スロークと兄妹の共同生活が5日目になった。
魔女、リッチェルは相変わらず夜になるとどこかへ出かけてゆき、日が昇ると、仕事に出かけるスロークたちと入れ違いに帰ってくる。
一体なにをしているのか。
気にはなるが、教えてはくれない。
家主であるヤタツもミーフェもそれで納得しているので、スロークには何もいえない。
兄妹はリッチェルを信頼しているのだろう。
まぁ悪い奴ではないということはわかるのだが。
その日の最後の仕事である、牧場の手伝いからの帰り道。
スロークはぼんやりと思いをめぐらしながら、ふと隣を歩いていたはずのヤタツが遅れていることに気づいた。
「おい」
少年に呼びかける。
名前で呼ぶことはない。
覚えてないというわけでは決してないのだが。
彼の妹、ミーフェも、兄が遅れていることに気づいたようだ。
「おにーちゃーんッ!何やってんのー?」
「さっさと帰るぞ。そして食事だ」
ヤタツは道の脇の林の方を眺めていた。
が、こちらに気づくと一言あやまってすぐにおいついてきた。
「おなか減ったよね。」
そういうと先頭に出る。

ヤタツが眺めていた方向には、ただ林が広がっていただけであった。
常緑樹の細い針のような葉っぱが、濃い緑色の闇を作り出している。
だが、そこにはたしかに魔物が存在したのだ。
魔法を使い、姿を緑の闇に埋没させた魔物が。
そいつは、今こちらを見ていた少年が行った方向をしっかりと見定めた。