小説 いんこな日々
| 2章 いんこ生活スタート いんこになった翌日、目が覚めても やっぱり いんこの ままだった。 どうして私は いんこになるハメになったのだろう? 布がかかって暗いかごの中 私は つらつら時間をつぶして おった。 起きてみる(というか 飼い主がかごの布取っ払たのだ)と 私のかごの他になんと二つも鳥かごが置いてあった。 でかい方のかごに オカメとセキセイ 小ぶりのかごには もう一羽セキセイインコが入っていた。 一羽かごのインコは メスだ…しかも 相当 ふんぞり 返っていばり散らしている様子である。 視線が合ったので 思いっきり睨み返してやった。こいつ とは いつか一戦交えることになる、と私は直感した。 一方 二羽入っているかごは 大きくてつくりもしっかり していて入れようと思えば もう一羽ぐらい同居できる広さ がありそうだ。 まずい、協調性なんぞ見せようもんなら 飼い主心理 として 鳥かごの数は減らしたいから(しつこくて申し訳な いが 以前私は いんこ飼っていた経験があるのだ)、私を 大部屋に入れて飼い主は様子を観察するに決まってる。 オカメは図体の割りには へなちょこな性格のようだし 同居しているセキセイはオスのようだ。 どちらも ちょっと威嚇しておけばビビるタイプだろう。 この二羽は 徹底的にいじめて 飼い主の同居させよう なんていう愚考は あきらさせねばならん。 せっかく 今 一羽でブランコもついているこのかごを 追い出されてはかなわない。 いきなりいんこになって 精神的ダメージもでかいのに あげくにこの上 共同生活なんざやってられないってのが 本音だ。この鳥かごは死守せねば! …と一羽で盛り上っておったが ふと気付けば 他のいんこ 達は 朝食やら身繕い(っていうか毛繕い)に余念がない。 そうだ いんこになってしまったからには きちんとこまめ に餌を食べなきゃ 体力が落ちてしまうことを思いだし 慌てて餌箱に駆け寄った。 私のお箸は?と一瞬あたりを見まわして 自分の羽が目に 入った。そうだ お箸なんて羽なんだから持てないし 必要 ないんだ…、餌箱にうなだれた頭をそのままつっこみ くち ばしで 餌をつっつき始めた。 生まれて始めて 生で食べたシードの味がほろ苦く感じた のは 気のせいだろうか? 「それじゃ行ってくるからね、いいこで留守番していて ね。」 かごの横をせわしなく バタバタ行き来していた飼い主が そう一声かけると 部屋から姿を消した。遠くでバタンと ドアの閉まる音 ガチャガチャ鍵をかける音がきこえた。 隣のいんこ達が 諦めたように寂しげに「きゅう〜」と 鳴いた。 どうやら お仕事に出かけたようだけど いつ帰ってくる んだろう? 私は急に不安になってきた。あの飼い主は ちゃんと ここに戻ってくるんだろうか? 以前、いんこを飼っていた頃、あいつらも私が出かけるのを こんな不安な気持ちで見送っていたのだろうか? ハハ、ハハハ、帰ってくるに決まっているじゃない、だって ここは 飼い主の部屋なんだから。 彼女の帰る場所は ここなのだから。 帰る場所…いんこになる前の私にもあった帰る場所… 私は頭をブンブンとふって またもや もたげてきかけて きた想いを振り払った。そんなこと思い出すの 当分おあ づけだ、今は いんことしていかに生きていくかで精一杯 だもん。 朝食でお腹が心地よく膨れたらしい、隣のいんこ達はウツラ ウツラ昼寝を始めるようである。 飼い主が戻ってきて 遊んでくれるまで体力を温存させて おくわけね。 私にとっては 初めての放鳥タイムは 非常に重要である。 隣のいんこ達に絶対負けてはならないのだ、彼らとの力関係 で上位にたつことが 今後のいんこ生活を快適にする鍵なの であり とにもかくにも「いんこの力関係は 最初が肝心」 なのだ(しつこいが 私のいんこ飼育経験に基づく経験則 である)。 従って 隣いんこらが昼寝するなら こちらも負けずに 昼寝して 決戦に備え 充分体力を蓄えておかねばならん。 特に 一羽かごのメスセキセイ、あの女には負けられぬ。 女の意地だ。 意地…?そんなものが自分に残ってるなんて ちょっと 驚いた。 それなのに 私はどうして いんこになってしまったん だろう?ふっと気が抜けると いつの間にか考え始めて しまうのだな…羽に顔をうずめ やがて私は昼寝を始めた。 (つづく) |