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ホワイトアウト(2003.1.30)
真保裕一 新潮社
おもしろかった!
以前に読んだ『奇跡の人』や『発火点』と同じ作者だとは思えないほど。とにかく
スピード感があるし、スリリングで先の読めない展開はまさに和製『ダイ・ハード』。
おいおい、それは死んでるだろう!と突っ込みたくなるシーンもあるにはあるけれど
(ダムからの脱出シーンですな!)、それもま、いいか、と思わせる力強さに溢れて
いる。映画を観てもういいかな、と思っていたんだけれど、やっぱり読んでよかった。
映画と本ではやっぱり楽しみ方が違うのよね!
ストーリーは映画とほぼ同じ。けれど、やはり本の良さはその内面描写だ。映画
の富樫はまさにブルース・ウィルスのように、しぶとく、頭を使って、多勢に無勢の
逆境をものともせずにピンチを脱し、敵を倒していく。翻って小説の富樫は、いつも
自分の弱さをかみしめ、勇気ではなく後悔から立ち止まりたくなる自分をなんとか
奮い立たせ、常に恐怖をなだめながら行動を起こす。
展開を知っていても楽しめたけれど、ああー、やっぱり映画より先にこっちを読ん
でおけばよかったなあ…。
それにしても、これってミステリなんだろうか!? 新潮ミステリー倶楽部、って
書いてあるのでミステリなんだろうけれど。
亡国のイージス(2003.2.10)
福井晴敏 講談社
久しぶりに本を読んで泣いてしまった。
海上自衛隊の一隻のイージス艦を舞台にした海洋冒険小説。かわぐちかいじの
マンガ『沈黙の艦隊』をイメージさせるストーリーなのだけれど、『沈黙…』の海江田
艦長が冷静沈着、目的をしっかりと持って迷うことなく進んでいくのに対し、こちらの
艦長・宮津は最後まで悩み苦しみ、あがき続ける。艦長だけでなく、先任伍長・千
石や如月、竹中や風間などのイージス艦<いそかぜ>クルーと、<いそかぜ>を
取り巻く人間達がみな、キャラが立っているというか、背景までしっかりと書き込ま
れていて、本当に重厚な物語を紡ぎ上げている。
ストーリーもとにかく二転、三転してまったく先が読めない。後半になるともうとに
かくこの壮大に広げられた風呂敷を果たしてきちんと畳むことが出来るのかなんだ
か読みながら心配になってしまったほど(笑)。それがまあ、なんときっちりと畳み終
えて爽快なラストにつながることか。
どうやらこの著者の作品はけっこう繋がりがあるらしい。今度はデビュー作から追
いかけてみようか…という気にさせられた。
終戦のローレライ(2003.5.9)
福井晴敏 講談社
確かに読み応えはある。なんたって長いし!!(笑)
第二次世界大戦も終盤の夏。
敗戦したドイツから接収された戦利潜水艦<伊507>は、ナチスドイツが開発し
た特殊兵器「ローレライ」の回収を命じられる。回収したローレライの正体は実に意
外なものだった。
艦長の絹見は司令官・浅倉の命令に何かひっかかるものを感じながらも、回収し
たローレライを届けるため太平洋の小島へ向かう。南の激戦地で地獄をくぐり抜け、
人間の極限状態を体験した浅倉は、ローレライを利用した壮大な計画を企てていた。
読みながらどうしても、『亡国のイージス』を連想してしまう。登場人物がみんなか
ぶってきちゃうのだ。後半の海戦は『沈黙の艦隊』だし…。確かにそれなりにおもし
ろいし、水準は高いのだけれど、『亡国のイージス』の後だけにここまで同じような
内容になると「うーん…」という感じ。
あちこちの書評を覗いても絶賛の嵐なのだけれど、個人的にはこれなら『亡国の
イージス』だけでいいなー、という感じ。頑張って読み切った、という満足感は残る
けれど(苦笑)。