すれ違う人々は誰もが幸せそうに見えた。 「こんな広い世界の中、私がいなくなったって気付く人なんているのかなぁ・・」 ぽつりとつぶやいた後, 彼女はそんな考えを振り払うかのように MDの音量をあげ、 急いで家路についた。 +++++++++++++++++++++++++++++++++ 「たっだぁーいまぁ♪」 元気よく"佐山"という表札のかかった家の玄関を開け、彼女は中に入っていった。 リビングへ行くと母親が夕食の仕度を、妹はTVゲームをしているところだった。 「おかえりっ!」 妹はゲームに集中しているらしく彼女の方を見ないで短く返事だけした。 母親は家事をしつつ彼女に話しかけた。 「おかえり、早紀!今日も寒かったねぇ〜」 「お母さんお腹空いたー!今日の夜ゴハンは何??♪」 「今夜は肉じゃがよ! しかもお母さんが腕によりをかけて作ったフランス風の!」 「・・・・へ、へぇ…楽しみぃ。。。」 「何真に受けてるの?冗談よ、冗談♪」 「なーんだ!よかったぁ!!!」 「さぁさぁ!早く制服着替えてきちゃいなさい♪」 「はぁ〜っい♪」 明るく返事をして自分の部屋へと向かった。 部屋に入りドアを閉め、ドアにもたれかかった。 「・・・疲れた」 ボソリと一言つぶやくとそのまま床に座り込んだ。 気がつくと彼女の目からは涙がこぼれていた。 電気のついていない部屋は真っ暗でそこで彼女は 声もたてずに静かに涙を流していた。 彼女の名前は【佐山 早紀】 高校1年生。 明るく元気で、しっかり者でおしゃべり。 それなのに何処か抜けてて いつも友達の真ん中で笑っている。 しっかりしてる上に友達からの人望も 先生方からの信頼も厚い。 おっちょこちょいだが誰よりも優しい母に ちょっと口うるさいが心の広い父、 そしてゲームとバスケが大好きな中2の妹。 よく喧嘩もするが 姉妹でよく遊ぶなどしていて 家族仲は極めて良好。 近所でも仲が良いという評判である。 それなのに 早紀は最近1人になりたいと思っていた。 周りにあるもの全てが 無意味で 無機質で とても冷たいものに感じていたのだった・・・ あの夜空に輝く月や星の淡い光は 今の早紀の心には届かなかった。 +NEXT+ +BACK+ |