小説 いんこな日々

1章 いんこになった日

目が覚めた時 私はいんこになっていた…。

最初 何が起きたのか わからんかった。
目の前に柵があった。ん?鳥かご?
餌箱と水入れ 菜っ葉挿しで んんん?かごの中?
何か変で 恐る恐る足元見たら 
ぎょええええええええええ〜〜〜っっっ!
止まり木にしがみついた自分の足がウロコで出来てるっ!
からだはっ?羽毛じゃ〜〜〜〜っっっ!!!
わたしは 鳥っ!?そんなバカな!

これは 何かの間違いだ。私は人間であって 断じて鳥では
ないっ。
いんこの飼い主経験は以前に数年積んでいたが 己が鳥にな
る道理は まったくない。
「そ そうだ かごの中に鏡があるかもっ」
上を見上げると あった!ブランコ型鏡がブラブラして
いる。
よじ登って鏡で我が身を確認せねば 信じれられない。
いんこ飼っていたから 柵のよじ登り方は 観察して
知っておる。記憶をたよりに くちばしで(唇でなくて
くちばしになってるし!、といちいち泣きたくなって
くる)柵に齧り付き ウロコな脚(足でない)をワシ
ワシと左右交互に動かして 柵の上へ登って行った。
 
ブランコにたどり着いて 鏡を見入った。
もしや、と思っておったが やっぱりそこには 鳥が写って
おった。セキセイインコだ…。
心臓がドキドキ ものすごい勢いで脈打っている。
そういえば いんこの脈って 人間よりずっと早いのだ
と聞いたことがあったけど…。
私は 白い顔に青いボディーのオパーリンという品種
であることが 判明した。
性別はメス、これは人間の時から変わらなかったらしい。

鏡の中のいんこな己の姿を見入っていた。我を忘れて
見入っていた。目ん玉がぎゅ〜〜っと小さくなって
興奮しているのがわかった。駄目だ 落ち着かなきゃ。

「あら!もう鏡にべったりして 目まで白黒させちゃ
って。鏡の中に恋人が出来たのかな〜♪」
目が白黒しているのは 驚愕しているからだっ!
アホ抜かせっ!背後からしゃべりかける声に無意識
に振りかえって 腰を抜かしてしそうになった。
巨大な知らない顔が鳥かごにの横に貼りつくように
あったからだ。ビッと小さな悲鳴を上げてしまったが
そうか 巨大なのではなくて自分が小さくなっただけ
なんだ、とハタと気付いて また悲しくなる。
何か気付くたびに悲しくなるのには困ったものだ。

で。ところで あんた誰?
もしやもしや、と思うけど まさか「私の飼い主」って
ことなんだろうか?
「なんだか怖がられてるみたいね、慣れるまでしょうが
ないものね」
やけに優しげな声で語りかけてくるその内容から
考えるに やはり あんたは私の「飼い主」になった
ってわけなのね。
肩をがっくりと落とすしかなかった。

もしかしたら、次に目が覚めたら 人間に戻ってるかも
しれない。
っていうか これって夢なんじゃない?
そうよ、そうよ、そうかもよ。
だから 今日はさっさと寝てしまおう。

そして翌朝。目が覚めると 私はいんこのままだった…。

(つづく)
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