『銀色猫のヒゲ』
|
* 1 * 冬の風がふきはじめたある日、あっという間にやってきた夕暮れ時のことでした。葡萄棚をくぐり、花崗岩(みかげ)の敷石を跳ねるように進んできた桂(ケイ)は、不意にその歩みを止めました。玄関につづく石畳の上で、5センチほどの針のような碧水色の結晶が、ひらっひらっと輝いています。手に取って見ても、硝子なのか金属なのかわからない。夕明かりに照らされて薄菫色に輝く様子は何とも言えず美しく、すっかりそれが気に入ってしまった桂は、鞄から鹿皮布を取り出し、大事に包みこみました。 |