私の働く施設では、日々単調な生活がくり返されがちです。
もちろん、それは私の勤務する施設にとどまらず、一般的に施設での生活はそうなりがちです。
これが、入所者の「痴呆」をすすめてしまう要因にもなりかねないという一見解も以前耳にしたことがあります。
単調な生活のくり返しは、確かに入所者にいい影響を与えるようには思えません。
その証拠にお元気な入所者でさえ、「今、朝だったかなぁ?」なんて真昼間に言われたりすることがあるのです。
そんな生活に少しでも変化を加えられれば・・とよく職員間で話をします。
私なりに努力していることはといえば、なかなか室外に出ることのできない入所者の方々のために、「季節の話」をすること。
なんでもいいのです。「庭の梅の花が咲いたのよ」とか「桜の開花予想日は○日くらいなんだって」とか、そんなたわいもないこと。
時には、季節の歌を歌います。「♪は〜るのおがわは・・」なんて、うまくもないのに大きな声を張り上げて(お年寄りは想像以上に耳が遠かったりするのです)歌うのです。 「入所者に『季節』を伝えられたら・・」そういう思いからか私はいつのまにか、季節の情報や童謡、唱歌に敏感になりました。
入所者と接するときの話題として、季節に関する話は予想以上に反応がよいのです。 人間は、(日本人は、なのかなぁ?)季節のものに対する思いがかなり強いようです。 そのおかげで、私自身も「季節の話題」に詳しくなりました。 それまで、大して知らなかった花の名前や花の季節までわかるようになったりして・・。
器用な同僚達は、色がみや画用紙で季節にあった飾りで目を楽しませてくれます。
それは、施設の単調な生活にさりげなく花を添えてくれているのです。
時に、それは「花」であったり、「こいのぼり」であったり、「海」であったりと、忙しく走りまわる私たち職員の心まで和むようです。
本当は、入所者の方々を外へ連れ出せたらいいのでしょうけど、それもなかなか叶わない。 これらは、せめてものつぐないかもしれません。
そんな単調な生活も、窓の外では自然たちが季節の移り変わりを見せてくれます。
恵まれたことに、私の職場の敷地は広く木々や花も豊富です。
窓の外に、雪や桜の見える頃にはちょっとベッドをギャジアップして、季節を楽しんでいただいたりします。 ある雪の日、外のベランダに積もった雪を入所者の枕もとに運んで「雪だよ」と声をかけました。 どんな反応が返ってくるのだろうという私の不安をよそに、たいていの方が「わぁ珍しい」「わぁきれい」と予想以上の反応を示されたのです。
「季節をはこぶ」ということの大切さを改めて実感しました。
今朝、Tさんのところに食事介助に入ると優しい懐かしい匂いが漂ってきました。 なんだろう?と顔を上げると、そこには水仙の花がさりげなく花瓶にいけて飾ってありました。 きっと面会の方の心使いなのでしょう。 小さな春が、飾りっけのない、単調な時間の流れる居室に広がっていました。
もうすぐ春。暖かくなったら入所者の方々と外でのんびりできたらなぁなんて思う今日この頃です。

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