ジンクス

 私は、今の会社に入って、....年目になるけれど、(;^_^A アセアセ…、自他ともに認めるジンクスがあった。「近くでいっしょに働く同僚男性に恵まれない」というジンクス。なぜか我が社でも指折りに変な人たちと、かかわってしまう運命にあった。

 まず、入社し始めて配属された部署は調査部。私の仕事は、主に、国内の統計の集計・管理です。そして、その外国部門を担当したのが同期の平田さん(仮名)。同期とはいえ8歳年上になる。平田さんは、新人研修の時から、女の子の間で、当時「とんねるずのみなさまのおかげです」で、タカさん演じる「ほもうだ ほもお」に似ているともっぱらの噂。また、平田さんの変さは、見た目だけにとどまらない。

 仕事面においては、絶対に自分の非を認めようとしない。これで何度となくぶつかった。また、食べ物に対する執着心が強く、落として消しゴムのカスがいっぱいついてしまった羊羹でさえ、堂々と顔色ひとつ変えずに食べてしまうから、見ている周りのほうが、なんだか気持ち悪くなってしまう。

 しかし、一番おかしいのは言葉づかい。相手を選ばず、とにかく丁寧すぎる。丁寧な言葉づかいは、一見、良いことのように思えるが、度がすぎると、相手をばかにしているように聞える。ある日、平田さんの隣で、いしょに仕事をしている女の子が、問い合わせの電話の応対中に必要な資料のファイルが見当たらないらしく、焦りながら必死に探していた。彼女のバタバタした態度から、急いでいることは誰もがわかる。そこで、彼女は、平田さんに「平田さん、平田さん、××のファイルがないんです。知りません?」と早口で、興奮気味に言った。すると平田さんは、一呼吸おいて彼女に向かい、劇団員のような抑揚で「そぉれは、大変でございます」と、のたまった。もちろん、彼女だけでなく、周りのギャラリーは、( ̄□ ̄;)!!( ̄□ ̄;)!!( ̄□ ̄;)!!( ̄□ ̄;)!!

 私のもう1人の同期男性の安部ちゃん(仮名)は、直接、仕事をいっしょにしたことはないけれど、大変な人物。いっしょに入社したときは、とても内気に見え、阿部ちゃんから話しかけてくることはまずなく、それどころか、阿部ちゃんの声すら知らないくらいでした。

 しかし、阿部ちゃんは、いつしか心の病にかかってしまったらしく、しばらく会社をお休みしていました。しかし、復帰してきた阿部ちゃんは、以前の阿部ちゃんではなくなっていた。まず、体も大きくなって(太ったともいうかも)態度も大きくなって、「ガハハハ」と笑うし、仕事中でも、そっくり返って寝ていることもシバシバ...。それから、我が社の独身の女の子たちに、かたっぱしから猛烈アタック!!私にも、仕事中に席まで来てデートの申し込みや、会社の親睦会の席で大勢の前で、「結婚してください。蕎麦屋になります」(私の実家は蕎麦屋だったりする...)なんて言う。おかげて未だに笑い話にされている。

 阿部ちゃんは、その後、会社を依願退職しました。そして、阿部ちゃんが辞めて、しばらくたってからのこと、残業をしていると、総務部に一本の電話がかかってきた。

「××警察ですが、今、ここに、安部さんが出頭してきていまして、御社から××万円を横領したかもしれないと、自首してきています。....」どうも、その金額から、彼に支払われた退職金ということが判明した。阿部ちゃんは、正当にいただいた退職金をなぜ横領したと思い込んでしまったのだろう...。

 そして、私は、調査部は4ヶ月在籍しただで、すでにコンピュータ室に異動になっていた。そこは、楽しくフレンドリーな上司と、私を含め2人の女性の3人体勢で平和な毎日を過ごしていました。平和ではありましたが、コンピュータの仕事には向いていないと、上司に異動の希望を伝えていましたが、全く異動の気配はないまま、はや...年が経っていました。そこに、新人で入ってきた、野山さん(仮名)が配属されてきました。いずれは、今の上司に変わり、コンピュータ室を管理することになるはずでした。野山さんは、某国立大を卒業し、パイロットを目指し4回チャレンジしたが、最終審査で落ち断念したらしい。今、思えば、野山さんをパイロットにしなかった試験官に表彰状を送りたい。大勢の人の命を危険から救う結果になったと思う。

 しかし、我が社では、その理系の頭脳を見込まれ、コンピュータ室に配属されたらしい。いざ仕事をしていくと、野山さんは、私以上にコンピュータのセンスのなさが伺える。この人もやはりどこか変。いつもオドオドしていて、しかも、いつも縦揺れに揺れている。また、立っている時は、その縦揺れに、横の揺れも加わる。とにかく、視界に入ってしまう周りの人は目障りでしかたがない。また、私が仕事中、背後になんとなく気配を感じ、振り向くと、野山さんが真後ろで私の仕事を覗き込み揺れている。ビックリするし、とても気持ちが悪い。

 また、どんなに頭が良いかもしれないが、常識というものを持ち合わせていないのにも困った。他社への依頼のFAXに、「急でゴメンネ!でも、明日までにおねがい。ガンバレ!!ガンバレ!!」と書いて送ってしまうのだ...。これには、上司も頭を抱えていた。

 冷静に野山さんを分析してみると、人との距離の置き方がわからないのかもしれないと思った。人は、自然に、相手との距離をはかり、親しければ、親しみ込めてなれなれしく、目上の方には敬意を表し、仕事上の付き合いならば、それなりの距離というものがある。しかし、野山さんはそれが計れない。状況判断ができないゆえ、野山さん本人に悪気はなくとも、彼の対応は相手にとっては絶妙に悪いタイミングで怒りの火に油を注ぐ結果となる。

 ある日、野山さんは、同じミスを3回しでかしてくれた。そのリカバリーは私の仕事である。3度目には、私も切れ、ちょっとフクレながら仕事をしていると、また背後に彼が立ち、「なぁなぁ...」と私を呼ぶ。ちなみに仕事中に、「なぁなぁ」と声をかけられたことは上司にもない。私が振り向くと、後ろに立ち縦揺れと横揺れのミックスで、「ごめんなぁ」と、のたまった。私はその足で上司の所に行き、もう一度、異動の希望を強く伝えた。

 タイミングよく、そのすぐ後の人事異動で、晴れて流通関係の部署に異動が決まった。(私が異動してまもなく、野山さんも病院に入ってしまい長期休暇となった)私には、もう一つのジンクスがある。「上司にはツイている」。新しい上司は、我が社でも1.2を争うキレもの。そして、私と同じ熱狂的な中日ファン。うまくいかないわけがない。それに、課は違うとはいえ、周りに同じ年代の仲の良い同僚がいっぱいいた。

 配属初日、ワクワクドキドキで席に着くと、上司はたまたまお休みだった。しかし、上司と私の席の間に、もう一つ席がある。ということは....。そこで勇気を持って総務課に聞いてみると、今日の午後に新人が配属されるという。その日のお昼に仲好しの同僚たちと食事に出かけ、新人の話になった。「どんな人だろうねぇ」と期待と不安の中、きり出すと、「そうだね...たまみの隣になるんだからね....今までのジンクスを考えるとね...恐いよね...また、(精神)病院いっちゃうのかな???」なんて話して笑ったが、私自身は気がきではなかった。「神様、贅沢はいいません。せめてごく普通の人でありますように...」そしてその午後、佐藤氏が配属されてきた。そ・そしてなんと、私の願が神に届いたらしく、佐藤氏はとっても普通の人だった。それどころか、なかなかおもしろい、イイヤツなのだ。(ただ、私をおちょくっているのか、ウソをマジメな顔で私に教えるのはやめてください。私は本当に信じて恥をかきました。)今でも、とっても仲好しです。
 
 こうして、私の
「近くでいっしょに働く同僚男性に恵まれない」というジンクスに終止符がうたれたわけです。そして、その二年後、組織改正のため、私たちの課はなくなってしまい、私は今の部署に配属されたわけです。そして、私の隣にいる課長は、我が社の中でも有名な変な人。こうしてもうひとつの「上司には着いている」というジンクスも、もろくも崩れ去ったのでした。