horror 2005
背の眼(2005.2.20)
道尾秀介 幻冬舎
第5回ホラーサスペンス大賞・特別賞受賞作。
ホラー作家の道尾は、ふと思い立って出かけた旅先の河原で恐ろしい声を耳にする。それはこう聞こえた。「レエ オグロアラダ ロゴ…」。そこは過去に少年が殺され、その頭部が発見された場所だった。逃げるように旅先から帰る電車の中、その言葉の意味を悟った道尾は戦慄を覚える。
帰京した道尾は、古い友人で心霊現象探求家である真備を訪ねる。真備の元には、複数の相談者から送られてきた不可解な写真があった。それらはすべて道尾の訪れた旅先・福島県白峠近辺で撮影されたものだ。彼らは再び白峠へと向かう…。
とにかく最初は怖かった。
「オグロアラダ」の意味がわかる場面ではもう怖くてそれ以上本が読めなかったほど(なんせ夜中に一人で読んでたんで…/笑)。基本的に怖いのは苦手(>_<)。
ところがところが、真備登場で怖さは一気に霧散。これは京極堂シリーズじゃないのよー。そうなるともう、道尾はちょっと社交的になった関口巽にしか見えない。真備はどうしても京極堂と比べずにはいられない。そして、どちらも京極堂&関口に比べるとどうしてもインパクトが弱いというか…。
完全にオカルトな本というわけではない。かといって、京極堂シリーズみたいにすべてを論理的に語る本でもない。うーん、立ち位置が曖昧な印象。「背の眼」というタイトルも生きてない気がする…。
最初はものすごく怖かったのにな〜。
真備というキャラクターを出してきちゃったのは、失敗のような気がする。
蘆屋家の崩壊(2005.5.26)
津原泰水 集英社
三十路を過ぎて定職にもつかないぐうたらな「おれ」と、怪奇小説家の通称「伯爵」はふとしたことから知り合い、お互いが大の豆腐好きということで意気投合した仲間。この作品はそんな二人が出会う奇々怪々な出来事を綴る連作短編集だ。
津原泰水を読むのは『綺譚集』に続き2作目。あの美しくも妖しい世界が再び…と思いつつ読み始めると、少しだけ印象が違った。こちらも確かにそういうテイストがあるのだけれど、それプラスちょっとしたユーモアエッセンスが。けれど幻想的な作品であることには違いない。
「猫背の女」の押入から○○が…というシーンでは「リング!?」と思うほどぎょっとし、「カルキノス」では思わず子供の図鑑でアサヒガニを確認してその文章通りの不気味な姿にゾッとし、「埋葬虫」の気味の悪い美しさに嫌悪を覚えつつも魅せられ、そして最後の「水牛群」ではギリギリまで張りつめた神経に痛みを覚え、不思議な幻想に惑乱させられる。
ああ、やっぱり好きかも…津原泰水。
「おれ」と伯爵の、なれ合いにならない、余所余所しくもならない絶妙の距離感がいい。
さて、次は『妖都』を読んでみようかな…。
(収録作:「反曲隧道」、「蘆屋家の崩壊」、「猫背の女」、「カルキノス」、「ケルベロス」、「埋葬虫」、「水牛群」)
うなぎ鬼(2005.8.7)
高田侑 新潮社
悪い方へ悪い方へ転がるばかりだった勝の人生は、ここへきて初めて上向き始めているようだった。どん底から勝を拾い上げてくれたのは怪しい会社の社長・千脇。勝の先輩株の富田は千脇を信用していないようだったが、勝にとって彼は恩人だった。
しかし彼の指示で「黒牟」という町のうなぎ工場へ連れて行かれ、コンテナ運びの仕事を始めたとき、勝の疑惑は膨らみ始めた。果たして箱の中身は何なのか。この工場の本当の目的は何なのか。そしてこの黒牟という町は一体どういう町なのか…??
ホラーと言うよりはミステリ。タイトルから想像できるとおりうなぎが出てくるのだけれど、このうなぎの生理的な気持ち悪さがホラーっぽいと言えばホラーっぽいか。とにかく主人公である勝に感情移入できなかったので、気持ち悪さも、恐怖も、謎に対する好奇心もあまり感じられなかったのが残念。ダメダメすぎるんだもの、この主人公。同じダメダメでも『告白』の熊次郎には思いっきり揺さぶられたんだけどなあ。
想像だけでどんどんイヤな方へイヤな方へ気持が進んでいく主人公なので、次々と謎が提示され、それが少しずつわかっていって…という話ではない。ちょっと見聞きしたものを主人公が想像で勝手に「本当は違うんじゃないか? 本当はこうなんじゃないか?」とどんどん怖い方へ膨らませていくんだけれど、なんだかこっちが「おいおい、そこまで勝手に決めつけないでちょっとは冷静に考えようよ」と主人公を諫めたい気持に(苦笑)。一番怖かったのは主人公の後半の衝動的な行動だったりする。もしかするとその辺りがクライマックスなのかもしれないけれど、そう考えるとミステリとしてもちょっと異端?
ラストもぞっとする、というよりは、そりゃ当然の結末じゃないの…?と思ってしまったわたしが冷たいのか。
結局一番怖いのは見かけで根強い偏見を持ったり、いつも自分は被害者のつもりでいる世間にありふれた普通の人々…ということなのかしら? あ、そう考えるとかなり怖くなってきた…。