トアル月夜ノ物語+―+その1+―+







12月の寒い空の下、 女子高生がMDを聞きながら賑やかな街を歩いていた。
すれ違う人々は誰もが幸せそうに見えた。

「こんな広い世界の中、私がいなくなったって気付く人なんているのかなぁ・・」

ぽつりとつぶやいた後,
彼女はそんな考えを振り払うかのように
MDの音量をあげ、
急いで家路についた。


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「たっだぁーいまぁ♪」
元気よく"佐山"という表札のかかった家の玄関を開け、彼女は中に入っていった。
リビングへ行くと母親が夕食の仕度を、妹はTVゲームをしているところだった。
「おかえりっ!」
妹はゲームに集中しているらしく彼女の方を見ないで短く返事だけした。
母親は家事をしつつ彼女に話しかけた。
「おかえり、早紀!今日も寒かったねぇ〜」
「お母さんお腹空いたー!今日の夜ゴハンは何??♪」
「今夜は肉じゃがよ!
しかもお母さんが腕によりをかけて作ったフランス風の!」
「・・・・へ、へぇ…楽しみぃ。。。」
「何真に受けてるの?冗談よ、冗談♪」
「なーんだ!よかったぁ!!!」
「さぁさぁ!早く制服着替えてきちゃいなさい♪」
「はぁ〜っい♪」
明るく返事をして自分の部屋へと向かった。


部屋に入りドアを閉め、ドアにもたれかかった。

「・・・疲れた」

ボソリと一言つぶやくとそのまま床に座り込んだ。
気がつくと彼女の目からは涙がこぼれていた。
電気のついていない部屋は真っ暗でそこで彼女は
声もたてずに静かに涙を流していた。


彼女の名前は【佐山 早紀】
高校1年生。
明るく元気で、しっかり者でおしゃべり。
それなのに何処か抜けてて
いつも友達の真ん中で笑っている。
しっかりしてる上に友達からの人望も
先生方からの信頼も厚い。
おっちょこちょいだが誰よりも優しい母に
ちょっと口うるさいが心の広い父、
そしてゲームとバスケが大好きな中2の妹。
よく喧嘩もするが
姉妹でよく遊ぶなどしていて
家族仲は極めて良好。
近所でも仲が良いという評判である。


それなのに
早紀は最近1人になりたいと思っていた。
周りにあるもの全てが
無意味で
無機質で
とても冷たいものに感じていたのだった・・・

あの夜空に輝く月や星の淡い光は
今の早紀の心には届かなかった。


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