すかっ?本


五島 勉著『1999年以後―ヒトラーだけに見えた恐怖の未来図―』祥伝社,1988年

 いやー、とうとうこの年がやって来ましたね!1999年!
 泣いても笑っても、後、数ヶ月ってことで、皆さん無茶してますか!
 私のところは、クルマ予約しちゃいました*1!でも、そのクルマ日本発表が8月、発売が9月だから、7月に“恐怖の大魔王”に来られると、ヒジョーに困ります。あと、今年は夏に『SWT』が公開されるから、それも困る。まっ!『SWT』については、全米公開が5月だからアメリカまで行って見りゃ良いか…、勿論、支払いはローンで!
 季節の挨拶(?)はこのくらいにしておいて、今回の“すかっ?本”は、日本に“このこと”を大々的に広めた、このお方のお話をしたいと思います。

はじめに
 このお方の、あの方に対する記述が、如何に、いいかげんかは『トンデモ・ノストラダムス本の世界』(山本弘著,洋泉社,’98)、『トンデモ ノストラダムス解剖学』(志水一夫著,データ・ハウス,’98年)、『―改訂版―大予言の嘘』(同著,データ・ハウス,’97年)など、先行研究も多いので、そちらをお読みください。
 で、今回は、『1999年以後―ヒトラーだけに見えた恐怖の未来図―』という、1冊をピックアップいたしました。ピックアップした主な理由は、@五島氏はこの著書の前後から、1999年滅亡説を、後ろに修正する作業を行っている、Aその修正した年を、2039年と確定している、Bたまたま、私がヒトラー関係に少し詳しいの、3点です。
 では、目くるめく“五島ワールドへ”…。

「ソウル・ハネムーン」!?―Y氏登場―
 この駄文を書くにあったって、付箋(商品名“ポストイット”)を張りながら読み返してみた。その作業は、明らかに裏づけも取れておかしいところに赤い付箋、おかしいけれど私の資料からは裏づけが取れないところを緑の付箋、事実であるところは何も張らないと言うものである。そしたら…。ナンかもー、緑の付箋だらけ!山本氏が指摘しているように、五島さんはやり方があざとい!あざと過ぎる!一体、誰なんだ、「私(五島氏:筆者注)などにはわからない影の情報ルートを持つ、国際ジャーナリスト」の「Y氏」って?あの人は、O氏だもんな〜ぁ。

 そのY氏が、ソウルオリンピック開催を狙って、テロリスト国家が世界破滅計画を実行しようとしたが、米ソ(時代ですネ)が手を組んで、それを阻止したという“情報”を五島氏に持ってきたそうな。その名も「ソウル・ハネムーン」!?で、五島氏は、ご丁寧にも、「「ソウル・ハネムーン」を裏付ける新聞記事」として、朝日新聞’88年8月2日の「ニュージャージー(戦艦の名前:筆者注)仁川入港」と「米国防衛長官が訪ソ」をあげている。しかも、見出しには「一触即発だった第3次世界大戦」だって!そっか〜ぁ?まっ、コレなんか「我々庶民の知らないところで、世界は動いているんだよ」とか言われると反論も出来ないケド。
 全編こんな感じ。「整理された資料はない」とか、「記録の断片しか残ってない」とか言って、あとは、「予言研究の雑誌の編集者」(韮沢さん?)だの、「ナチス史にくわしい古い研究者」に取材しただけで、「「ニーベルンゲン復讐騎士団」(ナンだそれ?:筆者独り言)に、「2000年、大異変の下、影の超人達が(世界を:筆者注)支配する」とか、「2039年1月、人類は「人類以外のもの」になる」なんて予言をヒトラーがしたとか断言する。
 それも、五島氏自身が見てきたような描写でだ!例えば、「ヒトラーは‐(中略)‐激しく燃えるかがり火を背景に、いっそう声を低めてつづけた」とか、「ニーベルンゲン復讐騎士団」がヒトラーの予言を聞いて、「-(略)‐極ジャンプが起こって、人類が全滅するのか!?」と思ったことまで…。
 まっ!こう言うことは、資料的裏づけの出来ないことだし、私には“Y氏”のような、影の情報ルートを持つ友人も居ないので検証できません!

予言者ヒトラー!!
 そもそも、この本は@ヒトラーは予言者である、A彼は様々な予言―今井美樹、本田美奈子、後藤久美子の出現までも!?―をした、Bその中で2039年に人類が「人類以外のもの―“神人”と“ロボット生物”(ふぅ:筆者ため息)―」になると言うものが有ると、いうルポ(お話?)である。
 で、ヒトラーって予言者だったの?って疑問が沸くでしょ?
 まっ、かなりオカルト的人物*2ではあったらしいけど、何処まで本人が信じていたのかは疑問。

 五島氏がヒトラーを予言者として見なおそうとしたきっかけは、三島由紀夫にヒントをもらったからなそーナ(良いけど:筆者投げやり)。で、ヒトラーの『わが闘争』(角川文庫’73年)を、「急に気になって」読んだんだって!
 そしたら、下のように書いてあったんだって!一寸、長いけど“全部”引用すると(下線は筆者が引きました)、

 「日本の文化はもう日本の文化ではない。それは欧米の強力な科学技術の労作なのだ。もし欧米が滅びても日本の技術は上昇をつづけるが、すぐ欧米からの泉が涸れ、70年前に欧米によって破られた眠りに、日本はふたたび落ちていくだろう」(角川文庫『わが闘争』上巻、平野・将積氏訳、414ページより要約

 で、読み終わった後、15分ぐらい経って「衝撃が襲った」んだって!
 なぜか?
 「日本の大正13年」は、古い写真を見ると銀座でさえ和服姿の女性達が静かに歩いていたり、別の写真では女性の8割が和服にゾウリ、下駄履きであったり、人力車が走っていたり、家では火鉢があって、畳に座っていて、練馬の農家ではハッピ姿のオジサンが肥え桶担いで肥え撒いてたり、日本髪のおかみさんや、着物の子供、お米とつけもののご飯をちゃぶ台で食べてたのが写ってたんだって!
 これを見て、五島氏、その頃のドイツ人は、日本のイメージといったら、「ハラキリ・ゲイシャ」ぐらいしか思ってないのに、ヒトラーは「“もう”という過去形まで使って」現代の日本を予言したんだと確信してしまう。そして、その日本の繁栄もふたたび落ちて、ヒトラーの時代から70年前つまり幕末のレベルに成ると…。よっ!予言者ヒトラー(筆者錯乱)!

予言者!?ヒトラー
 では、種明かし。
 まず、一番問題なのは、五島氏は「わが闘争」上巻414ページを“要約”してしまっていること。五島氏が、(わざと?)省略したところには、こう書いてあります(コレも、長い引用になる)。

 日本は多くの人々がそう思っているように、自分の文化にヨーロッパの技術をつけ加えたのではなく、ヨーロッパの科学と技術が日本の特性によって装飾されたのだ。実際の生活の基礎は、たとえ、日本文化が―内面的な区別なのだから概観ではよけいにヨーロッパ人の目にはいってくるから―生活の色彩を限定しているにしても、もはや特に日本的な文化はないのであって、それはヨーロッパやアメリカのしたがってアーリア民族の強力な科学・技術的な労作である。
 ―(略)―
 今日以後、かりにヨーロッパとアメリカが滅亡したとして、すべてアーリア人の影響がそれ以上日本に及ぼされなくなったとしよう。その場合、短期間はなお今日の日本の科学と技術の上昇は続くことが出来るに違いない。しかしわずかな年月で、はやくも泉は水がかれてしまい、日本的特性は強まっていくだろうが、現在の文化は硬直し、70年前にアーリア文化の大波によって破られた眠りに再び落ちてゆくだろう。

 これの何処をどう要約すると、“五島氏要約文”みたいに成るの?
 ヒトラーは、(黄色人種である)日本が日清、日露の戦争に勝てて、一統国の仲間入りできたのも全て、ヨーロッパとアメリカ、ひいてはその源流たる“アーリア文明”のおかげだって言いたいんじゃないの?まっ、私と五島氏、どちらの解釈がヒトラーの真意に近いかは、皆さんの判断にゆだねます。また、お分かりのように“もう”なんて言う言葉は、“五島氏要約文”にしか書いてなく、自分の要約に酔っておられるのか?と思ってしまう。
 そして、「70年前に欧米によって破られた眠り」(五島要約)、「70年前にアーリア文化の大波によって破られた眠り」ってのは、『わが闘争』が書かれた1924年(大正13年)の70年前で、1854年の日米和親条約を中心とする出来事―1853年ペリー来航―を、ただの事実として述べただけで、なにも現代の日本が欧米の後ろ盾なくば、幕末レベルに成るなんて言う意味ではない!
 ココでも、五島氏は“あざとい”ことをしている。何故か、ほかの個所では西暦を用いて記述しているのに、このところだけ何故か「大正13年」と年号を用いている。これは、「1924−70=1854、なんだ!日米和親条約のことか」と読者に簡単に気づかれないようにする配慮だ、とするのは私の邪推?

 この他、予言者ヒトラーを証明する、五島氏の「わが闘争」からの引用、“要約(=曲訳?)”は、ことごとくこの調子。まるで、ノストラダムスの『諸世紀』(いろんな人に、『諸世紀』は誤りで、本当は『百篇詩集』と翻訳するのが正解と指摘*3されているのに、意固地にもまだ−1999年現在も−こだわっていらしゃる)を、“解読”しているようだ!
 加えて、何処からともなくやってきた、怪しげな「山荘予言」なんてのも有る!曰く「わたし(ヒトラー:筆者注)の男根のような兵器が地球を燃やす」だとか「カブト虫(ワーゲン・ビートル:筆者注)が動脈(高速道路:筆者注)の上を走る」とか、何処に書いてあるんじゃー!確かに、「フォルクスワーゲンこそ未来の車」とは言っているが、それは空冷エンジンの優秀さを称えているのであって、カタチ―“カブト虫”―について言っているのではない*4。教えてくれ!求む、きちんとした参考文献リスト!

 まっ、コレだけでも十分、ヒトラーが予言者だったかどうか判断できるが、とどめの1発。
 五島氏は、自分の説―“日の国(=日本)”のメシーの出現によって、破滅が回避できる―を、ヒトラーも予言していると主張している。しかし、当のヒトラー自身は「日本の相撲取りは世界でも最強に数えられる闘士であるが、彼らも野菜しか食べない*5」って言っている。そんなモンだよ、世界の“日の国”に対する認識なんて…。

“神人”になるために
 前に、2039年、人類が「人類以外のもの―“神人”と“ロボット生物”―」って書いたけど、コレは、支配する“神人”と、支配される“ロボット生物”って2極かが起こるってことなんだって!で、その“神人”のはしりが、今井美樹、本田美奈子、後藤久美子なんだって(ヤッター!:筆者イク)!その理由が、今井美樹、本田美奈子がヌイグルミが好きなことで、後藤久美子は“生意気”なんだからだって!じゃー、フィギア好きで、生意気な私なんか絶対“神人”だー(ふ・ふ・ふ、オメーラみんな支配してやるぅ〜っ:筆者妄想モード)!

 で、五島氏が“神人”になる可能性を秘めている人として挙げているのが…、
 「ペーパーテストとコネだけで出世してきた人、学校の成績だけいいような人」ではなく、「むしろ超能力開発の瞑想を夢中でやっているような人、修行を積んだ高僧、コンピュータ気狂いのような人、狂おしいようなスポーツマン、前に出てきた100個のぬいぐるみに埋もれている女性タレント」なんだって!
 安易に、あの人達(まだ活動中なので名前は出せません!)に結び付きそうな人間像だ!
 そして、あの人とも(周辺事態法の中心的国家の指導者、何たって特撮好きが昂じて…)…。
 だ・か・らぁ〜、ネッ、五島氏の言っていることはかなり眉唾だから、信用して「よっしゃー!来る2039年に“神人”となって世界を支配するために、今年の7月に、一発カマシちゃる!!」なんてことは思わないで(^o^)!“神人”候補の皆さん! 

おわりに
 五島勉氏は、ヒトラーの他にも、聖徳太子やら、果ては『イソップ物語』(エッ!)まで、予言者や予言書として、読み解く。それらは、みな、1999年から、ノストラダムスから如何に撤退するかの試行錯誤のように私には思える。新しいネタの発掘である。
 1999年を迎えた、今、五島氏の苦悩から、さて、何が生まれるやら…。


<参考文献>
山本弘著『トンデモ・ノストラダムス本の世界』洋泉社,’98
志水一夫著『トンデモ ノストラダムス解剖学』データ・ハウス,’98年
同著『―改訂版―大予言の嘘』データ・ハウス,’97年
ヒュート・トレヴァー=ローパー解説、吉田八岑監訳『ヒトラーのテーブルトーク 1941-1944』三交
アドルフ・ヒトラー著、平野一郎、将積茂訳『わが闘争』(角川文庫,’73年)

*1 当HP『すかっ!もん』参照
*2 ヒトラーの異常な言動は、梅毒の進行した症状と言われてもいる。
    ブライアン・H・ケイ著、二階堂黎人監修『最後の名探偵』原書房,’96年,42ページ。
*3 志水一夫著『トンデモ ノストラダムス解剖学』,17〜21ページ。
*4 ヒュート・トレヴァー=ローパー解説、『ヒトラーのテーブルトーク 1941-1944』下巻,208ページ。
*5 同上書,上巻,331ページ。


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