中はもがいている男女を引きずりながら
その場を立ち去る。
そして、僕一人がその場に大の字で倒れていた。
「はは、は・・・ハァァッッハッハッハ・・・・・ゴホッゴホッ。」
歪んだ口からこみ上げてくる憎悪の笑い。そして、狂喜。
そうだ!僕は独りだ!誰もかまっちゃくれない!全ては僕を否定する!
誰も僕が生きる事を認めてくれない!服を着る事も!呼吸をする事も!
どこからともなく、僕の周りに人が・・・いや、蛆虫ドモが集まってきた。
『でてけ!』『ここからでけて!』『「厄」はいらねぇ!』『邪魔なんだよ!』
僕の身体目掛けて、罵声と石が投げられる、その大きさはしだいにエスカレートしていき
その周囲全体が僕への「拒絶」を望む行動を起こしている。
ある者はどこから持ってきたのか、金属バットで僕の身体を殴りつける。
ある者は鉛入りのモデルガンで、乱射している。
ある者は汚れた僕の羽織っていたシーツを剥ぎ取り、腐食した僕の身体をみせしめる。
辺りに立ち込める異臭。ドブ臭く、反吐が出るようなにおい。
さらに群集の暴行がエスカレート。
原形をとどめなくなってきた僕の顔の口や鼻の穴、耳の穴に釣り針を引っ掛け、
釣竿のリールを思いっきり回し、引き上げる。やがて、僕の皮膚はその釣り針に負け、
「びりびりびり・・・・・。」
という音と共に引き裂かれる。・・・・「ひぃぃぃぃぃ・・・・・。」
声にならない絶叫。そして、辺りからは歓声が沸く。
引き裂かれた皮膚の間からは、ピンク色の肉が黄色い体液と黒い血と一緒に垂れ落ち、
野良犬たちが待ち構えてたかのごとくもう突進で僕に近づき、その肉を貪る。
ある者はナイフで僕の身体を胸元から刺し、下腹部まで垂直に引き、内臓をエグる。
野良犬は、そのハラワタをさらに貪り、歓喜の声を出す。
もう僕の意識はほとんどなく、声もだせなくなってきた。僕の両目も犬に食べられ、
耳も引き裂かれたのでろくに周りの音も聞けない。
ただ、歓声による地面のゆれだけが感じる。
僕をいたぶった奴らは英雄気取りだ。
さらにエスカレートし、どこからともなくエンジン音が聞こえ、突如僕の身体目掛けて
もう突進してきた自動車が僕の体の上を走る。
「ぐにゅっ」
小さく醜い音と共に、僕の顔と両足はタイヤの後だけを残し、本来の厚みを無くしている。
さらに歓声。
「・・・・・・醜い蛆虫ドモめ。お前らなんて消えちまえ。」
その思いは言葉に出来ず、戻ってきた自動車に全てをかき消された。
「ぶちっ。」
鈍く、情けない音。そして一瞬の静寂。
そして、僕の意識は暗闇に消えていった。
「――――僕は『厄』じゃない!――――」