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著者名 タイトル 出版社 貫井徳郎 慟哭 新潮社 伊坂幸太郎 ラッシュライフ 新潮社 殊能将之 ハサミ男 講談社文庫 宇江佐真理 幻の声 文春文庫 伊坂幸太郎 重力ピエロ 新潮社 伊坂幸太郎 オーデュボンの祈り 新潮社 歌野晶午 葉桜の季節に君を想うということ 文藝春秋 都筑道夫 七十五羽の烏 光文社文庫 雫井脩介 火の粉 幻冬舎 東野圭吾 白夜行 集英社 北村薫 街の灯 文藝春秋 光原百合 十八の夏 双葉社 横山秀夫 半落ち 講談社 真保裕一 誘拐の果実 集英社 真保裕一 奇跡の人 角川書店 真保裕一 発火点 講談社
発火点(2002.12.9)
真保裕一 講談社
うーん、はっきり言っちゃうとあんまり好みではなかった。
前半がずっと主人公の言い訳がましさにつきあわされているようで、気が滅入る。
半分も超えた辺りでようやく物語が動き出し、そこからはどんどん話が進み、主人
公もやっとちょっとオトナになってこちらをホッとさせてくれるのだけど(笑)、最後ま
で読んでも事件の動機がちょっとわかりづらいというか、説得力に欠ける気がする。
しかし、最後の最後! ええっ、どっちよ!?と叫び出したくなるのだー。個人的
には後の方だと思うんだけど、そうだよね、誰かそうだと言って。一応ミステリなの
で何を言ってもネタバレっぽくなりそうなのがつらいところ(苦笑)。
奇跡の人(2002.12.20)
真保裕一 角川書店
(書いてみたらものすごく辛辣になってしまった。真保ファンの方、いらっしゃいまし
たらすみません。)
ますます真保裕一苦手意識が強くなってしまった…。
これ、一体なんなんだろう?
アイデアは秀逸だし、前半はかなり面白い。主人公の相馬克己は、自動車事故
でまず助からないだろうという状態から奇跡の回復を遂げるが、その際に全ての
記憶を失い、新生児のようにまっさらな状態に戻ってしまう。そこから彼は母親の
介護で8年の後にようやく社会生活をなんとか営める程度まで回復(というよりは
成長)し、その母の死後、周囲の努力もあり、職を得てひとり暮らしを始める。
しかし彼は事故以前の相馬克己をどうしても知りたいという衝動から逃れること
ができず、住民票にあった以前自分が住んでいたという場所に行ってみる。しか
しそこはまったくの嘘の住所であった。何故母はそんな住所を登録していたのか?
克己の疑惑はどんどん深まってゆく…。
…って、書いていても面白そうだよなあ。
それがどんどん調子が狂っていくのは、やぱり上京してから。『発火点』を読んだ
ときにも思ったんだけれど、この主人公はどうしてこうも無責任で自分本位なんだ?
読んでいて全然感情移入ができない。とにかくなんでも失敗は責任転嫁し、自分
を正当化し、しかも「それがただの言い逃れなのはわかっている」みたいな言葉で
さらに逃げ道を作ることを忘れない。この作品のポイントのひとつは事故前の相馬
克己と事故後の相馬克己の人格的な違いだと思うんだけれど、事故後の克己は
そんなに事故前の克己よりもご立派な人間なんだろうか、という、いわばその基本
をひっくりかえしそうな疑問が頭から離れない。結局僕は(事故前の)相馬克己と
同じ人物でしかないんだ、という(事故後の)克己の苦悩すらが、(事故前の克己へ
の)責任転嫁にしか見えない。
自分の過去を調べて克己は東京に行き、過去の自分とつき合っていた聡子の存
在を知るんだけれど、彼女に対する執拗さはこっちが慄然とするほど怖い(笑)。勤め
始めたばかりで本当に彼によくしてくれていた職場を平然と裏切り、無断(厳密には
連絡は入れてるけれど)欠勤を重ねてまったく反省しないあたりは、『発火点』の主
人公にそっくり。
公園で警察に捕まるシーンでは、多分普通は警察の権力を笠に着た行動に怒り
を感じ、主人公はいかにして警察から逃れられるのか、に読者はスリルを感じるも
のだろうけれど、わたしは彼が捕まってくれてホッとしたくらいだ(笑)。
そして、さらに重要人物である聡子。彼女の最後の決意もさっぱりわからない。
だって相馬克己って、自分のことしか全く考えない、ただのストーカー男だよ…(た
め息)。そんな男に全人生捧げちゃうつもりなんでしょうか。
最後の最後までまったく理解できない小説。とりあえず、『奪取』と『ホワイトアウト』
を読んでみるまで真保裕一については判断保留と…しよう。
誘拐の果実(2003.2.28)
真保裕一 集英社
ああああー、面白いんだけど、だけどなあ。
大病院の院長の孫娘が誘拐される。身代金は金ではなく、病院に匿われるよう
にして入院している大会社の社長の命。父と祖父は考えた挙げ句、社長が死んだ
と見せかける大芝居を打つことに。
そして時をほとんど同じくして別の場所で起こるもうひとつの誘拐事件。こちらの
被害者は19才の少年で、犯人は身代金を株で渡すことを要求。犯人が指定した
株の銘柄は、命を要求された社長の経営する会社のものだった。果たしてふたつ
の事件の繋がりは? そして犯行の本当の狙いとは…。
…と、まさにこれこそ本格ミステリ!?な、先の読めない展開にハラハラドキドキ
ワクワクしながら読み進んだんだけど、最後はなんとなーく、腑に落ちない、妙に
収まりの悪い気持になった一冊。
ミステリだからあんまりネタバレもできないんだけれど、なんていうか、とにかく
犯人達の動機がどうにも納得いかない。いや、動機はいいとして、行動がよくわ
からない。自分たちの目的が達成されるまでの計算高さ、周到さ、態度など、ど
れをとっても確信犯でしかあり得ないのに、事件後みせるいきなりのしおらしさ。
どちらの誘拐もアイディアが秀逸なだけに、なんだか無理矢理ハートウォーミン
グに持っていこうとしたような強引さがこのなんとも妙な後味の原因かなあ。
半落ち(2003.3.2)
横山秀夫 講談社
2002年下半期直木賞候補作。
現役警察官がアルツハイマーの妻を扼殺し、自首してきた。彼は罪を全て認め
たものの、殺害から自首するまでの2日間の行動だけを完全に黙秘する「半落ち」
状態。この2日間を巡って、刑事・検事・新聞記者・弁護士・裁判官・刑務官の6人
がそれぞれ彼に迫るんだけれど、いつの間にか彼の澄み切った瞳の前に6人は
心境に変化を起こす。
いやー、渋い。
6人のそれぞれの立場からのものの見方が丁寧に描かれていて、それぞれの
視点から時系列に組み立てられる物語は手で触れそうな立体感を作り上げてい
る。本当に地味なんだけれど、地に足が着いていて、骨太な感じ。しかもラストは
ちょっとうるっときてしまう。無理矢理感動させようというあざとさがない。秀作。こ
ういうのを「いぶし銀」って言うのかなー。
横山秀夫、他の作品もぜひ読んでみたくなった。
十八の夏(2003.3.15)
光原百合 双葉社
「十八の夏」「ささやかな奇蹟」「兄貴の純情」「イノセント・デイズ」の4編からな
る、それぞれが花をモチーフとした短編集。朝顔、金木犀、ヘリオトロープ、夾竹桃
がそれぞれの花なんだけれど、どの短編もうまくその花の特徴とストーリーを絡ま
せていて、うまい。
どれも読後感がさわやかで、清々しい気分にさせてくれる。ただ、「ささやかな奇
蹟」と「兄貴の純情」は先が読めてしまったのが残念。それから、どうしても北村薫
との類似性が気になる…。『時計を忘れて森へいこう』ほどではなかったけれど。
街の灯(2003.3.27)
北村薫 文藝春秋
北村薫の新シリーズ。「円紫と私」シリーズ系のミステリだけれど、こちらの「わた
し」はもう少し謎解きに積極的かな。まだまだ序章、と言った感じで、これからどう
展開していくかが非常に楽しみなシリーズになりそう。
内容は「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」の3編から成り、昭和初期の士族出身
の上流階級のお嬢様、花村英子と彼女付きの運転手である別宮(べっく)みつ子・
通称ベッキーさんが、日常に潜む謎に挑む。時代のノスタルジックな雰囲気もまた
魅力的。銀座の服部時計店とか夜店とか。
どれもやはり北村薫らしく、繊細で緻密なのにさりげない。ベッキーさんがまた颯
爽としたハンサムガールで魅力的。ただ本作ではまだまだ彼女の魅力は本領を発
揮していないみたいだ。乞うご期待、という印象が強い。
それにしても、読んで思ったんだけれど、北村薫の主人公ってホントに凛として
いて、清楚というか、中性的というか、そういうイメージがある。女ってもっと汚い
ところあるんじゃないかなー。そういう意味ですごくおとぎ話チック。これって作者
が男性だからかな? キライじゃないんだけれど…(むしろ好きな方)。一度北村
薫の描くドロドロな恋愛小説、とか読んでみたいけれど、無理かしら(笑)。
白夜行(2003.4.13)
東野圭吾 集英社
やっぱり東野圭吾ってすごい。うまい。読み終わって思わず唸った。
大阪の住宅街で質屋の主人が殺される。殺害場所は子ども達の遊び場になっ
ていた建設途中の放置ビル。事件は迷宮入りとなる…。
数年後、一時事件の被疑者となり、ガス中毒死した女の一人娘は親戚の養女と
なり、その美しさで周囲のアイドルとなっている。被害者の同年齢の息子は、暗い
目の少年に成長する。事件を追い続ける刑事・笹垣は重大な事実を見落としてい
たことに気づくが…。
最後まで主人公達に感情移入することができなかった。けれどそれにも関わらず、
一気に読み切ってしまった。とにかくテンポがいいし、緻密だし、読ませる。そして
ラスト近く、初めて動機が明かされると、「そうだったのか!!」と膝を打つ。いやー
ミステリーの醍醐味、ここにあり、みたいな。
そして、読み終わってふと、気づく。最後まで主人公達の内面描写はまったくな
かったことに。動機だと思っていたのは、実はこれが動機ではないか…という周囲
の考えでしかないことに。結局、本当のところは本人達にしかわからないのだ。
わたしの読書の楽しみのひとつは、登場人物への感情移入だ。感情移入するこ
とによって、わたしはつかのま別の人間になることができる。非情な犯罪を犯す殺
人者に、正義をふりかざす偽善者に、緻密な理論で犯人を追いつめる推理者に。
ところが、この本はそうはさせない。そして、思い知らされる。わたしたちが普段、
周囲の人間を理解していると思っているのは結局は思い込みに過ぎないというこ
とを。
それでも、努力していくしかないんだよねえ。
これは傑作。
火の粉(2003.4.20)
雫井脩介 幻冬舎
帯より。
「お隣さん、本当にいい人ね」元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の
隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気
の利いた贈り物、老人介護の手伝い…武内は溢れんばかりの善意で梶間家の
人々の心を掴んでいく。「なんか、いい人すぎない?」
この帯をみたら、読みたくて読みたくて(笑)。そして嗚呼、はまってしまったの
だ幻冬舎の罠に(がっくり)。
武内は見事に梶間家の人間の心を掴んでいく。彼に初めから不気味なものを
感じていた嫁・雪見は梶間家から排除されていく。彼女には武内が犯人と疑わ
れた一家惨殺事件の被害者の兄夫婦が近づいてくる。梶間家が崩壊していくの
は偶然か、必然か。
こう描いていても面白いし、事実死刑判決を下すことに内心恐れを抱いていた
勲、義母の介護を巡り別居の義姉と静かに火花を散らしていた勲の妻・尋恵、
自分の育った環境にコンプレックスを感じながら日々育児に格闘する雪見など、
彼らがそれぞれに主人公となり得る魅力を持っている。それなのに、読了してな
んとも読後感がよくないのは、ラストの安易さもあるけれど(これがあんまり安易
すぎやしないか!?という感じ)、結局誰もが主人公としては物足りないせいだ。
3人ともに描かれ方が「おいしいとこどり」なのだ。物語の鍵を握る武内にいたっ
ては、結局どういう人間なのか皆目分からないし。
ただ、読みやすいし、読ませるし、ホラーチックな終盤の展開などは鳥肌が立
つほどだ。もっと誰か一人に焦点を絞り、深く掘り下げていれば、印象はもっと
違ってきたはずではないだろうか。そしてそうすればあのラストも自ずともっと
納得のいくものに変わることができたような気がする。「まあこうなっちゃうとあ
のラスト以外ありえないよね…」と諦めることもできない。
何というか、惜しかった作品。
七十五羽の烏(2003.5.26)
都筑道夫 光文社文庫
初都筑道夫作品。
自称サイキック・ディテクティヴ、物部太郎は、幽霊に伯父を殺されるかもしれな
い、という女・田原早苗の訪問を受ける。物部が依頼を受けるかどうかの返答を
しないうちに伯父・源次郎は住居である茨城県・緋縅(ひおどし)の旧家で下着一
枚の姿で殺される。緋縅には平将門の娘・滝夜叉姫の伝説があり、源次郎は殺
される前に滝夜叉姫を見たと漏らしていた。
果たして源次郎を殺したのは幽霊か人か。意志とは無関係に事件に巻き込ま
れる太郎の目前で第二の事件は起こる…。
なんだか久々に「推理小説」を読んだ。こういうのを本格というのね。ちなみに
わたしは事件解決の手がかりがすべて提示された時点ではさっぱり犯人はわか
らかなった…(ー_ー;)。
ストーリーはおもしろいけれど、わたしはこういう論理的に論理的に物事が進む
のはそんなに好きではないかも…。感情移入の余地がないのだ。理数系という
感じで(笑)。そのロジックの美しさに惹かれる人もたくさんいるだろう、ということ
は理解できるのだけれど。
まあこれは向き不向きの問題で、作品自体は佳作なんだろうと思う。思う、とい
うのはわたしの頭があんまりロジカルにできていないため(笑)、本当にはこの作
品の良さは理解できていないだろうと思われるため(^-^;)。
でも真相自体は意外でしかも納得できる。読んでいる間も楽しめた。タイトルの
付け方も上手いし、物語の中でこの本のタイトルを登場人物が話し合っていたり、
メタフィクションぽい味付けも効いている。推理小説好きな方はおもしろいんじゃ
ないかしらん。
葉桜の季節に君を想うということ(2003.5.27)
歌野晶午 文藝春秋
いやー参った。やられた。
こういう鮮やかなどんでん返しをすぱーんと決められると、なんかこう、爽快な
気分になる。
主人公である成瀬将虎はプラトニックな恋愛に憧れつつも刹那的な肉体関係
を繰り返すある日、偶然居合わせた駅で飛び込み自殺をしようとした麻宮さくら
と出会う。また、同じ頃、以前探偵事務所で働いていた経験があるのを見込まれ
て、出身高校の後輩にあたるキヨシからあるひき逃げ事件とその被害者がはまっ
ていた怪しげな商法の会社との関係を調べてほしいとの依頼を受ける。
その会社を調べるうちに、彼は衝撃的な事実を知ることになる…。
うーん、これ以上は書けません。
とにかくどんでん返しが凄いのよ!!(笑)
ええっ!?と驚いて、そうだったのか!と膝を打ち、そうなるともう一度読み返
してそのウマさにううーんと唸らされる。これはとりあえず、個人的には今年一番
の快作だわー。(*^-^*)
あちこちで評判のよかった本だったけれど、評判に偽りナシ、だ。
オーデュボンの祈り(2003.6.9)
伊坂幸太郎 新潮社
この頃ネットでなにかと話題の伊坂幸太郎に初挑戦。あちこちで評判がいい作
品なんだけれど…うーん、個人的には期待が強すぎたかな?という感じ。あちこ
ちツッコミどころ満載だし…。
誰からも忘れられた小さな島に偶然連れてこられた主人公・伊藤は、そこで物
を言う案山子・優午や人を殺すことを周りから認められている美しい青年・桜、
どこかイヌに似た男・日比野に太りすぎて動くことの出来ないウサギなど、一風
変わった島人達と知り合いになる。ところが翌日、優午が何者かに殺された。
優午は未来のことがわかる、島中から頼りにされていた案山子だったため、島
中に動揺が広がる。果たして優午を殺したのは一体誰なのか。
あちこちにはられた伏線は最後きれいに明かされるし、登場人物も魅力的、
なにより独創性のあるストーリーで確かに佳作。けれど読んでいて、どうしても
文章に乗りきれなかった。なんとなく、文章がぎこちないというか、こなれてい
ないというか、入り込みそうになるとつまづいて現実に引き戻される感じ。まあ
これがデビュー作なのでこれって仕方ないことなのかな??
それから、何度も出てくる島の「あっとうてきなリアリティの欠如感」というの
がうまく伝わらないのが致命的。そんなにリアリティに欠けているように思えな
いのよ…。確かに変わってるけど。
そして、ラスト。
好評なようですが、安易すぎなくないですか!?
いろいろ感じるところがあったのだけれど、文末、この作品が第5回新潮ミス
テリー倶楽部賞を受賞するにあたっての選評のところで、桐野夏生氏が評した
文章があまりにわたしの感ずるところと一緒で感動してしまった(笑)。
重力ピエロ(2003.7.20)
伊坂幸太郎 新潮社
伊坂作品2冊目。今回(2003年上半期)の直木賞候補作。前回読んだデビュ
ー作『オーデュボンの祈り』と比べると、確かにいろいろな面でこなれてきた感じ。
文章もだいぶ読みやすくなった。
主人公泉水と、外見がよく女の子に人気のある弟・春とは仲がよい兄弟。しか
し彼の家族は複雑だ。春は泉水と半分しか血のつながりがないのだ。
ある日街中の落書きを消すことを仕事にしている春から連絡が入る。「兄さん
の会社が放火されるかもしれない…」。果たして泉水の会社は放火にあい、二
人は現場に残された落書きと放火との関係との謎を調べることになる。おもしろ
半分で謎解きを始めた泉水は、やがて否応なく事件に巻き込まれてゆく…。
伏線が上手なのは前回通り。泉水と春の兄弟関係がなかなかステキ。そして
さらに彼らの父親が素晴らしすぎ。すでに亡き彼らの母もいい。
けれど、『オーデュボン…』でも感じたんだけれど、それに対して敵役(?)が魅
力ないのよね…。葛城の正体は出てきた瞬間に見当がつくんだけれど、それが
あまりにもステレオタイプというか、なんというか。
ラストもやっぱり、安易なんだよね…。
この辺りが伊坂さんの今後の課題でしょうか(笑)。
でも、楽しめる作品であることは間違いなし。
髪結い伊三次捕物余話 幻の声(2003.7.20)
宇江佐真理 文春文庫
オール讀物新人賞受賞の表題作を含む連作短編集。時代物かつミステリ、とい
うのは初めてだったけれど、おもしろかったー。
江戸の「廻り髪結い」伊三次は訳あって八丁堀の同心、不破の手下を副業とし
ている。伊三次と不破、そして伊三次の思い人で深川芸者の文吉が主要人物な
のだけれど、3人が3人ともとっても魅力的! 表題作の「幻の声」、「暁の雲」、
「赤い闇」、「備後表」、「星の降る夜」、どれもが派手な事件ではないのだけれど、
事件の裏に絡む人情が読ませるのだ。
そしてなんといっても伊三次と文吉、ふたりの恋の行方が気になるー!! ふた
りは果たして無事所帯を持つことができるのか!?(笑)
後を引く一冊。続きが読みたいよー!
ハサミ男(2003.7.25)
殊能将之 講談社文庫
ラストにすぱーんとひっくり返されるちゃぶ台系ミステリ(そんな系列ないって)。
なんと言ってもタイトルがウマイんだろうなあ、これって。すっかりやられた。
模倣犯に目をつけていた女子高生を先に殺され、しかもその死体の第一発見者
となってしまった連続殺人鬼「ハサミ男」が、真犯人を捜そうとするという変わった
タイプのミステリなんだけれど、このハサミ男の叙述がなんというか、味があってす
ごくいい感じ。わたしは基本的に殺人犯(しかも快楽殺人)に感情移入するなんて
ことはまずないんだけれど、この本はうっかりハサミ男が捕まりそうになるたびドキ
ドキしてしまった(笑)。
確かにツッコミどころがないわけではないけれど、かなり愉しめる。あっと驚きたい
人にはオススメ。
ラッシュライフ(2003.8.14)
伊坂幸太郎 新潮社
今までの伊坂作品では一番好みの作品。
誰よりも豊かに生きていると豪語する画商、ピッキングで生計を立てている窃
盗犯、お互いの配偶者を殺そうと計画している不倫カップル、「名探偵」であるカ
ルトの教祖を解体しようと持ちかけられる信者、そして就職面接40連敗中のリス
トラされた中年男。5人の人生が交差し、そこに「特別な日のための」展望所、外
国の宝くじ、コーヒースタンドの割引券、街をうろつく汚れた野良犬、コインロッカ
ーの中の拳銃、そしてバラバラになり、またくっつく死体、といったキーワードが
見事に絡み、最後に複雑なピースがすべてぴたりとはまった壮大な騙し絵が浮
かび上がってくる。
この人はホントに伏線を張るのがウマイ。結構話が複雑で、時間軸もまっすぐ
じゃないのに、それぞれの登場人物が個性的でエピソードや小道具が印象的な
せいでまったくわかりづらさがない。かなり計算して書いてるんだろうな…。最後
まで読み終わったときはなんというか、ホントに感心した。
ただ、悪く言えばそれだけ、ではあるんだけれど。
本当に上手いし、スッキリとキレイな話なんだけれど、そういう技術みたいなと
ころでは感動してもストーリー自体は特別感動するようなところはないんだよな…。
いや、それだけでも十分読む価値はあると思う作品なんだけれど。ただ、だから
こそつい、欲が出ちゃって…(苦笑)。次の作品に期待、かなあ。
慟哭(2003.10.26)
貫井徳郎 創元推理文庫
連続幼女誘拐事件を追う切れ者の捜査一課長・佐伯と亡くなった娘を諦める
ことがどうしてもできない松本。物語は二人の視点から交互に語られていく。事
件は行き詰まり、松本は新興宗教にのめりこんでゆく。二つの物語はやがて衝
撃のラストへ。
なんとなーくそうかな、そうかな、とは思っていたんだけれど、そうきましたか。
構成は緻密だし、一気に読めるリーダビリティもある。あるんだけれど。
わたしには松本の行動はどうしても納得できない。そりゃあないでしょう。意味
ないでしょう、それじゃあ。
言いたいことはいっぱいあるけれど何を書いてもネタバレだ。ううう。
でも、どうしてもどうしても、ネタバレはわかっていても言いたいことがひとつだ
け。
(以下ネタバレですので反転表示でお読みください。)
| 推理小説なのに誘拐犯が捕まらないなんて、それどころかどこのどいつか最 後までわからないなんて、そんなのアリか!!!!!! |