「Yさん、もしも私がここに働いている間に間違って亡くなることがあったら、幽霊になって私に会いに来てね。Yさんの幽霊ならばぜんぜん怖くないから・・・会いたいから絶対ね!」
仲のよかったYさんというおじいさんと大笑いしながら、もう4,5年前によくこんな話をした。
「わかった、わかった。おねえちゃん(私のこと)に会いに来るわ。お姉ちゃんが夜勤の時でいいなぁ」
「うん、うん」
半分本気、半分冗談の顔で、私達は幾度となくそんな話を繰り返した。
私の仕事は、「死」という場面によく立会う。
看護婦さんのように直接ではないにしろ、昨日まで話もできていた方が、翌日仕事に行ってみると亡くなっていたり・・なんてことも珍しくない。
「そういうことも、多々あるんだよ」と、自分に普段から言い聞かせてはいるものの、実際その場に遭遇するとやはりつらい。
この仕事をはじめて7年目。少しづつ「死」と言うものに疎くなってきた気がする。
しかし、やはり「人の死」は,
やりきれない。
引き取り手のない方の場合、施設内での葬儀が行われる。
施設内の仏間で、その方の葬儀がとり行われるのだけれど、私達職員も時間の許す限り葬儀に参列させていただく。
お年寄りの死は、それを聞いただけでは「悲しみ」も夢のようにしか感じないのだけれど、こう言う機会があると、その死をずんと重たく感じる。
その方の思い出、笑った顔、寝顔、悲しそうな顔、頭の中に色々な思い出のシーンが浮かび、一層ぐっとくる。時には、涙が止まらないこともある。
せめてもの救いは、その方の死に顔がとても安らかであること。
霊柩車を見送る時、頭を下げながら最後の別れをする。
ところで、最初に話したYさん。
私が息子を身ごもったことがわかってしばらくした頃、この世に別れを告げ旅立たれた。
私はもちろん葬儀に参列するつもりでいたのだけど、同僚に「妊娠中はお葬式は病めておいた方がいい」と、強く止められ最後のお別れができなかった。
無理にでも行けばよかったかなぁ・・・今でも少し後悔している。
ところで、Yさんのその後・・・
「幽霊になって私に会いにきてくれる約束」だけど・・・
夜勤の夜にはひそかに待っているのだけど、今だ現れる気配なし。
私との約束、忘れてしまったのかなぁ・・・?
私なら、大丈夫だよ。Yさん。 Yさんのこと大好きだったんだもん、幽霊のYさんにも驚かないよ。

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