2月20日
『リング』 鈴木光司:著
今、はやってますね〜〜。映画に(なんと2まででましたね)テレビに。
私個人の好みとして一番怖かったのは「本」ですね。
呪のビデオテープの描写はいいですね。夜寝ながら読んでいて後頭部に視線を
感じましたからね。
どんどんストーリーが展開していって(期限があるから当り前なんだが)
引き込まれていくんだが、ちょっと伏線が弱い感じがしたかな。
「え、あれは、こういう事だったの?」みたいな、驚きが少ない感じ。
これは好みの問題だろうけど、もう少し伏線がちりばめられていると私としては
謎が解けた時の感動が大きいんだけどな〜〜。
ま、それだと映画にしにくいか(笑)
映画では松島さんが一生懸命謎解きに奔走しているけど、いきあたりばったりの
感じは否めないからな〜〜。
謎解きの面白さが、触れるとイメージが浮かんでくる超能力で半減しているし。
今日の教訓 『原作読めよ、原作を!』
2月21日
『らせん』 鈴木光司:著
凄い緻密な構想です。
暗号解読のシーンは何度もページを読み返しながら
さながら主人公になったように読んでいました。
知的興奮を大分満足した感じかな。
伏線というより謎が謎をよび、最後はどんでん返し!
これは映画化しなかったほうがよかったですね。
あの謎を解き明かしていく主人公の心理は読書でなければ
味わえないでしょう。
今日の教訓 『何でも映画化すればいいってもんじゃないよ!』
2月22日
『ループ』 鈴木光司:著
『リング』『らせん』を読んでから、これを読んだら
一瞬裏切られた感じがした。(悪い意味で)
「お、夢落ちに近いじゃん」
目が覚めたら、リングもらせんも幻?みたいな錯覚。
しかし、途中のインディアンの出てくるシーンの元本が
以前私が読んでいた本だったことは、何か嬉しかったですな。
やっぱり、インディアンが出てくるなら、あの本を読まないと
悲惨な歴史は語れないでしょうからな。
え、何という本?ループにインディアン?
とりあえず、読んでみて下さい(笑)
(宣伝してるわけではないが、結局宣伝している、書評とはそんなもんさね)
今日の教訓 『評したつもりが、宣伝に』
2月23日
『バースデイ』 鈴木光司:著
貞子、舞、礼子の女性3人が主人公になっている、それぞれ独立した
3つのドラマ。
リング、らせん、ループを仕上げる時にカットされたドラマ。
私個人としては、礼子が主人公の「ハッピー・バースデイ」がイチ押しです。
勿論、美処女の高野舞のドラマもドキドキして面白いのだが、インパクトに
かけるな。(カットされても文句が言えない)
そして、貞子のドラマ。
こちらも印象は薄く、貞子の持つ不気味さを増加させるには至っていない。
リングを読んだ人なら、このドラマには不服が残るでしょう。
残念なのは、「ハッピー・バースデイ」が「ループ」でカットされてしまったこと。
これが組み込まれていたのなら、「おお、リングワールドが完結したぞ〜〜」と
満足感に浸ってやすらかな眠りにつけたのに(笑)。
鈴木光司さんにしては、いいエンディングなのにな〜〜〜。
(鈴木光司さんの小説は殆ど読んでいるのだが、いつもエンディングに
違和感を持っているんです)
今日の教訓 『小説の本当の最後は、作者しか知らない』
2月24日
『鉄道員(ぽっぽや)』 浅田次郎:著
日本に古くからある風習で、お盆に迎え火をたいて、死者の魂を呼び寄せ供養し、
お盆があけると送り火を焚いて死者を黄泉の国へと送り出すというのがある。
死者の『念』がまだ生きていて、生者の生活になんらかの影響を与えている
のではないかという心の現われなのだろう。
「うらぼんえ」などは、まさにその典型で、孫娘が嫁ぎ先でイジメとも
とれるような仕打ちをうけ、たった一人で嫁ぎ先の家族に主張すらできない状態の時に
助けを求める娘と、助けたいという祖父の『念』が共鳴し、新盆の迎え火が
きっかけとなって、祖父が蘇ってくる。
また、「ラブ・レター」では、戸籍を売って偽装結婚した男が、その相手である
中国人の女性の死に際に書いた手紙を受け取り、あまりにも純粋な女性の『愛念』
に慟哭する。会った事も話しをした事もない相手に「私と結婚してくれたから」という
感謝の言葉を送り、男の名前をよび続ける、祈りにも似た2通のラブ・レター。
一度も会ったことがない男を気づかって、どんなに苦しくて、自分が死を覚悟
した時でも旦那である男を呼ばないでと医者に訴えている。
私は、そこに愛に殉じようとする『念』、あまりにも純粋な『愛念』を感じ涙した。
あと6編ほど短編があるのだが、全編を通して流れているのは、こうした日本人
独特の『念』、生者も死者も『念』という立場では区別がなく、連続しているという
ことではないだろうか。
『念』には、愛念、情念、怨念など多様な『念』があり、よくも悪くも生者は
そうした『念』に影響を受けて生きているんだろうと作者が言っているような気がする。
今日の教訓 『念は生きている、あな恐ろしや』
2月25日
『日蝕』 平野啓一郎:著
舞台は中世のヨーロッパ、魔女裁判が行われている時代、一人の僧侶が
苦悩する様を1人称で綴った小説である。
ストーリーからすれば、ありきたりの感が拭えない。が、文体を見ると、
難解な漢字、語句、古風な言い回しを用い、スムーズに読み進むのを疎外している。
もし、普通の語句を用い、平易な文体で書かれたなら最終選考にも残らなかった
んじゃないだろうか。
では、受賞した魅力とは何なのだろう。
年齢が23ということを考慮するなら、まさしく映像の時代に生まれ育った
んだろうと実感できる。
漢字を縦、横、斜め、止め、跳ね、はらい、が織り成す幾何学模様とみなし、
1つの意味にそれ以上のイメージを持たせることを意図したというのなら、
それはそれで成功しているだろう。
中世のヨーロッパの魔女裁判をモチーフにした雄大な構想を表現するとき、
文字の意味するところより、文字そのものが持つ力(漢字の美しさ)
を利用し、意味以上の効果を醸し出す試みなのだろう。
ストーリーやテーマの奇抜さ、緻密さを追い求めている現代文学に対しての挑戦と
受け取るならば受賞したということも納得できる。
しかし、日本の宗教的素養はヨーロッパのそれよりはるかに高みにあること
を作者は気付いていないのだろうか。
日本に宣教師が来始めた頃、一介の農夫が宣教師に「洗礼を受けて救われるの
はわかったが、おいらだけが救われて、ご先祖様が救われないなら、仕方ねえべ」
というような事を言って宣教師を困らせており、その宣教師もヨーロッパ本国に
「日本において布教するには、私よりもっと教義に詳しい、位の高い宣教師を
必要とする」という書欄を送っている。
この小説でテーマの1つである霊と肉体の関係など、古来の日本では問題にさえ
なっていなかったのである。(仏教思想として色心不二が浸透していたものと思われる)
文芸春秋のインタビューにおいて「常に読者を意識して、そのテーマの合った
文体を模索している」という意味の事を言っていたが、それなら、テーマそのものが
日本の精神的土壌にはなじんでおらず、古風な文体を選んだ事も徒労に終わっている
のではないだろうか。
とはいえ、これだけの力量があるわけであるから、次回作がどういうものになる
のか期待させてくれる。
平易な文章で、簡素な文字によって、作者が訴えたい事を明確に打ち出した小説
を読んでみたいものである。
次回作への期待の大きさも受賞の1つの要因なのだろう。
蛇足であるが、三島由紀夫の再来などというコピーで売り出すのは甚だ筋違い
だということを付け加えておきたい。
今日の教訓 『凝りすぎると、次が大変だよ!』
2月26日
『種の終焉』 北上秋彦:著
世界を牛耳る組織が日本へ向けた刃は、男性の精子の数を
激減させる薬品を散布した冷凍エビ、アジアへは致死率が極めて高い
ウイルス性の熱病。
有色人種を種そのものから滅ぼそうという陰謀が仕組まれる。
こういう状況設定なら主人公は筋骨隆々の特殊工作員を想像するのだが、
それを解決するために立ち上がる主人公は車椅子に乗っている。
凄い設定でしょ。
で、これを一気に読ませる筆力。(500p近くある)
私も一気に読まされました。
しかも、「本当にありそう」と思わせる内容だから尚更凄い。
事件を解決するにあたって、その中心になるアイテムが、電子メールと
IRCなんですよ。
メールで元恋人とのやりとりがあったり、IRCで世界中の友人と
会話しながら指示を出したり、インターネットを存分に使いまくっている。
ネットに繋いでいる人なら良くわかっているアイテム、良く使うアイテム
だから、随所に「なるほど」と納得させられてしまう所が出てくる。
丁度環境ホルモンが問題になり始めた頃出版されたのもグッドタイミング。
手放しで褒めているようだが、そう、褒めているんです。(笑)
幾つになっても、こういう破天荒な冒険小説みたいなのを求めてしまうさ(笑)
今日の教訓 『凄いと思ったら、素直に褒めよう!』
2月27日
『姑獲鳥の夏』 京極夏彦:著
京極ワールド、まさしくその世界に連れていってくれる作品です。
読み進むうちに、京極堂の論理に巻き込まれ、現実が遥か彼方の
暗闇に吸い込まれ、認識している世界がぼろぼろと崩れ落ちていく錯覚。
20箇月も妊娠している女性がいても不思議ではないと思わせる
異空間へスムーズに意識を運んでいく。
いたる所に伏線が張り巡らされ、それを1つずつ解きほぐしていく
快感。
忘れた頃に解き明かされる、喉の奥に刺さった小骨のような小さな謎。
まるで、地に埋もれた小さな化石から、体長20メートルを超える
巨大な恐竜を寸分の狂いもなく組み立てていくようだ。
表題は「うぶめのなつ」と読み、「姑獲鳥(うぶめ)」の意味は以下の如くである。
産の上にて身まかりたりたし女、
其の執心、
此のものとなれり。
其のかたち、
腰より下は血にそみて、
其の声、
をばれう、
をばれうと鳴くと申しならはせり。 (「百物語評判」)
日本で伝承される妖怪の類を題材にしているだけに、
幼い頃、闇に恐怖した記憶をくすぐられる。
しかも、「日本人ならわかるだろ」というようなツボを
しっかり心得ている。
一人薄暗い杣道を歩いていると、ふと後ろから同じ歩調の
足跡が聞こえ、振り返ると誰もいないのに、存在を匂わせる
濃厚な気配だけが漂っている。
「引き返せ!」という内なる声が聞こえても、闇が引き寄せようと
する力に抗えず、一歩ずつ歩を進めていく、なにかしら罪を
犯していくような緊張感が心に満ち溢れてくる。
そういう世界へ誘ってくれる小説です。
今日の教訓 『闇だから見えないのか、見えないから闇なのか・・』
2月28日
『捜神鬼』 西村寿行:著
数ある氏の作品の中で、私が好きなものの1つである。
氏の作品は過激は性描写もあるかもしれないが、私は
動物物が非常に好きである。
映画化された「犬笛」を記憶している方もいるでしょう。
これは、4つの短編からなっていて、それぞれが人間と他の生き物
との心の交流がテーマになっている。
「痩牛鬼」、「海獣鬼」、「妖獣鬼」、「聖獣鬼」と、
表題に全て鬼がつく。
氏は、魂の純粋さを貫くために人は鬼になるということ、
ならざるを得ない状況もあるということ、そして、鬼になった
心もまた、その魂の純粋さで救われて行くということを表現しようとしている
ように思われる。
この「捜神鬼」においては、本能に忠実に生きている動物に接する事によって
人間が魂の純粋さを取り戻していく。
大人の読む童話のような感じで、読者を魅了している。
強引な筋の展開、短い文でのリズム、時折出てくる古めかしい漢字などを
駆使して読者を引きずり込む。
まさに、魔的な作家の一人であろう。
今日の教訓 『気がつけば、涙流して読んでいる。』
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