10月も終わりに近づいたとある日曜日。
冬物買いに行こっ。
そんな紗弥華の一言で、この日一日の予定は決定した。
〜 帰り道 〜
少しずつ、街も街路樹も冬支度を始めていた。
あまり上がらない気温、澄んだ空気に高い空。
身近に冬の到来を感じつつ、涼太と紗弥華は隣町のデパートに買い物に来ていた。
これ可愛いよね〜あっちのも可愛いなぁ〜あっ!あそこにもあるぅ〜
涼太はそんな紗弥華に振り回されつつ、買い物は進んでいった。
「たくさん買ったね〜」
「・・・ああ」
涼太は疲れたように返事をした。
・・・いや、実際疲れていたが。
「どうしたの涼太?疲れてるみたいだけど」
紗弥華は涼太の顔を覗き込んだ。
「あれだけ色々回れば誰でも疲れるって」
まだまだ元気な紗弥華を見つつ、苦笑しながら答えた。
「もぉ〜、涼太おじさんくさいぞ!」
頬を膨らませながら、文句を言う紗弥華。
そんな紗弥華を可愛いと思ってしまうあたり、つくづく惚れてるなぁと涼太は思った。
「どしたの?人の顔じ〜っと見ちゃって」
そんなことを思っていたもんだから、いつの間にか沙弥華を見つめていたらしい。
そんな涼太の気持ちなぞ気づく訳もなく、紗弥華は不思議そうに首をかしげた。
「なんでもないよ」
「あ、もしかして見惚れてたんでしょ〜?」
からかうように、いたずらっ子のように目を輝かせながら言った。
いつもからかわれてる分、そのお返しにと言ってみたんだろう。
「そうだよ」
涼太はつい素直に答えてしまった。
「・・・え?」
紗弥華は驚いた。
見惚れてた?涼太が?私に?
いつもからかうだけで、そんなこと言わないくせに。
珍しくそんなことを言われたもんだから、紗弥華は恥ずかしくて俯いた。
まともに返答なんてできなかった。
涼太も涼太で俯いていた。
自分の言った台詞の恥ずかしさに気づいたらしい。
少し気まずい雰囲気のまま、二人はバス停へと歩いていった。
バス停で待つこと30分。
一向にバスの来る気配が無い。
おかしい。
そう思った涼太はバス会社に電話した。
すみませんタイヤがパンクしたらしくまだ時間かかりそうなんです。
「マジかよ・・・」
つい涼太はそう一人ごちた。
「どうかしたの?」
手を擦りながら、紗弥華が尋ねた。
電話の内容を知らない紗弥華は、バスが来ないことをまだ知らない。
涼太はそのことを伝えた。
「で、どうする?」
「どうしよっか?」
ここから二人の街まで歩いて一時間強。
時間はかかるが、歩いて帰れない距離ではない。
「歩いて帰るか」
「・・・そうだね」
すでに夕暮れ。
街に着く頃には真っ暗になってるだろうが、それも仕方ない。
早く帰ろう。暗くなれば、気温も治安も下がる。
紗弥華はそう考え、先を急ごうとした。
「・・・どうしたの?」
涼太が歩こうとしない。
ただ手をこちらに向けている。
まるで握手をするかのように。
「いや、寒いから」
「うん、寒いね。・・・だから、早く帰ろ?」
「おう、帰るぞ。でもな、寒いんだよ」
「・・・?」
今いち涼太の意図が理解できなかった。
そんな紗弥華を見て諦めたのか、やっと涼太は歩き出した。
・・・紗弥華の手を握って。
「えっ・・・」
驚いた。
今まで涼太が自分から手を繋いでくれたことなんて無かったから。
いつも手を繋ぐ時は私からだった。
「寒いから、オレの手袋代わりになってくれ」
分かりやすい嘘だった。
涼太の手はこんなにも暖かい。
涼太は見逃していなかったのだ。
私が寒そうに手を擦り合わせていたのを。
嬉しかった。
涼太の優しさが。
自分から手を繋いでくれたことが。
・・・私をちゃんと見ていてくれたことが。
「うんっ!」
笑顔で答える紗弥華に照れたのか、涼太はそっぽを向いてしまった。
「んじゃ、行くぞ」
少々ぶっきら棒な言い方になってしまったのは、照れているから。
分かりやすいんだから。
でも、そんなとこも好きだよ。
歩き出した二人の手はしっかりと握られていた。
涼太のポケットの中で。
バス停。
ポケット。
重なる手。
そんな冬の始まり。
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あとがき
秋の話を書いたから、次は冬かな・・・と。
そんな安易な考えから書いてみました。
相変わらず唐突な話の始まりです。
基本的なテーマが『小さな街の小さな恋』
この恋の日常の1コマを綴ってるだけ。
と、自分では思ってみたり。