classic


著者名 タイトル 出版社
村山由佳 星々の舟 文藝春秋
丸谷才一 輝く日の宮 講談社
山崎豊子 白い巨塔(上・下) 新潮社
オースティン 自負と偏見(上・下) 新潮文庫
高村薫 晴子情歌(上・下) 新潮社
島本理生 リトル・バイ・リトル 講談社
赤江爆 罪喰い 講談社
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罪喰い(1999.7.7)
赤江爆   講談社


 尊敬する友人が大好きだという赤江に挑戦。耽美小説、ということなのだけれど、
「耽美」ってよくわからない。でも、おもしろかった!

 表題作の「罪喰い」、「花夜叉殺し」「ライオンの中庭」「赤姫」「サーカスの花鎮
(はなしずめ)」の5編が収録されているんだけれど、とくに気に入ったのは「罪喰
い」と「ライオンの中庭」。すべてに共通しているのは、登場人物の心の葛藤をす
ごく細かく表しているということ。別に描写が細かいというわけではないのだけれ
ど、心理的な行動が多い、ということだろうか。

 「罪喰い」は京都に住む精神病医・水野がふと訪れた奈良・新薬師寺でその寺
の有名な塑像で国宝でもある「伐折羅(ばさら)大将」にそっくりな木像を手にした
青年・大江晴彦に出会ったことから奇妙な出来事に巻き込まれる話。その木像
の背には「丁 都美波美黒人(罪喰み黒人)」という文字が書かれていた。二年
後、水野は罪喰いという習慣について調べているという建築家・秋村黒人に出会
い、大江の持っていた仏像との関連を感じる…。
 ストーリーが二転三転して、ついつい引き込まれてしまう。

 その他の短編も、確かにみんな妖しい雰囲気。これが耽美ということかー。
 京都につい憧れてしまう一冊だった。



リトル・バイ・リトル(2003.3.1)
島本理生   講談社


 2002年下半期芥川賞候補作。現役高校生の作ということで話題になり、例に
漏れず興味を持って手に取った。
 読んだ感想は「可もなく不可もなく」。高校を出たばかりで、母親と、父親の違う
妹との3人暮らしの主人公・ふみが送る日常を描いているんだけれど、さらさらっ
と読めて、さらさらっと終わってしまった感じ。彼女に特に共感も反感も感じないの
は、わたしがすでに高校生の頃の感性を失ってしまったからなのか…!?



晴子情歌(上・下)(2003.4.28)
高村薫   新潮社


 高村薫初の純文学作品は、重い。めちゃくちゃに重い。
 もともと高村作品は重厚であるのに、ミステリでなくなってしまったらホントに床
が抜けそうに重いものになってしまった。
 主人公、福澤彰之は遠洋漁業の船に乗る漁師。彼は母・晴子から長い長い手
紙を数十回に渡って受け取り、物語はこの手紙と彰之の行動とを交互に織り交ぜ
ながら進む。昭和の初め、15歳の晴子が送る人生と、全共闘時代に学生生活を
送った彰之の人生とが、複雑に重なり合いながら展開していく様はまさに「純文学」
の王道…。
 それにしても、わたしには晴子の気持はなんだかよくわからなかった。彼女にとっ
て彰之はどういう存在なのかもよくわからない…。娘・美奈子に対する思いもよく
わからない…。
 本当に大河小説のように圧巻なのだけれど、いまひとつ最後まで物語にのめり
込むことができないままに読了してしまった。

 巷では絶賛の嵐なんですが…。わたしの読む「目」が足らない、ということかなあ。



自負と偏見(上・下)(2003.6.16)
オースティン/中野好夫・訳   新潮文庫


 どうやら映画(ドラマ?)が有名な作品らしいのだけれど、映像作品の方は未見。
内容自体も翻訳もかなり古いのだけれど、読みづらさはなくあっという間に読めて
しまった。

 ジェイン・エリザベス・メリー・キティ・リディアの5人姉妹のいるベネット家の近所
にある日、若く独身で金持ちのミスタ・ビングリーが越してくる。姉妹の母親は娘
の誰かが彼と結婚してくれないものかと躍起になるが、父親は静観。姉妹はやが
て舞踏会でビングリーと対面するが、彼の親友だというミスタ・ダーシーは非常に
高慢で無愛想であり、エリザベスなどは一遍で反感を持った。
 やがて好青年であるビングリーと、心優しい長女ジェインは恋に落ちるが、二人
の恋は身分違いであるという理由で彼の姉妹にとっては歓迎できないものだった…。

 主人公・エリザベスが魅力的。対照的な長女・ジェインや好青年だが押しの弱い
ビングリー、無口で偏屈だけれども実は誠実なダーシーなど、それぞれいい味を
出しているのだけれど、何と言ってもストーリーをはちゃめちゃにするおしゃべりで
無教養で考えの浅い姉妹の母親ミセスベネットや、限定相続の関係で息子のい
ないベネット家の遺産相続人である牧師のミスタ・コリンズなどのキャラがかなり
強烈。なかなかどうしてのエンターテイメント小説だ。



白い巨塔(上・下)山崎豊子全作品 1957-1985 第6巻(2003.10.7)
山崎豊子   新潮社


 今回ドラマ化された名作を今さらながら。

 国立浪速大学の助教授・財前は、母一人子一人の貧しい暮らしから産婦人科医
で財力のある財前又一の娘婿となることで力を増してきた優秀な外科医。目前に
なった教授の地位に意欲を燃やしているが、現教授である東はなにかと言動が派
手でともすれば自分を脅かしそうな彼に密かに嫉妬と反感を感じている。東が自分
の退官後に財前を教授に据えるつもりがないことを知り、財前は教授の地位を獲
得するために躍起になり始める…。

 と、上巻(白い巨塔正編)の前半は熾烈な教授選がメイン。そこから後半は慢心
した財前が招いた医療過誤を巡る裁判へと話が進んでゆき、下巻(続白い巨塔)
になるとさらにその裁判の控訴審が中心に。とにかく息つく暇もなく続きが読みたく
なるリーダビリティは一級のエンターテインメント。

 実は読了前は、財前はニヒルで冷酷で頭の切れる男なんだろう、と思っていたの
だけれど、読んでみるとどうしてどうして、この人結構ウカツな人なのね…。まあ、あ
まり同情できる人ではないけれど。
 対する内科助教授で財前と同期の里見脩一は、曲がったことが大嫌いな正義漢。
無口で朴訥な人柄の中にこうと決めたらけして曲げない信念を持っている。教授選
は冷めた目で見ていた彼だが、医療裁判で財前と大学が保身のために患者を切り
捨てるような動きを見せると、自分の地位をなげうってでも患者の遺族を守ろうと奔
走する。

 こうやって書いてみて改めて思うけれど、この作品はホントに登場人物が多彩で
個性的。財前や里見、金さえあればなんでもできると思っている舅の又一、自分の
権力欲のために利用できるモノはなんでも利用しようとする医学部長の鵜飼、頭が
きれて歯に衣着せない財前の愛人ケイ子、保身的な父と体裁が大事な母に反発
し、里見に惹かれていく東の娘佐枝子…。まだまだたくさんいるけど挙げきれない。

 1960年代のかなり古い小説なのに、まったく時代を感じさせない。白い巨塔さも
ありなん、というような。今だって全然ありうるよ、こんな話!



輝く日の宮(2003.9.5)
丸谷才一   講談社


 源氏物語には失われた一帖が存在する…その題が「輝く日の宮」だ。物語はこ
のような自説を持つ国文学者杉安佐子の学者生活をラブストーリーを絡めながら
描いたもの。純粋なミステリーなのかと思って読んだらまったく違って意外だった。

 とにかく構成が凝っていて、すべての章が異なる趣向で書かれている。なぜだ
か分からないが旧仮名遣い。思わずいつの時代の話なのか混乱したけれどれっき
とした現代物。源氏物語を全く知らなくても楽しめるけれど、読んでいるとなおおも
しろい。
 ただ、技巧に凝りすぎて取っつきにくいかも…。慣れるとなんともないんだけれど。

 ストーリー自体はともかくとして、小説はここまで遊べる、というのを見せつけられ
た感じ。次から次と提示される凝ったテクニックは一冊にするのがもったいないほ
どだ。小説に入り込まずにその書き方を楽しむ、というアクロバティックな楽しみ方
ができる本、というのはちょっとお目にかかれないんじゃないだろうか。それが小説
としていいことか悪いことかはちょっと判断できないんだけれど…。



星々の舟(2003.10.15)
村山由佳   文藝春秋


 義母の連れ子で血の繋がらない妹だと信じた沙恵を愛してしまった暁は、家を飛
び出すしか方法がなかった。遠い札幌で新たな生活を築いても、彼は妹を諦めき
ることができなかった。
 激しく愛し合い、何もかも失った兄と姉を見て育った末っ子の美希は、ひとりの人
と向き合うのを恐れ、他人の男ばかりを愛するようになった。
 暁とは20歳近く年の離れた長兄・貢は家庭に帰るのがいつしか苦痛となり、あれ
ほど嫌った父と同じように若い女を抱くようになった自分を持てあましていた。

 ある家族のひとりひとりにスポットを当てた連作集。それなりにおもしろい。おもし
ろいんだけど…。なんだかどれもがさらっとしすぎていて物足りない。特に最後の
父親の話は取ってつけたというか、ただ歴史の本を写したような印象を受けてしまっ
た。今新聞連載で読んでいる柳美里の小説と内容がダブるせいかなあ…。そっち
の小説が好きなわけではないんだけれど、やっぱり柳美里の方が書いてることが
鬼気迫る感じなので。

 貢の話もなんとなーく他の作家の小説で読んだような感じ。
 そして貢の娘の話はかなり唐突なような…。

 読んでいるうちに、テーマがどんどんずらされていくようなのだ。それも狙ってず
らしているというよりは(本人は狙っているのかもしれないんだけれど)柱が曲がっ
ていてどんどんずれていっているような。

 ちょっと辛口になってしまったけれど、悪い本じゃないんだけどな…。



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