遠くへ









大学受験の志望校の最終審査の紙をもらいいつも通り一緒に帰ってる時の事だった。

「あーぁ!こんな書類いちいち書くのめんどいよね!
どぉーせうちらは高1の時から志望校変わってないのにさ・・」

いつもと同じノリで話しかけたのに翔太は突然立ち止まって俯いた。

「優・・その事なんだけどさ」

「・・ん〜?どーした?何か変更でもあったの??」

見た事ないような翔太の表情・・・
ただならぬ雰囲気に耐え切れずわざと明るく聞いてみた。

「俺さ、名古屋の大学行こうと思うんだ。」

頭が真っ白になった。
今までずっと近くにいると思ってたのに。
大学も学部は違うけど同じ所に行く予定だったのに。。。


あれから4ヶ月。
翔太の受験の日には毎朝会いに行ってたのに
大阪の大学へ行く朝だけは見送りにいけなかった。
――今日はそこの合格発表の日

外へ出る気がしなくて私はずっとベットの中で丸くなってた。
私の行く大学はもう決まってる。
翔太もその大学は第二志望にしてるから落ちたら同じ大学だ。

私は一体何を望んでるんだろう?

翔太が落ちる事?

それとも受かる事?

遠くへ行ったら変われるかもしれない。
私だって一度は遠くへ行きたいと思った。
やりたい事だってあったし
今までのものを全部捨てたら
新しい世界が待ってる気がしたから。
でも私は行けなかった。

捨てられないものがあった
失いたくないモノがあった
そして何より翔太と離れたくなかった。
そんなのカッコ悪いって思ってたけど
離れる事なんか考えられなかったの。
小さい時から当たり前みたいに一緒にいた
私が私立の中学に入った時、初めて離れてみて分かった気がしたんだ。
翔太は知らなかったのかな?
私は翔太がいないと駄目だって思った事。

知らないわけないよね・・
なのに翔太は行っちゃうんだね


今までのものを全部捨てて
翔太は新しい世界で生きていくのかな?

今は応援なんて出来ないよ
ごめんね

自分の事しか考えられなくて

でもまだ何も考えたくない・・・


「優ぅ―――っ!!」


突然大きな声がした。
驚いてベランダに出ると翔太が家の前にいた。

思わず身構えてしまった。
耳を抑えたくなった。
聞きたくない・・
どんな結果でも今は受け止められないから・・


「俺、受かった――!!!!」


久々にみた翔太の満面の笑み。
その嬉しそうな顔を見てたら答えがでた。

ゆっくりと私も笑顔になる

「おめでとぉー!!!」

満面の笑みで言えた。
言った瞬間、私の目から涙がこぼれ落ちた。
その涙は今まで頬を伝ったどの涙よりも温かくて
私は最初それが涙だとは思わなかった。

これから先、少なくとも翔太と離れてる間は
きっと何度も涙を流すだろう。
でもこんな涙もあるって事を忘れないようにしよう。

そうすればきっと乗り越えられる。

近くにいるだけがお互いを思う事じゃない。
遠くへ行っても想うことは出来るんだ。

もうちょっと待ってて
そしたらちゃんと送り出せるから

遠くへ行っちゃった君が
私の事を思い出してくれるくらい
最高の笑顔でお見送りするからさ・・・


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