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「おおはらぁ〜」
「した」収録の日、いつもと同じように建て込みを済ませ、事務所でタバコをふかしつつ
漫画など読みつつしていた大原は、何故か遊びに来ていた星野に声をかけられた。
星野は事務の女の子と大原の向かいのソファに座って談笑していたようだ。
「あ、はい。何でしょう」
大原は漫画を閉じると、視線を顔ごとがばっと上げて星野を見た。
「済まないんだけどよ、ちょっとお使い頼まれてくれねえかな」
「あ、いいすよ。何ですか?」
「今日の競馬新聞、買い忘れちまってさ…ちょっとこの子に見せたいものあるから」
二人は仲睦まじそうに笑いあっている。かなり話が弾んでいたから、自分で買いに行けと
言っても離れられないのだろう。もちろん大原はそんな事を言うつもりは毛頭無かったが。
「わっかりました。何がいいすかね」
大原は笑顔で答えると、タバコを灰皿にぐりぐりと押しつけた。手をはらって立ちあがる。
「そうだな…『勝馬』か、『セブン』、無きゃ日スポでもいいわ」
「ごめんね、大原くん」
女の子がたいして申し訳なさそうでもなく言う。だが大原はニッコリと目を細めて笑って
「いいんすよー。じゃっ、行ってきます!」
財布を握り締めて事務所を飛び出していった。
「買ってきましたよー」
ほどなくして戻ってきた大原は、星野に新聞を手渡した。
「おう、ありがとな。釣りはとっとけ。走り賃だ」
「………あ、の」
大原は少し固まった。あらかじめ金を渡されていたわけではなく、自腹で買ってきたのに、
星野はまったく気づいていないようだ。女の子がそれとなく促す。すると
「あーーーー、いっけねえ。そかそか、俺まだやってなかったっけ」
「そうですよぉ〜!」
2人は全く悪びれた様子もなく、大笑いしている。そんな2人に文句を言う気にもなれず、
「いいですってそんくらい、俺奢りますって」
つい軽く言ってしまう大原だった。
「おおー、さすが大原リーダーだぜ。太っ腹!」
星野のヨイショに照れ笑いを返すと、大原はタバコを取り出し、収録風景を写すモニターに
目を向けた。そろそろ最後の収録、野猿の出番のスタンバイの声がかかる頃だろう。
(りーだー、ねぇ…)
全ての収録が終わり、「野猿のバカ」としてモニターに映っていた自分を切り替え、衣装を
脱いで事務所に戻ろうとしていた大原を、大声で引き止めた人物がいた。
「よーーーーおっ!」
木梨憲武が跳ねるようなステップで近づいてくる。収録中の雰囲気そのままに、やけに
ハイテンションだ。今日の「ほんとのうたばん」で発表された、新曲のオリコン初登場順位
が予想以上に高かったせいかもしれない。
幾分気押されされながらも、大原も嬉しそうに応える。
「木梨さん」
「オマエさあ〜、こないだ実家から、あれ送ってきてくれたじゃない、あれ」
「あれ」…?大原は考えた。木梨さんの家に、俺の実家から?思い当たることは一つ。
「あの…もしかして、桃、ですか?」
「そうそう、それ!桃!!」
どうやら咄嗟にその単語が出てこなかっただけらしい。大原はああ、と納得した。
「どうでした?あんまりおいしくなかったですか?」
「いや、それがもう…甘くって美味くってカミさんも子供も大喜びでさあ、一箱があっという
間よ。毎日毎食食ってりゃそうだろうけどな〜おかげで肌の調子がいいったら!」
相好を崩しまくりながら木梨が大原の肩に腕を回す。大原もつられてにこにこしながら
「ホントですか?いや〜よかったです。なんなら、まだあると思いますから、よろしければ
また送りましょうか?」
つい、つるりと言ってしまうのだ。
「おお!いいのか?なんか悪いねぇ」
「いえいえ、とんでもないっすよぉ〜」
「頼れるなぁ大原、さすがは野猿のリーダー!」
木梨は大原の頭や背中を叩きながら言った。いていて、と小さく呟きながらも、大原も
満面の笑顔を浮かべていたのだった。
(りーだー、かぁ…)
そして今日のすべての仕事が終わり、フリーになったタレント2人+スタッフ9人は、
恒例の焼肉パーティーに繰り出すべく、都内某所、駅近くの公園に集まっていた。
馴染みの焼肉屋はすぐ側だが、遅れていてまだ合流しきれていないメンバーがいるのだ。
その人の名はズバリ、石橋貴明。
「オゴリ係が遅れてちゃあ、話になんないでしょ」
しっかり先に来ていた木梨が、既に缶ビールを開けながらうそぶいた。
「先に入ってやっちゃってていいぜ」という石橋の連絡があったばかりだが、『石橋さんを
待ってます』と全員が意見を一致させた。
幸いにも今夜は暖かく、湿気も少なく、程よい風が心地良い。高揚した気分も手伝って、
外でタバコでもふかしながらだべっているには丁度良かった。
元気な神波や高久は、大きな野良犬を見つけて追いかけまわしている。遊んでいると
いうより、遊ばれているように見えなくもないが。
「あ…タバコ切らしてるわ」
ポケットから空っぽのマルボロの箱を取り出して、平山は小さく舌打ちしながら呟いた。
それを握りつぶすと、ぐるりと辺りを見まわして自販機を探す。見える範囲にはどこにも
無いようだ。
しばらく逡巡したあと、観念したように歩き出そうとした平山の耳に、大原の独り言にしては
でかい声が届いた。
「あれーーー?おっかしいなぁ…もうなかったっけ…」
どうやら大原もタバコを探しきれないらしい。しきりにポケットや鞄をまさぐっている。平山は
そっちに近づいていった。
「どしたの大原?」
「あ、いや〜、タバコなくなっちゃって」
吸い尽くしたつもりはないんですけどねえ、と頭を掻きつつぼやく大原。
「この辺に自販機、あったっけねぇ?」
「あ、平山さんも?じゃ俺、どっか探して買ってきます」
「えっ、いいの?悪いなぁ…」
「いいですって。ついでですもん」
にっこりする大原。また言っちゃった…と自分でも少し呆れる。でもいいか。嫌ではない。
この立場も、自分に染みついた下っ端気質も、この仲間達とならばちっとも苦痛じゃない。
………のだが。
「あ、何?大原タバコ買いにいくの?」
「え、ええ」
「俺もそろそろ切れるんだよね…一緒に頼んでいい?」
「あ、ハイ、もちろんす。ラッキーストライクでよかったですよね」
「俺、喉渇いちゃった。大原ぁ、ポカリ買ってきてくれる?あったらでいいからさ」
「あ、ハイハイ」
「あ、じゃ俺も。俺ラークね」
「俺ちっちゃいジョージアの缶と、ケントマイルドよろしく」
「え゛…ちょ、ちょっと待ってくださいよお、そんな覚えらんないですよ〜
>o<」
そしてあたふたとメモをとり、駅に戻るように走っていく大原の背中に皆の声がかかった。
「カッコいいぞ大原ぁ〜〜〜!!」
「野猿が誇るリーダー!!」
「走る〜走る〜おお〜は〜ら〜♪」
「転ぶなよーーー!!」
それぞれ好き勝手な事を叫ぶ。そのいくつが大原の耳と心に、届いただろうか…
「…はい、お待たせ、しました…」
ゼイゼイと息をついて戻ってきた大原の元に、皆がたかる。かなり遠い距離を走ってきた
ようだった。口々にサンキューとか言いながら、その半数が代金を渡すのを忘れている。
しかし大原は怒ったり不満そうな顔は全くせず、汗の光る顔でにこにこと笑いながら
何かをやり遂げたような爽やかな気分に浸っていた。
(リーダー、なんだな…俺)
そんな大原を冷静に見つつ、『それは何か違うぞ大原』と心の中でツッコミを入れながら
成井はちゃっかり買ってきてもらったウーロン茶に、満足そうに口をつけたのだった。
おわる。
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<後書き?>
今日、会社から帰ってきていきなり思いついて速攻で打ち上げました。なんかもう皆ダメなやつに
してしまったような気が(殴)本当の大原くんは、もっと(良い意味で)プライドの高い青年だと思うん
ですけどね。ワタシの中では、こういう人です。Jim本人に似てちょっと阿呆度高いです。
ワタシはファン歴短いので、メンバー皆の性格や口調、お仕事などを正確には理解できてません。
なのでこれはあるひとつのコントということで…笑う所ないけど。じゃお芝居?劇?でもいいや(笑)
「桃」のくだりは「GET ON!」を参照にしました。あんまりなんですもん。あの扱いのひどさ…
19990903UP Jim