【すべり台】〜小説〜
【第一章:ちょっと遠い記憶】

「イチ♪ニィ♪サンガリア〜♪」

現在自分が置かれた状況を的確に把握しようと足し算をしながら 松山秩春(29歳)は公園を目指してただひたすら走り続けていた。額に汚泥のような汗を浮かべながら...。

松山が走らなければならなくなった理由。それは数時間前まで彼が参加していた“聖ビルバ院大学同窓会”会場で、ある男と再会した事からこの物語は始まるのである。

男の名前はキアヌス・ブレーブス(30歳)。松山がかつての二人の関係を「相棒以上愛人未満!!」と豪語した様に松山とキアヌスは異常に仲が良かった。

“聖ビルバ院大学”時代に二人は知り合った。当時流行っていた“ザ・ガマン”に出場する為に、松山が仲間を募集したところ、米領アムチトカ島からやって来た留学生のキアヌスがこれに応じたのである。

松山、キアヌス、以下3名で“ザ・ガマン”に挑戦するも、3回戦“底抜け脱糞ガマン対決”で我慢しきれずにゴールデンタイムのお茶の間に醜態を曝してリタイアした事も、今となっては良い想い出である。

その後も彼等は同じく当時流行っていた「焼鳥人間コンテスト」(※これは各自設計・製作した飛行装置にて激しい対空砲火の中を目的地点に向って飛行する...と言う単純なルールのコンテストである。/金剛石書房刊『恥丘の歩き方』より抜粋)に人間特攻弾道弾“ロケッティア”で出場し、見事優勝を勝ち取った。操縦した松山は多少被弾したが、幸い大事には至らず、全身の70%を機械化するだけで済んだ。

ちょっと遠い記憶を呼び起こしながら松山は走った。後ろからはキアヌスが米車“クライスラー・ナオン”で追跡してくる。

「絶対にキアヌスよりも先にハアハア...あそこへハアハア...辿り着いてみせるハアハア...。」

全身の70%が機械化されている松山は、荒い息を吐きながらそう呟いて、さらにスピードを上げた。

目標を的確にロックしながら、キアヌスはクールに“ナオン”のハンドルをさばきながらこう呟いた。

「松山メ...コノ裏切者メ...絶対ニ始末シテヤルゾナモシ...」

キアヌスはアクセルをさらに踏み込んだ。しかし単気筒エンジン“轟け一番”を搭載している“ナオン”の最高速度は時速11Kmである。加速するはずもないが、“追跡者”の自分にキアヌスは少し酔っていた。アクセルを踏み込むだけで彼の自尊心は満たされたのである。

かつては異常に深い絆で結ばれていた松山とキアヌス。何故、彼等は争わなければならなくなったのか...。

数時間前の同窓会会場で二人はこんな会話を交わした...。

〜続く〜
【出口】
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