理想の世界
消極的な少年にとって、星ヶ池公園は、唯一の縄張りだったんだって。その公園では彼の望むことは何でも実現したらしいよ。
光化学スモッグが空を覆い、めまいがするような暑い夏、それは突然現れたって話だよ。蜃気楼のようなおぼろげに揺れる景色。手で払えば簡単に消えてしまいそうな、そんなあやふやな存在。しかし、少年はそれが現実だとハッキリと感じ取っていた様だよ。何もない、閑散とした公園だった。それ以来そこが少年のお気に入りポイントとなり、やがて遊び場になっていったとさ。
ある日、少年は公園のあまりの殺風景さに嫌気がさして、絨毯がほしいと願った。(何で絨毯?)すると、その公園の景色が一変、ふかふかの絨毯が地面いっぱいに敷き詰められた。この、現実ではあり得ない状況にも少年の顔はぴくりとも動かなかった。少年にはそれが当たり前のような気がしていた。やがて、公園には少年の望むものが次々と創られていった。少年によって、公園が一通りカスタマイズされた頃には、別の子供たちがこの公園を訪れるようになっていた。けれど、どんな奴が来ようとも、そこでは少年が主人公だったし、王様だった。少年に刃向かうものは、すぐに公園から閉め出されたし、二度と来ることもできなかった。その公園は単なる遊び場ではなくなっていた。そこが世界そのものだった。その少年にとっては・・・。少年は、公園を広く、大きくしたいと願った。実際その通りになった。公園を訪れる子供の数もどんどん増し、少年は本当に王様になった。来訪者が増えるにつれ、少年は公園の規則をつくっていった。それが、公園に来る子供たちの誰もが楽しく遊ぶための最良の方法だった。公園は少年の理想の世界となった。公園の外の世界は夢のない世界に思えた。しかし、少年の理想を完璧にしようとすればするほど、規則は次第に厳しいものとなっていった。それに反比例して子供の数は減っていく・・・。子供たちは外の世界に帰っていった。(当然の結果だよね。)来訪者が途絶え、少年の世界が崩壊の危機に瀕したとき、少年は気づいた!理想の世界そのものを望めばいいと。少年は公園に、彼の望むすべてが手に入る理想の世界が欲しいと願った。
次の日から公園は二度と現れなかったとさ。 おわり