2007 shelf 6
著者名 タイトル 出版社 116 伊井直行 進化の時計 講談社 115 シンシア・アスキス他 淑やかな悪夢 創元推理文庫 114 沼田まほかる 猫鳴り 双葉社 113 コニー・ウィリス 最後のウィネベーゴ 河出書房新社 112 桜庭一樹 桜庭一樹読書日記 東京創元社 111 大江健三郎 二百年の子供 中央公論新社 110 伊井直行 服部さんの幸福な日 新潮社 109 伊井直行 本当の名前を捜しつづける彫刻の話 筑摩書房 108 キース・ロバーツ パヴァーヌ 扶桑社 107 平山夢明 独白するユニバーサル横メルカトル 光文社 106 森見登美彦 有頂天家族 幻冬舎 105 野村美月 ”文学少女”と慟哭の巡礼者 ファミ通文庫 104 アンドレイ・マキーヌ フランスの遺言書 水声社 103 恩田陸 木洩れ日に泳ぐ魚 中央公論新社 102 金城一紀 映画篇 集英社 101 ケリー・リンク マジック・フォー・ビギナーズ 早川書房
マジック・フォー・ビギナーズ(2007.10.29)
ケリー・リンク/柴田元幸・訳 早川書房
もんのすご〜〜〜〜くヘンテコリンな短篇が9篇。ヘンだ。読んでも読んでもヘンだ。こういうのが”奇妙な味”って言うのかなあ。とにかく発想があり得ないほど奇想天外。展開がまったく予想できない。最後まで読んでも本当に終わったのか確信が持てない(笑)。手を引かれて不思議な森の中に連れて行かれて、右も左もわからなければ次から次へと出てくる見たこともないような植物や動物に気を取られて、ハッと気がつくとそこまで手を引いてくれていた人がいなくなっていて、わ、わたしここでこれからどうしたらいいの!? みたいな読後感。好きかキライかと言われれば、ええ、大好きですとも(笑)。
不思議なおばあちゃんのバッグにまつわる「妖精のハンドバッグ」。
聞こ見ゆる深淵の淵で通りすがりの人間やゾンビたち相手を相手にするコンビニで働く青年の物語「ザ・ホルトラク」。
大砲についてのQ&A集「大砲」。
引っ越し先の家でいろんなものが幽霊に憑かれてしまう「石の動物」。
母親の魔女が死んで魔女の飼い猫に育てられる「猫の皮」。
出所したばかりの男が他人のパーティに潜り込む「いくつかのゾンビ不測事態対応策」。
死者との結婚が世間に認められ始めた世界で死者との離婚を考える「大いなる離婚」。
ある日大伯母からチャペルと電話ボックスを遺された少年の物語「マジック・フォー・ビギナーズ」。
人生に疲れた男たちが囲んだポーカーのテーブルで、有料電話サービスの相手の女性が物語を語る「しばしの沈黙」。
一気に読んだら胃もたれを起こしそうな、独特で濃厚な物語の数々。秋の夜長に、一篇ずつ読むのはかなりステキかも。
(収録作:「妖精のハンドバッグ」、「ザ・ホルトラク」、「大砲」、「石の動物」、「猫の皮」、「ゾンビ不測事態対応策」、
「大いなる離婚」、「マジック・フォー・ビギナーズ」、「しばしの沈黙」)
映画篇(2007.10.30)
金城一紀 集英社
映画にまつわる連作短篇集。
デビュー作が映画化されることになり、撮影所を見学に訪れた「僕」は、偶然再会したかつての同級生から、ずっと気になっていたひとりの友人の消息を聞く。(太陽がいっぱい)
突然夫に自殺され、家から一歩も出られなくなった主婦が、延滞していたビデオテープの返却をきっかけに少しずつ生きる力を回復していく。(ドラゴン怒りの鉄拳)
風変わりな同級生の家出の計画に協力する赤木君には家出に協力せずにはいられなくなるような事情があった。(恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス)
囲まれていた同級生たちの輪からユウを助け出してくれたおばちゃんには上半身にひどい火傷の跡があった。(ペイルライダー)
おじいちゃんの一周忌が終わり、すっかり「だいじょうぶオーラ」が消えてしまったおばあちゃんのために、鳥越家の5人の従兄弟たちは「ローマの休日上映計画」を実行する。(愛の泉)
どれも非常に暖かい。
どこに行ってもどうやら大好評だ。
でもわたしはちょっと、なんだかなー、と思ってしまった(苦笑)。
ゾンビーズのシリーズには、辛い環境を吹き飛ばすようなあっけらかんとした明るさを感じて、ものすごーく惹かれた。
でも、これは、そういうのとは何か違う気がする。
すごく安っぽい「ハートウォーミング」を感じる。
多分最初の「太陽がいっぱい」が好きになれなかったのが敗因。
こんなの救いになる?
こんなものが「フィクションのもつ力」なの?
もしもわたしが龍一で、この「自分を救うための物語」を読んだら、友情は一気に醒める気がするわ。
救ってほしかったわけじゃない。
SOSは発したけれど、でもそれは縋りつきたかったわけじゃない。
気づいてもらえなかったなら、それはそれでよかったのに。
なのになんだよ、この言い訳みたいな「フィクション」は?
ってきっと、わたしだったらそう思う。
フィクションの力ってそういうものじゃないと思う。
個人的にはそう思う。
(収録作:「太陽がいっぱい」、「ドラゴン怒りの鉄拳」、
「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」、
「ペイルライダー」、「愛の泉」)
木洩れ日に泳ぐ魚(2007.10.31)
恩田陸 中央公論新社
別れを決意している男女が、荷物を運び出してガランとした部屋で、買ってきた酒と総菜を囲んで最後の一夜を過ごす。
二人の心の中にはそれぞれの疑念がある。
「彼が(彼女が)、あの男を殺したんだろうか?」
夜が深くなるにつれて、二人の間の緊迫感は増していく。
苦しいほどに濃密な夜。
少しずつ明らかになっていく秘密。
二人の夜は、はたして明けるのか。
登場人物はたった二人。密室の会話劇を書かせると、やっぱり恩田陸ってうまいなあ。不穏な気配、ということでは彼女の右に出る作家はいないのでは、と思わせる。
醸し出される緊迫感は読者も息を詰めてしまうほど。残りのページが僅かになり、少しずつ夜明けの気配が近づいて来るにつれて、こちらもふたりがどんな夜明けを迎えるのか、気が気ではなくなってくる。
この人はホントに演劇が好きなんだなあ、きっと。
そのうち脚本でも書き出すんじゃないだろうか。
あっと言う間に読み終えられるんだけれど、その濃密度は空気が粘着質になるのを感じられるほど。
エンディングもキレイに着地して、濃ゆ〜〜い夜を愉しませていただきました。
フランスの遺言書(2007.11.6)
アンドレイ・マキーヌ/星埜守之・訳 水声社
ロシアの草原(ステップ)の縁に位置する町・サランザに、「ぼく」の祖母は住んでいた。ロシアの広大な雪原に迷い込んだフランス女、それが「ぼく」の祖母だった。
毎夏、祖母の家を訪れ、祖母の語るフランス語に姉とともに耳を傾けるのが「ぼく」の至福のときだった。祖母の言葉を聞いていると「ぼく」の目の前に、増水したセーヌ川の水辺から、フランス=アトランティスが浮かび上がってくるのだ。そうして「ぼく」は祖母から、フランスを接ぎ木されたのだ。
しかし成長するにつれ、フランスの接ぎ木は人生を妨害するようになる。ロシアに行きながらつねに「ここではないどこか」を夢見ることができた少年は、その代償のように、フランスに、そして祖母に、対立する愛憎を抱え葛藤するようになる。
その怒りを祖母にぶつけるためにひとりでサランザを訪れた「ぼく」は、そこで初めて祖母の美しさを目の当たりにして呆然とする…。
高校生ゴングール賞受賞作の中で、エンタメ度の低さではピカ一だという気がする(汗)。淡々と、淡々と続く文章は手に汗握るサスペンス的展開、続きが気になって仕方ないミステリ的展開とは無縁。読むスピードは必然的に遅くなり、眠気は必然的に襲ってくる(苦笑)。けれど、この著者の自伝的小説は、読んだ後にじわじわと効いてくる。物語がわたしの体をゆっくりと巡っているのがわかる。連想するのはマクラウドの『彼方なる歌に耳を澄ませよ』かなあ。いや話自体は全然違うんだけれど。
運命に流されてはるか東のロシアに流れ着いた祖母・シャルロットは、その人生をしっかりと受けとめ、咀嚼し、そこで自分らしく生きている。故郷とは鉄のカーテンで断絶され、夫は戦争の傷が元で亡くなり、孫たちがくる期間を除いては母国語をまったく封じられた、壮絶に孤独な人生は、しかしまるで悲壮さを感じさせない。
祖母はなぜこんなにも美しいのか。
「ぼく」とともにその答えを知ったとき、わたしを襲った衝撃は感動とひとことで済ませていいものなんだろうか。
本当に体にいい、栄養に富んだ、自然そのものといった味つけの食事を食べて、その滋味に富んだ味わいは認めながらも味つけの単調さに辟易としていたら、食べ終わってからほっこりと体が温まって、取り込んだ食物が確かに自分の体を巡り、血と肉を作っていることを実感して感動するような、そんな読後感。
ちょっと苦労はしたけれど、それだけの価値があった作品だったわ。
”文学少女”と慟哭の巡礼者(2007.11.6)
野村美月 ファミ通文庫
いよいよ美羽が登場して、クライマックスと言えるような第5作。今回の下敷き本は本当にピッタリで感動的だった。
遠子先輩は受験を控え、ななせとは少し距離を近づけていい感じの心葉。しかしななせが突然入院したと聞き、お見舞いに病院に赴いた心葉は、そこでとうとう、彼が一時も忘れたことのなかった少女に再会する。美羽…!
素直に心葉との再会を喜びはしゃぐ美羽。しかし彼女との再会をきっかけにしてななせや親友の芥川君との間に少しずつ亀裂が入り、孤立していく心葉。
やがて自殺の原因を尋ねた心葉に、美羽は問いを投げかける。
「カムパネルラの望みは、なんだったと思う?」
いやー、今回の展開は思わず「砂の城かよ!!!」と突っ込んでしまった(笑)。涙目だったけど(笑)。
かわいそうな、かわいそうな美羽。きっと彼女に憐れみは一番ほしくない感情だろうと思うけれど、やっぱりわたしは彼女を憐れんでしまう。心葉はずるい。心葉は鈍感すぎる。心葉は綺麗すぎる。まったくもってその通りだ(笑)。
こりゃ10代で読んだら号泣もの。
そしてそして、こんなに悲しい物語を、救ってくれる遠子先輩はすごすぎる。今回だけはわたしも救えないかと思った…。野村美月、ラノベ作家にしておくにはあまりにも勿体ない〜(ラノベ蔑視みたいでスミマセン)!
もうね、これは教科書に全シリーズ載せてすべての中高生に読ませたいくらいスバラシイ作品だと思うわ。この物語は、きっとたくさんの人を救えると思う。
そして次回は番外編を挟んでいよいよ最終巻らしい。
今回もまたまたヒキはバッチリ。
番外編ってサイトで連載していた短篇をまとめるのかなー?
遠子先輩ともうすぐさよならするのはもんのすごく淋しいけど、でもこのくらいの長さがちょうどいいのかもしれないわ、うん。
有頂天家族(2007.11.8)
森見登美彦 幻冬舎
好き好き、大好きだ!!
桓武天皇の御代、大勢の人間たちが京都へ乗り込んできた。
それに便乗し、狸たちも京都でどんどん産み殖えた。
主人公はそんな狸の1匹、その名も下鴨矢三郎。
偉大な父である下鴨総一郎は、かつて京都にうごうごとひしめく狸界の頂点に立つ「偽右衛門」であったが、ある日帰らぬ狸となった。彼は4匹の子をなしたが、長兄はその責任感だけを受け継ぎ、次兄は暢気さだけを受け継ぎ、四男は純真さだけを受け継ぎ、そして三男である矢三郎は阿呆ぶりだけを受け継いだ。すべては「阿呆の血のしからむところ」である。そして彼らの誰もが偉大なる父の跡目にふさわしいと信じ切る母は父と肩を並べるほど偉大である。
狸たちは天狗である如意ヶ嶽薬師坊、通称赤玉先生に教えを請うた。しかし先生はかつての神通力の殆どを失い、今では出町商店街の北にあるアパートに引きこもり、時たま矢三郎の訪問を受けるほかはつねに自分が攫い、自分を踏み台にして天狗よりも天狗らしく花開いた人間の女性「弁天」に恋いこがれている。
なんて愛すべき狸たち。何て魅力的な天狗に人間たち。
そしてこの愛らしい物語のスパイスになるこの切なさ。まさか森見作品を読んで切なくなる日がくるなんて夢にも思わなかったわ(笑)。しかも切なくなるのが狸の話だなんて!
とにかく阿呆な狸たちのしでかすことを描いているんだから、壮大なまでに馬鹿馬鹿しい。けれどこんな偉大な両親を、わたしはかつて見たことがない。それが人間でないのがつくづく残念だ。いや、人間でないからこそ素晴らしいのか。
4兄弟の兄弟愛が全編に詰まっている。
それを母の愛が包んでいる。
憎むにはあまりにもおバカすぎる、彼らに敵対する従兄弟たち。
哀れだけれど腐っても天狗、な、ちょっとおちゃめな赤玉先生。
ニッコリと微笑めば周囲を凍りつかせそうな弁天。
ああ、誰も彼もを愛してやまない。
読めてよかった。
年末に、おこたに入って読んだらすんごい楽しい年越しが迎えられそうな、極上の一冊。
独白するユニバーサル横メルカトル(2007.11.10)
平山夢明 光文社
読む前に非常にグロい、と聞いていたので恐る恐る読み始めたのだけれど、予想以上に読みやすかった。というか、思ったほどグロくなかった、なんて言ってるわたしは、もしかしてスプラッタがいける人間なのか?(笑) いや、でも最後の短篇だけはダメだったんだけれど。これはダメ、痛すぎる。さらーっと流し読みしてしまった、スミマセン。
わたしが一番この短篇集で感動したのは、すべての短篇で文体が違うこと。これには本当に感激。今まで橋本治以外でわたしはこういう短篇集って読んだことがないかも。
まず最初の「C10H14N2(ニコチン)と少年−乞食と老婆」で、「そんなにグロくないじゃん…」「しかし、黒い」という印象を受ける。
そして「Ωの聖餐」で、ハツ、スナギモ、テバといったネーミングにものすごく悪趣味なモノを感じる(笑)。いやでも、この作品自体は、グログロにもかかわらず、知的で静謐な印象に溢れていて驚く。
「無垢の祈り」で著者の良心を感じる。うーん、でもこれはちょっとできすぎかな。
「オペラントの肖像」は、ここで意外にもSFだよ!と驚く。唐突なSFも文体が違うからまったく違和感なし。これ好きだなー。切ない。
「卵男」は連続猟奇殺人犯とチンケな罪で捕まった男が隣り合わせの独房に入れられる話で、この卵男のポリシーにけっこう痺れる(笑)。個人的にはオペラントとこの話は並べない方がよかったんじゃないか、と思う。
「すさまじき熱帯」は熱帯雨林のねっとりした空気が体にまとわりつきそうな作品。ドブロクの豹変はちょっとガッカリ。
「独白するユニバーサル横メルカトル」これはさすがさすがの表題作。種族を越えた悲恋の物語(って違うだろ)。メルカトルが、けなげ…。
そして最後の「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」。いやー気持ちはわかる!わかるけど、これだけはあまりに描写がイタイって!!許して! でもこの男と女の邂逅が悲しいんだなあ、夢が切なく美しいんだな。
ちょっと質にバラつきがある気がしたけれど、グロイだけじゃなく小説として素晴らしく、ネタバレを気にとめなくちゃいけない類の作品なので感想を書くのが難しい。
でもその辺の小説の水準はかるーく越えてると思った。続けて読むと胸焼けはするかもしれないけれど(笑)。
確かに最後は辛かったけれど、結果的には読んでとってもよかったし、満足♪
(収録作:「C10H14N2(ニコチン)と少年−乞食と老婆」、「Ωの聖餐」、「無垢の祈り」、「オペラントの肖像」、
「卵男」、「すさまじき熱帯」、「独白するユニバーサル横メルカトル」、
「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」)
パヴァーヌ(2007.11.19)
キース・ロバーツ/越智道雄・訳 扶桑社
1588年7月、「妖精の女王」エリザベス1世は凶弾に倒れた。混乱に乗じて無敵艦隊はイギリス艦隊を破り、ローマ・カトリック教会がイギリスを征し、法王はその長い腕を国の隅々まで伸ばした。
以来世界はカトリックによって支配され続ける…。
設定は確かにSFだ。
けれど、ここにある「もうひとつの世界」にはSFの薫りはしない。轍の刻まれた道路に舞いあがる土埃、荒野の悪臭を放つ沼地をさまよう鬼火、煙草の煙のたちこめる酒場で温められたエール、冷たい霧の中を広がる原野。
この「確かな世界」を生きる市井の人々の人生が、やがて壮大なパヴァーヌとなり、歴史のうねりを創り出していく。
居酒屋の女給に恋する機関車乗りのジェシー(この機関車は線路じゃなく道路を走るのだ)。
電気も電話もない世界で確立された地位を持つ信号手に憧れ、その夢に向かって邁進するレイフ。
ある使命を受けたことから人生を激変させる修道士・ジョン。
すべてを思い通りに進めようとする土地の領主に反発しながらも惹かれていく気位の高いマーガレット。
みすぼらしくすべてが黒ずんだ村の生活から逃れたいと思い、時折入り江に立ち寄る白い船に引き寄せられる貧しい漁師の娘・ベッキー。
法王の部下たちの無謀な要求に反旗を翻そうとするコーフ・ゲートの領主・エリナー。
それぞれの登場人物は、誰かの意志を継ぐわけでなく自らの人生を生きる。けれどそれらの人生は響き合い、共鳴を呼ぶ。静かな湖面に小石は次々と投げ込まれ、波紋はどこまでも広がっていく。そしてその小石はたんなる作品の構成単位ではなくて、そのひとつひとつが作品としてものすごく美しい人生の物語なのだ。
なんというか、その美しさに呆然。
本当の名前を捜しつづける彫刻の話(2007.11.20)
伊井直行 筑摩書房
自分の足下が不安になるような、奇妙な不思議感ただよう短篇集。
周囲から知性的でバイタリティ溢れる才色兼備な女と思われている主人公が実は不眠に悩み、不安な日常を送っている「眠りのない夜」。
古びて客足が途絶えた、かつては壮絶なバトルを繰り返しながら今は双子のようにそっくりな仲良しになった老婆たちが働く田舎の海辺の宿の不思議な話「海山寮の冬」。
周囲から「変わっている」と言われながら自分のどこが変わっているのかわからず、周囲との奇妙な「ずれ」を感じるサラリーマンを描いた「希望症」。
13人兄弟でただ一人「黒い羊」と見なされ、親族から無口な変わり者として敬遠され、けれども「私」にだけはいつもヘンテコなホラ話を聞かせてくれた叔父さんの話「ぼくの首くくりのおじさん」。
貧しくも幸せに暮らしていた夫婦が、妻が気に入ってひきとったどこまでも完成されない「彫刻」とその制作者のためにまるで違った生活を始めることになる(いやそんな普通の話じゃない)「本当の名前を捜しつづける彫刻の話」。
若い三人組の女性が一泊で伊豆を訪れて過ごす海辺の平凡なバカンスを、女性の語りで淡々と描く「材木座海岸」。
どれもこれも奇妙だ。
眠りのない夜は不穏な疲れた雰囲気が漂いつづけ、海山寮の冬では老婆たちにまつわる宿泊客の不思議体験に怪談のような恐ろしさを感じ、希望症ではこの不安感に身に覚えがあるような気がしてますます不安になり、ぼくの首くくりのおじさんでほどよくしんみりし、本当の名前を…では主人公と一緒に彫刻の中をさまよううちに自分の人生を見失い、材木座海岸はまるっきり平凡な旅行記なのにもしかしたら一番ヘンな小説はこれなんじゃないかと考える。
なんだか人の脳の中の絶対に普通は見られない混沌とした幻想をうっかり覗いてしまったみたいだ。とびきりヘンな、ちょっと普通は思いつかない、そんな妄想を覗き見て、でも確かにこの「普通とは違っている不安感」は自分の中に存在するような気がする。そうすると自分が不安になる。ぐらぐらする。「みんな違ってみんないい」ではすまされないような異質感。恩田陸の「月の裏側」みたいな。でも不思議と、この異質感は不安なだけでなくて、なぜだか暖かい感じがする。その「暖かさ」こそが伊井作品のわたしの好きなところだ、という気がする。
(収録作:「眠りのない夜」、「海山寮の冬」、「希望症」、「ぼくの首くくりのおじさん」、
「本当の名前を捜しつづける彫刻の話」、「材木座海岸」)
服部さんの幸福な日(2007.11.25)
伊井直行 新潮社
墜落した飛行機から奇蹟の生還を果たした服部さん。それまでの平凡なサラリーマン生活は事故で一転し、次々と問題が降りかかってくる。ものすごく常識とは外れた家族に恨まれてしまった服部さんは平凡な生活(家族と愛人)を守りきることが出来るのか。
なんていうか、確かに異常な人たちが出てきたり、墜落シーンがやたらほのぼの(?)していたりするんだけど、すごく「普通」な印象だった。伊井直行のヘンさって、こういうことじゃない気がするんだけど…いや、楽しく読ませてもらったんだけど。
奇蹟の生還者、ということで世間の注目を浴びてしまう服部さん。沈黙を守る彼に対して、もう一人の生還者はマスコミの要望にどんどん応えて脚光を浴びる。やがてそれが世間の反発を買うようになる。このへんの世の中の動き、というか、流れ、というか、そういうのはすごくよくわかるし、おもしろい。それがやがてミステリタッチの「服部さんは的の正体を暴くことが出来るか?」みたいな話になってきても、相手が常識はずれ甚だしいこともあり、やっぱりそれなりにおもしろい。
愛人と家庭のどっちも守ろうとする話、ということでついつい最近読んだ東野圭吾『夜明けの街で』を連想してしまい(笑)、それに比べるとこっちの方が断然わたしの好みではある。でも飽くまでも比べたら好み、なんだよなあ…。
服部さんの奥さんが一番の被害者だよね、うん。
なんだかんだ言って服部さんの自業自得な話、と言えばそれまでであって。不倫が絡むとどうしても、それでおしまい、になっちゃうなあ。柴門ふみの「Age,35」なんかはマンガだけどめちゃめちゃ面白かったんだけど、大抵はそこまで愉しめる前に「男の自業自得ジャン」で終わってしまう。女性も心底愉しめる不倫小説は難しいってことですか(笑)。なんか自分でもつまんない結論だわ…。
二百年の子供(2007.11.27)
大江健三郎 中央公論新社
大江健三郎を読むのは『燃えあがる緑の木』、『死者の奢り・飼育
』を読んで以来3作目。燃えあがる〜でものすごく苦労した覚えがあるのでちょっと身構えつつ読んだのだけれど、子供向けに書かれたせいか、拍子抜けするほど読みやすかった。
お祖母ちゃんが自閉症の孫・真木のために四国の森に建てた「森の家」。お祖母ちゃんの生前ついにそこに住むことはなかったが、真木を含めるあかり・朔の兄弟「三人組」は、ある夏休みをそこで過ごすことになる。近くの森には「千年スダジイ」という古木があり、そのうろの中で子供が夜を過ごすと、本当に願った時間と場所へ行けるという言い伝えがあった。「夢を見る人」のタイムマシン。三人組の冒険が始まる…。
三人組にはそれぞれに「好きな言葉」がある。あかりは「あんぜん」、朔は「むいみ」、そして真木は「ながもち」。好きな言葉がそれぞれに三人の性格をよく表していて面白い。障害ゆえに純粋さを保ち続ける真木、理論的で頭の回転の速い朔、そして細やかな心遣いができるあかり。三人は村の過去を知り、未来を知り、そして「いま現に自分の心とからだをしている子供」に目を向ける。過去は変えることができないけれど、未来は変えてゆくことが出来る。過去をしっかりと見つめ考えることでそれを人生の資産とし、現在をいっしょうけんめい生きることで未来を作っていける、という強いメッセージ性を感じた。
それにしてもこれだけ読むと非常に「ヒューマニストな大江」を感じる!(笑) でも本当の大江ってどんな人なんだろう。
やっぱり大江は初期作品から順を追って読んでいく方がおもしろいんだろうなあ。
桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ。(2007.11.28)
桜庭一樹 東京創元社
うああああ!
恩田陸に続いて、読書日記をずっと続けてほしい作家さんの登場だ。どうしよう、どうすればいいんだ。
タイトル通りの読書日記なのだけれど、桜庭一樹の日常があまりにおもしろくて何度も何度も笑ってしまう。そして挙がってくる本、本、本。どれもこれも、なんでこんなに魅力的なのよう!!!! しかしわたしってホントにミステリ全然知らないなあ、と改めてしんみり思う。「夏木マリとカー談義」という文章を読んで「車談義?」と素で思う人間が「わたし、本好きです。(にっこり)」なんて言っていいのか。ダメだろ。
こんな本読んだらまた読みたい本がどかどかと増えてしまう。どうしてくれるんだ。そして読み過ぎだ、読み過ぎだよ桜庭一樹!(笑) そんなに読んだら人間としてダメになるわ!(笑)
『赤朽葉』がイマイチだったんだけど『砂糖菓子
』でガビーンときた人間としては、とりあえず他の著作もちゃんと読まなくては。そして魅力的な本の数々の中でもわたしが特に惹かれた本を自分用にメモメモ。
・ほとんど記憶のない女(リディア・デイヴィス)
・一人の男が飛行機から飛び降りる(バリー・ユアグロー)
・赤目四十八瀧心中未遂(車谷長吉)
・雨・赤毛(サマセット・モーム)
・文盲 アゴタ・クリストフ自伝(アゴタ・クリストフ)
・黄色い雨(フリオ・リャマサーレス)
・空に浮かぶ子供(ジョナサン・キャロル)
・沈黙のあと(ジョナサン・キャロル)
・ジョン・ランプリエールの辞書(上・下)
(ローレンス・ノーフォーク)
・レイチェル(ダフネ・デュ・モーリア)
・レベッカ (上・下)
(ダフネ・デュ・モーリア)
・長い夜の果てに(バーバラ・ヴァイン)
・尾崎翠集成〈上・下〉
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・虹とクロエの物語(星野智幸)
・シャルビューク夫人の肖像(ジェフリー・フォード)
・白い果実(ジェフリー・フォード)
・愛についてのデッサン―佐古啓介の旅(野呂邦暢)
・樹霊(鳥飼否宇)
・不思議島(多島斗志之)
・二島縁起(多島斗志之)
・二匹(鹿島田真希)
・天使の運命 (上・下)
(イサベル・アジェンデ)
・海の上の少女―シュペルヴィエル短篇選(ジュール・シュペルヴィエル)
・ハマースミスのうじ虫(ウィリアム・モール)
・薔薇密室(皆川博子)
・百日紅 (上・下)
(杉浦日向子)
・午後四時の男(アメリー・ノートン)
・真鶴(川上弘美)
・ニシノユキヒコの恋と冒険(川上弘美)
・雨の午後の降霊会(マーク・マクシェーン)
・肉体が記憶と出会う場所(デイヴィッド・ムラ)
・琥珀捕り(キアラン・カーソン)
・星を数えて(デイヴィッド・アーモンド)
・ユルスナールの靴(須賀敦子)
・十二人の怒れる男(レジナルド・ローズ)
・12人の浮かれる男(筒井康隆)
・オリンポスの果実(田中英光)
・屋根裏の二処女(吉屋信子・嶽本野ばら監修)
最後のウィネベーゴ(2007.11.29)
コニー・ウィリス/大森望・訳 河出書房新社
コニー・ウィリスの短篇集(中篇集?)。わたしにとっては初のコニー・ウィリスだったのだけれど、訳がいいのか文章そのもののテンポがいいのか、とても読みやすかった。場面転換のキレがすごくいい印象。
4編が収められているんだけれど、最初の3篇ですごく軽快でユーモラスな作品を書く作家なんだな、と思っていたのが最後の表題作でヤられた。うああああああ、聞いてないよ!(笑) こんな余韻の残る切ない話も書くなんて! この作品に関しては、奇想コレクションのこの表紙がめちゃめちゃ効いている。このコレクション自体表紙がいつもとてもステキなんだけれど(ふたりジャネットも表紙がよかったなあ)、ここまで内容と相乗効果のある表紙は素晴らしすぎ。
「女王様でも」はテーマがものすごく画期的(笑)。トレイシーの下の娘、パーディタが突然サイクリストになった。トレイシーの肉親たちはそのことを巡って大騒ぎ。上の娘、ヴァイオラもトレイシーの母親もこぞってパーディタを止められなかったトレイシーを避難し、母は一族会議を開いてパーディタを説得することを試みる。その場にはトレイシーの義母・カレンまで現れて…。
まず疑問に思うのは「サイクリスト」って何?ということ。テンポのいい会話の中に「シャント」「アムネロール」など聞き慣れない単語がポンポンと飛び出し、少しずつ単語の意味や話の内容が見えてくる。全貌が見えてくると読者は思わずにやり。女性なら身に染みて苦笑がもれること必須。サイクリストって上手いネーミングだなあ。
途中でリジー・ボーデンの話がちらっとでてきて、これは両親を斧で殺害した実在の少女なんだけれど、こういうのってやっぱり知識があると深く愉しめるなあと思った。わたしはこういうの、まだまだ全然知らない。ちなみに彼女の話は『ブラック・ヴィーナス』で知った。
「タイムアウト」は”時間は空間とおなじく量子的なものであり、現在子と名付けたピースに分割できる。これを揺さぶることでタイムトラベルを実現できる”という一人の学者の持論を証明するために招集された学者たちと、助手として雇われた普通の主婦のドタバタラブコメディ。雨降って地固まる、を地でいくような物語は読んでいてひたすらに楽しい。
「スパイス・ポグロム」は異星人と人類が宇宙開発計画(スペース・プログラム)の譲渡について協議をしている世界の物語。異星人とはまだ完璧なコミュニケーションができる段階に達しておらず、地球からの移民が一時的に滞在するための小さな人工衛星(?)・ソニーに大勢が滞在中。さらにそこに異星人見たさの大勢の観光客などが訪れて、ソニーの人口はすでに飽和状態を越えている。
主人公のクリスは交渉の関係者である婚約者・スチュアートの要請で異星人の一人に自分の住まいの一室を貸しており、彼の希望には何でも応えるように言われているが、階段の一段一段まで住居として人に貸しているような人口過密なアパート(?)で、バカげた買い物を繰り返し部屋の足の踏み場もなくすような異星人に対してすでに我慢の限界に達している。さらにある日、彼が見知らぬ男・ハッチンズを連れてきて、アパートに泊めると言い出した…。
出てくる街や道具などがやたらと日本っぽくて(住んでるところの名前もソニーだし!)、なんだかそれだけで笑える。繰り広げられるのはこれまたドタバタラブコメディ。身勝手な婚約者、言葉が通じない異星人、わけのわからない居候、イライラさせる子ども達。完璧なエンタメ。
そしてそして、「最後のウィネベーゴ」。
これに関しては前知識なしでいってほしい。これだけミステリの要素も含まれていて、謎が少しずつ解けていくのにつれて胸がぎゅーーーっと締めつけられる。どんな世界なのか。主人公はどんな過去を抱えているのか。どんな結末を向かえるのか。
こう書くだけでなんだか未読の人にはもったいない気がする(笑)。
とにかく読了後はうわーーーん、と叫んでわなわなしたくなること必至(笑)。
犬好きは特に注意。
ものすごく心に残る一作でした。
コニー・ウィリス、他の作品もガシガシ読まなくちゃ!!!
(収録作:「女王様でも」、「タイムアウト」、「スパイス・ホグロム」、「最後のウィネベーゴ」)
猫鳴り(2007.11.29)
沼田まほかる 双葉社
沼田まほかるの3作目はミステリ&サスペンス色を払拭した”猫小説”。けれど彼女のどことなく不安定な、暗い、不穏な雰囲気は残っている。ある一匹の猫の一生とその猫にまつわる人間達を描いたこの作品は、まるで猫版ティモレオンみたいだった。いや読後感はまったく違いましたが。
40歳の主婦・信枝は最近、初めての子供を生まれる前に失った。52歳の夫・籐冶との間で赤ん坊ができたことによって変わった生活習慣は、赤ん坊を失った今も元に戻すことが出来ず、ふたりはただ呆然としている。彼女のお腹の中には赤ん坊の代わりに「空っぽ」が入っていて、それがだんだん育っていくような気がする。秘密をもっていた彼女には、それは天罰のように思える。ある日彼女は家の近くで傷を負った子猫を見つける。泣き続けるその泣き声が家の中に聞こえてくる。彼女はその猫を捨てに行くが…。
物語は三部に分かれているのだけれど、第二部、第三部と読み進めるに従い思っても見なかった方向に転回していく。ちょっとこの進み方は予想外。なんとなく呆然としながら、けれど第三部でいきなり惹き込まれてしまい、なんだかだまされた気分になりながらつい号泣してしまいそうになる。反則すれすれの、あざとくなるギリギリに留まったその作者の抑制がすごいなあと思う。
どんどん読ませてしまうその筆力はすごい。
第一部の謎がそのまんま放っておかれていたりして、ちょっとまとまりきれていない感じもあるのだけれど、作品を出すにしたがって着実に力をつけていることが感じられる。ちょっと気圧される。そのうちすごい傑作を出しそうな予感がする。
沼田まほかる、まだまだ注目だわー。
淑やかな悪夢 英米女流怪談集(2007.11.30)
シンシア・アスキス他/倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲・訳 創元推理文庫
古今東西の英米女流作家が手がけた怪奇短篇を集めたアンソロジー。一篇一篇が短いのでけっこうサクサク読める。一応怪談なんだけれどそんなに怖いものはない。ただ、一作だけ、このアンソロジーの「目玉」であるシャーロット・バーキンス・ギルマンの「黄色い壁紙」だけはめちゃめちゃ怖い!!!!!!
少しずつ少しずつ精神が壊れていく恐怖。
条件はいいはずなのに借り手がつかず格安になっていた家。
狂ったパターンの吐き気を催すような黄色い壁紙の部屋。
部屋の下の方にずーーーっと続く何かでこすれたような線。
主人公の手記のような形で描かれたこの作品は、それだけに主人公の壊れていくさまが手に取るようにわかる。
15分くらいで読めちゃうような短篇なのにこの凝縮された恐怖はすごいんじゃないだろうか。
原稿を初めに受け取った編集長にして「自分が感じた惨めさをほかの人物に味わわせることなどとうてい容認できるものではない」と言わしめ雑誌掲載を拒否され、発表されると「こんな小説は書かれるべきではなかった。読んだ者が誰であれ、正気を失わせること疑いなしだ」と抗議されるという強烈なエピソードがすべてを物語る。
これはけっこう必読。
その他の作品ではホーンテッドマンションみたいな「名誉の幽霊」と、まるで本格ミステリみたいな形の「荒地道の事件」が印象に残ったかなあ。
でもあまりに「黄色い壁紙」が飛び抜けているので、ちょっと他の短篇は霞んでしまったかも…。
(収録作:「追われる女」シンシア・アスキス、「空き地」メアリ・E・ウィルキンズ−フリーマン、
「告解室にて」アメリア・B・エドワーズ、「黄色い壁紙」シャーロット・バーキンズ・ギルマン、
「名誉の幽霊」パメラ・ハンスフォード・ジョンソン、「証拠の性質」メイ・シンクレア、
「蛇岩」ディルク夫人、「冷たい包容」メアリ・E・ブラッドン、「荒地道の事件」E&H・ヘロン、
「故障」マージョリー・ボウエン)
進化の時計(2007.12.7)
伊井直行 講談社
母親から実家を手放さなくてはいけないと相談され、それを機会に仕事を辞めて一度東京から故郷に戻ることを決めた「ぼく」。母は同時に詐欺にあって父親の遺産をだまし取られたことを「ぼく」に話し、「ぼく」は探偵まがいの活動を始めることになる。その最中にひょんなことから、一匹の知能の高いサルを家に連れ帰ることになるが、それが不思議な事件の始まりだった…。
まるっきり「不思議」っぽくない、けれどもなんとも言えない懐かしい雰囲気のハードボイルドエンターテイメント。伊井直行ってこんな作品も書くんだ、とビックリ。ハルキの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」と妙に雰囲気が似ていて、やっぱり伊井直行って村上チルドレンなのかもなあ、と思う。
サルを巡って繰り広げられる争奪戦は誰が敵で誰が味方なのか、誰が本当のことを言っていて誰が嘘をついているのか、まるきり先が読めないままに続いていく。砦はコロニーで、ボルネオオマキザルはシンオマキザルで、「進」は「進之介」で、呼び名が違えば見方はくるくると変わってくる。
気がつくと巻き込まれ、そして我に返ると渦の中心から放り出されている。少なくとも「ぼく」に事件を俯瞰することはけしてできない。
深いことを考えずに純粋に楽しませていただきました♪
しかし内科医院の息子の登場には少し笑ったわ。