窓に雨が打ちつけられている。
梅雨の時期には当たり前の風景。
いつもと一つだけ違うことは、その景色の中にキミがいること。
雨とココア。
「なぁ…どうしたんだ?」
「………」
さっきからこの調子。
学校も終わり、部屋に帰ってくると玄関の前で彼女が膝を抱えて座っていた。
髪も服もずぶ濡れの状態で。
すぐさま部屋にいれて、風呂に入らせた。
濡れている服は洗濯して、乾かしておこう。
その間は、オレの洋服で我慢してもらえばいい。
風呂から出てくる頃を見計らって、ココアを淹れた。
少しして、風呂から出てきた綾華は、置いておいたオレの服を着ていた。
当たり前だけど、オレの服はぶかぶかで。
余った袖を折って、何とか指先を出していた。
ちっちゃい子みたいで、可愛かった。
…この落ち込みがなければ、満点なくらいに。
彼女にクッションを渡して、座るよう促した。
今はテーブルの向かい側で、暖かいココアの入ったマグカップを両手で抱えて俯いている。
「なぁ、ホントどうしたんだよ?」
「………」
「…ふぅ、言いたくないみたいだな」
「……ごめんなさい」
「まぁ、いいさ。寒くないか?」
「あ、大丈夫です」
「それにしても、あんなにずぶ濡れで…傘でも何でもあるだろうに」
「……た…す」
「え?」
「…傘が、無くなったんです」
「そんなのコンビニにでも売ってるだろーよ」
「そうじゃなくて!…剛さんとお揃いの傘だったのに…」
それだけで。
たったそれだけのことで、ここまで落ち込んでいたなんて。
気付けなくて、ゴメンよ。
どうしようもなくおっちょこちょいで
どうしようもなく可愛い恋人よ。
謝罪と、密かな願いでもあるボクの想いを乗せて。
ボクからキミに、一つの言葉をプレゼントするよ。
「なぁ、綾華」
「…はい?」
「傘が無いなら、これからは一緒に帰ろう」
「…雨が降った時に、一緒にいないかもしれません」
「そうかもしれないな」
「……はい」
「だから、いつも、いつまでも、一緒に、いよう」
「……っ、……は…い」
いまだ降り続ける雨。
この雨がいつ降り止むのかは分からないけれど。
キミの眼から落ちる雨だけは、降り止ませてみせるよ。
一生、梅雨なんてこないように。