金田一コヲスケの冒険
7月前半の部
7月13日
『あのこと』から、少し時間が経過して、
ようやく、客観的に『あのこと』について考えられるようになったので。
失恋っていうのは、脱輪に似ている。
ずっと続くと無条件に信じていた道が、
あるとき急に無くなるその衝撃。
もちろん、ちゃんと気を配ってさえいたら、
かろうじて続いている道が そんなにしっかりしたものじゃないことも、
本当はそこから先に道なんか無いことも、
気づくことが 出来たはずなのに。
ただ、順調に走っているうちは、そんなことは微塵も考えず。
そう、それは本当に突然。
人は、脱輪して初めて、そんなこともあるのだと思い当たる。
初めは、何が起こったのかわからない。
ただの衝撃。
しばらくしてようやく、事の重大さに気づく。
そして、ただ途方にくれる。
手馴れているなら、一人で車を救い出し、また先に進むことが出来るかもしれない。
しかし、そんなことに慣れていない俺は、
ただ呆然とし、偶然傍にいた人たちに、車を救い出すのに無理やり協力してもらうしかなかった。
彼らの協力で、車は無事救い出された。
そしてまた、車は走り始めた。
見える部分では、車には傷が無いように思える。
見える部分では。
本当は、点検をして、修理すべきなのは分かっている。
しかし、車は先に進まなければならない。
そしてきっと、目に見える故障が出るまで、修理に出されることは無いのだろう。
そのときにはもう、手遅れだったとしても。
車はこれからも進み続けるだろう。
脱輪のショックは当分後に引くだろうが。
運転は、慎重を通り越して、臆病になっている。
細い道も、少しの溝も、今は出来れば避けて通りたいから。
そう、それはまさに衝撃でした。
まさか、あんなことになろうとは。
全く想像もしていなかったのは、俺が楽天的だからか、それとも忙しすぎたからか。
原因なんて今更どうでもいいことなんだろう。
ただショックでした、としか言いようがない。
まさかあんなとこで脱輪するとは思わなかったです、はい。
7月10日
どうでもいいことだが、学生の頃、毎日のように遊んでた友達に、
話のネタがバイトのことばかりだ、と指摘されたことがある。
だって仕方ないじゃん、週6で朝から晩までバイトしてたら、
それ以外のどこから話題を見つけて来いと?
っと言うわけで、今日のネタも仕事がらみ。
『インターネットできない』
という客からの電話、いくつか確認したところ、
どうやらこちらで貸しているモデムの問題っぽい。
色々な形で上がってくるこの手の電話のうち、
一番扱いやすいのは、この『モデムの問題』である。
何しろ、交換すれば解消される。
もちろんそのうちの何件かは、
配線の問題だったり、
パソコンの問題だったり、
LANアダプターの問題だったり、
客自身の問題だったりするのだが。
ま、それでもこちらに問題があった場合に比べれば、格段に処理しやすい問題なのだ、通常は。
とりあえず、今回に関してはモデムの問題で間違いないと判断し、
客のところに交換にいくことに。
人手が足りないので、今日も行くのは当然俺自身。
書くのが面倒なので、
そこに行くまでの
すったもんだ(死語:具体的には、行ったことある家なのに道に迷ったとかそういうこと)
は飛ばして、
舞台は一気に客の家、パソコンの前。
モデムを確認すると、確かに繋がっているなら点くはずのランプが点いていない。
よし、交換だ、とモデムを手に取ったそのとき、
ポロッ
けーぶる外れる。
工具によってしっかりと締められた金具で止められている筈のケーブルが、回しもしないのにすんなりと。
金具確認。
全く止められた形跡なし。
しかも少しいじりすぎたせいで、最早使い物にならず。
どうやら、工事の際にかなり適当にされてたようだ。
持ってきた工具箱をあさるも、既に加工されたケーブルなど、積んでいるわけも無く。
仕方ないので、初めて一人でケーブルの加工をやることに。
カッターとニッパーとペンチとその他名も知らぬ工具を巧みに使い、
3つ金具を無駄にして加工終了。
我ながら惚れ惚れする腕前。
新しく加工したケーブルにつなぐと、
問題なくモデムが動作開始。
『それでは』と帰ろうとする俺に、奥さんが尋ねる。
『修理の料金はいくらですか?』
『結構です。工事の際の不手際ですし』
と言い残し、颯爽と去る俺。
でも言えない。
その不手際爆発の工事をしたのが、2ヶ月前の俺自身だとは。
7月9日
今日も楽しくデスクワーク。
昨日の、
システム車のデザインのマイナーチェンジ
についても誰にも気づかれることなく、
無事一日を終えようとしていた夕方のこと。
俺の隣に座っていた俺の上司が、客のところに向かうため、
その日初めてシステム車の鍵を取った!
それから5分後、
俺のデスクに直接電話が。
『もしもし、車、やったの君か?』
うちの会社の1年目の夏のボーナスって言うのは、
へこんだ車の修理代とほぼ同じくらいだそうです。
7月8日
通常、客のところに行く場合、いくつかの選択肢がある。
1.自分の車で行く。
自分の車なら、運転に慣れている上に、スーパーや銀行、病院など、どこの駐車場にも停められるので非常に楽。
しかし、基本的には、出来るだけ他の選択肢を選ぶように言われる。
俺の車のガソリンのことを心配してくれているのか、
会社の車を使うことで宣伝効果を期待しているのか、
Tシャツにジーンズというおよそ会社員らしくない俺の身分証代わりなのか、
しっかり保険に入っているからだろうか。
最後のが一番可能性が高い気がする。
2.営業用の車で行く。
営業用の車は、キイロのミゼットUである。
小さいので小回りがきく上、細い道にもすんなり入っていける。
難点は、狭いので、あまり荷物を積めないことと冷房があまり効かないことぐらい。
慣れれば、恥ずかしい、というのは無くなった。
ただ、この選択肢を選ぶには、営業の人が使ってないことが大前提となる。
3.うちの課専用の車で行く。
うちの課専用の車とは、軽のBOXタイプの車である。
『営業車』と区別するために、『システム車』と呼ばれている。
車自体はなかなか広く、必要なものは地図や工具から脚立まで大抵のものが積んである。
何より、うちの課専用、ということで、だれにも気兼ねせずにいつでも使用可能。
しかも新車。
FMが聞けない、ということを差し引いても、完璧と言える車なのだ。
そしてもちろん、この選択肢が一番推奨される。
が、完璧とも思われる『システム車』にも、唯一最大の欠点が。
実はこの『システム車』、あろうことかMT車なのだ。
ここで、オチが分かったと思ったあんたは甘い。
そりゃあもう、丸ごとバナナなんかの数十倍は甘い。
そう、俺がAT限定免許しか持ってない、
なんてオチで、この話が終わると思ったら大間違いである。
免許なら、持っている。
中国や新宿で買えるような偽物とはわけが違う。
まだ、とって一年も経っていないが、立派にMT車にも乗れる、
モノホンの免許証である。
なので、特に問題が無ければこの車に乗らなければならない。
で、残念ながら今日は何の問題も無かったので、『システム車』に乗って出動。
前置きが長くなったので、
要点だけ話そう。
要は『システム車』に乗って客のところに向かったわけですわ。
で、途中、近くに出来た馬鹿でかいジャスコ(駐車場3500台って、うちの市民全員呼ぶつもりか?)
へ行く道が渋滞してたので、
さくっと裏道に入ったわけです。
そりゃあもう、車がすれ違えないくらい細い裏道に。
でも、別にその道自体では何も無かったんすよ。
幸い、対向車も無く。
って言うか当たり前か、
どこの誰が好き好んで裏道逆走して込んでる大通りに向かうかっての。
で、まあ、裏道から、一本広い道路に出ようとしたんですわ。
ここで俺、ちょっと裏道なめてました。
その細さを計算に入れず、左折。
その時っ。
まるで車のドアが電柱によってへしゃげる時のような音がっ!!!
うちのシステム車は、電柱の形もトレースできる優秀な車です。