怖かろう。悔しかろう。たとえ鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだ!


 苦しいか。苦しいだろう。しかし、貴様にはその苦しみがお似合いだ。
 あがけ。もがけ。そして、這いつくばって己の無力さを思い知るがいい。
 そう、我が前に立ちはだかる者には地獄をくれてやる。
 決して這い上がることの出来ない地獄をな。

 ・・・・・・復讐人、テンカワ・アキト・・・・・・

 決してその名を忘れはせん。我が身朽ち果てようと、地獄へは共に行こうぞ!


 機動戦艦ナデシコ劇場版異聞

 REVENGER OF DARKNESS


第2話 迷走〜望まれぬ未来への飛躍


<メグミ・レイナード>
 アキトさんを好きになったことは私にとってナデシコでの良き想い出の一つ。
 あの時アキトさんには私しかいないと思ってた。だからアキトさんには私だけを見ていて欲しかった。
 でも、アキトさんが見つめていたのは私じゃなかった。
 アキトさんが見つめていたのは・・・・誰もが夢見る未来・・・・だったと思う。
 本当にそうなのかって言われたら自信はないけど、私はそう思ってる。
 だって、そのほうがアキトさんらしいもの。
 そして、それを包み込むことが出来るユリカさんも凄いと思う。
 結局、あの2人の間には私の付け入る隙はなかった、ってことかな。
 だからアキトさん必ず戻ってきて。そして、以前のようなアキトさんらしいアキトさんとなって私達
の前に現れて!
 ユリカさんのためにも、そしてナデシコの仲間だった私達のためにも・・・・・・
 


S−1 戦艦ライラック”ブリッジ”

「・・・・・・行ってしまわれたか」
 電子の妖精を乗せた白き戦艦”ナデシコC”は一瞬にして目の前からもレーダーサイトからも消えた。
 ボソンジュンプ。
 それは火星遺跡によって行われる一種のタイムワープ。目の前でナデシコが消えたのもこのボソジャンプ
によるもの。
 この戦いの雌雄はボソンジャンプによって始まりボソンジャンプによって決まるといっても過言ではない。
 しかし、と思う。このボソンジャンプがなかったら、もっとこの世界は平和だったのではないか。そして、
宇宙は静かなる海のままだったのではないかとも思う。
「まさかまだA級ジャンパーが残っていたとはな・・・・」
 これでナデシコの勝利は間違いないだろう。
 ナデシコ、もはやそれは伝説の戦艦。私も木連の時代に幾度か対戦したことがあるが、一言で言えば”神秘”
としか言い表せない戦術を用いる戦艦だった。後にその艦長がミスマル・ユリカという女性だったことを知った
ときには驚きを隠せなかったのを覚えている。
「・・・・・・ナデシコ・・・・・・そして、草壁春樹・・・・・・か・・・・・」
 私は今回の事件における首謀者の名前を呟いた。
 草壁春樹、”火星の後継者”指導者にして元木連中将、そして・・・・・・私達の元上官。
 おそらく今回の事件は結果がどう動こうと元木連組には良い結果を残さないことだけは目に見えている。
そう、元木連組の我々にはこの事件はあまりにも荷が重い、重すぎる事件なのだ。
 だから、我々自身は動かないのかもしれない。責任を放棄するために・・・・・・
「・・・・・・男らしくないな」
 そのことは自分でも思う。いや、十分すぎるくらい分かっている。・・・・・・もし、あの人がこの
場所にいればなんと言うだろう・・・・・・
 そんなことは分かっている。叱咤されるに決まっている。あの人ほど木連を愛していた人間はいないのだから。
「・・・・・・月臣少佐・・・・・・もしかしたら、時代は繰り返されるのかもしれませんよ・・・・・・」
 時代は確実に変化している。しかし、”草壁”が火星極冠遺跡に現れ、再び”ナデシコ”が火星に現れる。
それが繰り返しの象徴のような気がしてならない。
 私は静かなる真空の海を眺めた。
「まるで墓場だな」
 墓場の上に我々は立っている。いや、すでに我々は亡き者なのなのかもしれないな。

「艦長!ボソン粒子反応確認!!」
「何かが前方にボソンジャンプしてきます!」
 部下の声が私の瞑想を断ち切った。
「本艦は後退しつつ、戦闘隊形に移行!敵の動きに注意しろ!!」
 ”火星の後継者”なのだろうか?ナデシコがいない今我々を狙っても意味がないだろうが・・・・・・まさか!
例のボソンジャンプする黒いロボットか!?
・・・・・・どうする!?
 苛立ちが募る。
「友軍識別コード確認!しかし、識別コードに該当する機体はありません」
 正体不明の友軍機、何者だ?
「艦長、正体不明の機体より通信です」
「よし、つなげ」
『やあ、久しぶりだね。アララギ君』
「・・・・・・つ・月臣少佐・・・・・・」
 そう、コミュニケに表れたのはクーデター後に行方不明になっていたはずの月臣少佐だった。
 

 

<白鳥ユキナ>

 元一郎が行方不明になっていることは知っている。恐らく木連にいる意味をなくしちゃったんだと思う。
 元一郎とお兄ちゃんは大の仲良しだった。お兄ちゃん自身の口から『元一郎は信頼に足る奴だよ』って言葉を
聞いたこともあるし。
 そんな2人だったから、お兄ちゃんのいない木連に元一郎はそこにいる必要性ってやつを見失ってしまったんだ
と思う。でも、元一郎のことだから必ず元気にやってると思う。だって、私だっているんだもん。死んで
たりしたら絶対許さないんだから。
 あ、そうだ、元一郎に伝えることがあるんだ。
 地球でね、お兄ちゃんと同じ瞳をした人に出会ったよ。テンカワ・アキトって言う人なんだ。
 まあ、お兄ちゃんほどかっこよくないけど、でもすごく優しくてみんなから慕われてるし、それに”ゲキガンガー”
が好きなところまでそっくりなんだよ。
 もし、元一郎が私のところに来ることがあったら紹介するね。それと、ジュン君もね。
 それまでは元気で必ずいてね。
 

 


S−2 戦艦ライラック”艦長室”

「やはり、生きておられたんですね」
「・・・・・・ああ」
 アララギは決して私の方を見ようともしなかった。
 当たり前だろう。革命が一段落したとはいえまだまだ混乱の渦中にあった木連を見捨てて逃げた男が、再び
現れたのだからその態度も頷けるというものだ。
 そして、私もそのことをよく解っているから余計なことは言わなかった。
「しかし、木星で行方不明になった貴方が当艦に何の用があって?」
「・・・・・・単刀直入に言おう・・・・・・火星に行って欲しい。」
「・・・・・・!?・・・・・・・」
 アララギの瞳が驚きのために見開かれている。・・・・・・正直な奴め。
「・・・・・・私が木星から消えた訳は知っているか?」
「ええ・・・・・・草壁中将を追うためですよね・・・・・・」
「最初はそのつもりだった。しかし・・・・」  そう、クーデターの混乱の中逃げ去った草壁を追って私は地下へと潜った。  しかし草壁の行方はようとして知れず、もはや全てを諦めようとしていたとき、私の前に奴は現れた。
 テンカワ・アキト。相貌の瞳に復讐の炎を燃やす奴に会わなければ、私はこの場には現れることはなかった
だろう。そして、私の人生は終わっていただろう。
「私は彼に戦場で生き残る術を全て教え込んだ。・・・・・・草壁によって全てを奪われていた奴は、まるで
奪われた分を取り戻すかのように吸収していった」
 奴の吸収の早さは教えていた私自身が恐ろしくなるほどだった。
 私は何度も自問した。”このまま奴に全てを教え込んで良いのか?”、”私は奴をただの殺人マシーンに
しようとしているのではないか? ”などと・・・・・・
「そして気がついたとき私は奴を完璧な復讐鬼に仕立て上げていた」
「・・・・・・後悔しているんですか」
 私はその問いかけに沈黙で答えた。いや、答えられなかったと言った方が正解か。
「・・・・・・とにかく、奴は草壁を殺すだろう。しかし、草壁はそれで終わりにしてはならない。奴には
我が友に汚名を着せた罪を償ってもらわねばならんのだからな」
「草壁は殺さずに捕まえろと?」
 私は黙ってうなずく。
「草壁にはそんな気楽な死に方をしてもらっては困る。奴には万民に嘲り、罵倒され、嘲笑されて死んでいく
のがお似合いだ」
 アララギは何も言わず私を見つめ、私もまた静かにアララギを見つめ返した。
 最初に沈黙を破ったのはアララギだった。
「・・・・・・判りました。当艦隊はこれより火星に”草壁春樹”をナデシコより受け取りに参ります」
 そう言うとアララギは私に向けて敬礼をする。
 私はそれに対してただ微笑むだけしかできなかった。
 

 

 ・・・・アキトよ、戦いはもうすぐ終わる。

 



あとがきです。

 

「REVENGER OF DARKNESS」第2話。ようやく出来上がりました。(涙)
実はこの第2話を書きたくてこの話を書き始めたんですが、紆余曲折、悩みに悩みまくって
実はちょっと不完全燃焼。自分の文章力の無さが恨めしい・・・・・・
ちなみに「REVENGER OF DARKNESS」は劇場版の裏のお話なんですがタイムラグがあることに
お気付きでしょうか?このタイムラグを魔角は無理と使っています。
なぜならボソンジャンプは一種のタイムワープなんだからタイムラグは無効になるはず
との考え方からなんです。(実際、TV版でもアキトは一週間前の月に飛んでましたし。)
ま、どちらにしても恐らくこの話も次が最終回になるでしょう。(確証はありませんが・・・・・・)
きっちり結論が出るのか判りませんが、次回第3話でお会いしましょう。

1999.6.6 魔角甲機。


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