A ROOM WITH A VIEW 『眺めのいい部屋』
(1986年イギリス映画/ビデオはクラウンレコードより発売)
E.M.フォスターの原作を、ジェイムズ・アイヴォリー監督が映画化した作品。イギリスの田舎の裕福な家庭の様子がのぞける作品である。主役のルーシーには、この手のやや時代がかった作品には欠かせない女優ヘレナ・ボナム・カーター。オールドミスのいとこと旅行したイタリアで出会った青年ジョージとの恋が描かれる。

自分の気持ちに気付かぬルーシーは、帰国後「進歩的なつもりでいるが実はなにもわかっていない」シシル(ダニエル・デイ・ルイス!! これがハマリ役なのだ)と婚約する。その退屈な婚約披露パーティーを抜け出してシシルとふたり田舎の町を散歩するシーンで、ルーシーのドレスの腰にハーブなどのかおりのよい草花を束ねたタッジー・マッジーがぶら下がっているのを見ることができる。これは、疫病除けのために、殺菌効果のあるハーブを床にまいたりした伝統の名残。今でも、イギリスの伝統的なガーデンの中には、このかおりの花束タッジー・マッジーを売り物のひとつにしているところがある。ハーブのかおりのよい花々にミニバラなどを組み合わせてつくるかわいらしいブーケである。

この映画でもうひとつ印象的に登場するハーブがコーン・フラワー(矢車草)。ルーシーがイタリア旅行で出会った老姉妹が「花の中では矢車草が一番好き」と言う場面がある。その花を贈られ無邪気に喜ぶ老いた姉妹の様子に、なんともいえない哀切がただよう。矢車草は日本でもおなじみの花で、「あれもハーブなの?」と思う人もあるかもしれない。今はもっぱら鑑賞用の花だが、眼病の薬や強壮薬としてつかわれた、古い歴史をもつ草である。ツタンカーメンのお墓からも出土したそうだ。わたしも矢車草の花は大好き。庭のある家で暮らせる日が来たら(夢だぜ!)ぜひ植えたいと思っている。
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