Crevice#3
光のあふれる公園を抜けると、青白い電灯がぽつぽつと立つひとけのない倉庫街がはじまる。
あたりは黄昏時のあわい陽光に満たされていたが、ふんだんな人工灯の明るさに慣れた目にはまるで闇の中にいるようで、日比野は自分の足元すらはっきりと見分けることができなかった。
この倉庫街のさらにはずれにある小さな倉庫の前で日比野は立ち止まった。少し古い以外にはなんの変哲もない。すぐ後ろには海が迫っていて、対岸の埋め立ての島がとても近くに見える。島の倉庫街に面した土地には2棟の高層マンションが建設されている途中だったが、暮れゆく空に黒々と浮かびあがる鉄骨は日比野の目には墓標か何かのように映った。屋上に瞬くいくつもの赤いランプ。ゆっくりと明滅するそれは、いつもなぜか不安な気分を引き起こす。
日比野は隣の事務所棟を最初に覗いてみた。鍵がかかっている。扉にはめ込まれた摺り硝子の小窓のむこうは暗く、中には誰もいないようだ。扉を叩いてみたがやはり返事はなかった。
早く来すぎたらしい。日比野は舌打ちして裏にまわり、通用扉に手をかけた。事務所が開いていなければこちらも開いていない可能性のほうが高い。
しかし予想に反して扉は開いた。かすれた金属音とともに扉が開いたとたん、埃くさい匂いが鼻につき、日比野は少しせき込んだ。
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