昼メロいんこ
オスのセキセイいんこには 大きく分けて三つのタイプがある。
タイプ1は 普通恋愛タイプ。メスいんこの存在で己がオスである自覚
が俄然出てきて メスにアタックし 上手くいけばカップル誕生と相成
るごくごく 順当な恋愛をするタイプである。
タイプ2は 男の自覚がいつまでたっても 出てこないタイプ。恋愛し
たくてムンムン色気振りまきまくりのメスがうろついていても その意
味がわからない鈍感な性格的特徴がある。とても鳥あたりの良いので
オスメス関係なく人気者になる、お友達にするには最高なタイプ。
タイプ3は 欲情爆発タイプ。メスいんこの存在より前に 情欲がムラ
ムラと先走ってるタイプであり、一人エッチや鏡べったりナルシストや
意味不明の物体(CDのケースとか洗濯ばさみとか)を恋の相手に
選ぶことに何の疑問も抱かないタイプで あげくに 本物のメスいんこ
とカップルになっても破綻するケースが非常に多い。
だいたいにおいて 飼い主である人間から見て理解不能な、挙動
不審いんこは タイプ3のいんこらである。
そして彼は まさしく そのタイプ3であった。
兆候は一人餌になった頃から すでに出始めていた。情欲のオーラ
が背中あたりからモワ〜っと見えた。私しゃ遠い目になって「シーザ
ー、お前もか」とつぶやいた。このタイプは我が家ですでに三羽目だ
ったからだ。
そりゃ最初の一羽目二羽目は まっとうなタイプ1に軌道修正させよ
う、と飼い主として努力はしたのだ。でも、努力が実らなかった。
タイプ3は 発症したら死ぬまでタイプ3として スリスリに生き抜くこ
とを私は少ない経験の中で確信するに至ったんである。
己の欲望のままに 欲情の世界をナルシストで自己完結しやがる
ので その意味では 手がかからない。が問題もある。 欲情の
相手が メスセキセイでないわけだから 愛の証のすっぱ臭い吐
き戻しの餌は 消化されることなく 床に山盛りになり あげくに
プレゼントしたのを忘れ去った彼は 近くの転がってる彼女(と
いんこには見える物体)が お返しでくれたものと勘違いした
あげく嬉々として腐ったそれを食べて そのう炎(人間でいうとこ
ろの食中毒状態)になってしまうという危険性が大きくなるから
だ。手がかからないと油断していると 陥り易い事態なので 飼
い主として気を付けると良いでしょう、以上、飼い方ワンポイント
でした〜(^^)b
話を本題に戻そう。タイプ3の彼の初恋の彼女は いんこ用の
おもちゃではなくて 「さえずる野鳥シリーズ」と言うれっきとし
た人間鑑賞用置き物で とてもかわいらしい青い小鳥ちゃん
であった。仕掛けたのは 当然飼い主。どーぜ 今後CDケー
スとかリモコンのボタンとか 訳わからん物(者ではない)に
求愛するに決まってるんだから 初恋ぐらい せめて見てくれ
がかわいい鳥であって欲しいというのが 飼い主心ってやつ
だ。
さえずる為の電池はとっくに切れておったので 安全性など鑑
みて そのまま撤去したので さえずりはしなかったけど その
抜群のかわいらしさは あっという間に彼の心を鷲掴みにした
(ま CDケースでも恋に落ちるんだから ちょろいもんださね)。
初恋の彼女との逢瀬は 一日にたった一回、放鳥時間の中
の しかもたった十数分のみとした。会えない時が 募る気
持ちとなり 愛を育む。幼稚園児なので 愛を伝える術を知
らない彼だったが それでも やがて小学生に成長したよう
で エグエグと吐き戻すような素振りを見せ始めた。
前述したように基本的にゲロ吐きには気を付けたい気持ちが
あったので 彼がエグエグを始めると 初恋の青い小鳥ちゃん
には
「私 清らかなおつきあいじゃなきゃ いや〜〜っ!」
と悲しげに去って行かせる演出を仕掛けた。呆然とする彼。
中途半端なエグエグのまま 餌を吐き出すまでやらせてもら
えず その日のデートは終了である。鬼のような演出と言わ
ば言え。
しかし セキセイの成長は早い。しばらすると 中学生になっ
たようで 中途半端なエグエグだったもんが やがて胸の筋
肉は発達し、ついに餌を青い鳥ちゃんにゲロれるようになっ
てしまった。当然 ゲロった段階でそれまで いちゃついてい
た 青い小鳥ちゃんは「そんなの嫌〜〜っ」と泣きながら逃
げる演出は続いていたので 彼はゲロった餌が嘴から溢れ
出す直前で 飲みこむしか術がなかった。
で。飲み込んだら これがなんと 餌箱から食べたのと何故
違うんだ?と思うほどの美味しさだと彼は気づいたわけであ
る。
相変わらず 青い小鳥ちゃんは ゲロっても食べてくれない
でも 愛をゲロりたい衝動は彼を突き動かさずにはいられ
なくて。その結果。彼はゲロって すぐに自分で食べてしま
う、という癖がついたんである。時間がたって腐ったゲロ食
べるよりは おそらく なんぼかマシだろうさ。
とにかく 彼は恋することを開始した。一旦 点火したセキセ
イ恋心の炎は もはや消すことは出来ない。彼は一生 この
まんま突っ走っていくのみ、である。
もはや 彼のあふれる情欲は 若さで加速していて 無意
味にみなぎる衝動で 籠の中を転げまわり よじのぼり で
んぐりがえり…青い小鳥ちゃんも 決心する時が来たよう
である。
一日でたった十数分の逢瀬。でもその日、青い小鳥ちゃん
は 彼から離れようとしなかった。
「僕の愛を受け入れてくれよぉぉぉっっ!」
頭をぶんぶん上下に振りまわす愛の踊りで 小鳥ちゃんの
まわりを彼は踊りまくった。
「愛してるなら もっと踊って あなたの愛の深さを 私に見
せてちょうだいっっ!」
小鳥ちゃんは 踊りまくる彼の嘴をちょんちょんつつき 彼
の興奮を更にかきたてた(演出・セキセイの昼メロならま
かせてくれな飼い主)。
「僕の小鳥ちゃんっ!」
「私の愛しいあなたっ!」
スリスリスリスリスリ…以下 省略。これ以上の詳細は とて
も ここでは語れない(←おいっ)。そして 彼は「男」になっ
た(この場合の「男」とは自己完結したことが 基準となる
「男」のことある)。
ことが終った後、オスはメスに愛のゲロを贈るのが セキセイ
界のルールなので、彼もそれに従った。彼は信じていた。
「ことりちゃん 僕の愛の証しのゲロ 今日は受けとってくれ
るよね?」
「ゲロは やっぱり嫌〜〜〜っ!」
「なぜ、なぜなんだあぁぁぁ!?」
青い小鳥ちゃんは きっぱりゲロを拒絶すると また 逃げ去
って行ってしまった。この後に及んでどうして ゲロを食べても
らえないのか 彼はわからないまま 嘴からハミだしそうなゲ
ロを飲み込んだ。ゲロは やっぱり美味くて それを拒絶する
小鳥ちゃんが彼にはミステリアスで 更に気持ちは募ってい
った(思ったとおりの展開である、とつぶやく演出家・飼い主)。
初恋の青い小鳥ちゃんとの交際は順調だったが 元来、小鳥
ちゃんは「さえずる小鳥シリーズ」という人間のための置き物
なので 鳥かごの中に置くには あらゆる点で不向きであった。
鳥かごに入れるのは やはり いんこ用のおもちゃが具合が
よろしいのであって 見てくれは初恋の小鳥ちゃんに負けるも
のの 止まり木でユラユラ揺れるおもちゃいんこを色違いで二
個購入し 一つを彼のかごの止まり木に設置した。最初 未
確認物体出現にびびった彼だったがほどなく とても従順なお
もちゃいんこを あっさり愛し始めた。
初恋の小鳥ちゃんと違い こちらは ほぼ一日じゅう彼とかごの
中で過ごすので さしづめ本妻という位置付けであろうか。
気が強いのが特徴の本物のメスいんこなら、オスとカップルに
なった後 当然 気に食わないことがあれば オスいんこをどつ
きまわすので オスいんこは妻に気を使うようになるものだが
おもちゃいんこ妻は文句ひとつ言わない一途な妻なんであり こ
のような妻を持つと 夫というのは勘違いするものらしい。
更にこの勘違いの結果として その後 本物のメスいんことの
出会いがあっても 破局しやすいのである。コミニュケーション
の取り方がわからないからだ。
彼の場合、本物のメスセキセイとの出会いを 飼い主は予定して
いないので 一生勘違いしてくれていて 特に問題はない、との
認識でいる。
ま、確かに問題はないんだけどね…だいたい こういう流れは
人だろうがいんこだろうが 図に乗ってしまうといのが定石であ
る。
彼は 初恋の君とおもちゃ妻がいて 更にかごの中に設置した
鏡の中の自分の姿にも恋心を吐露していたにもかかわらず そ
れで飽き足らず、なんと隣のかごに侵入して おもちゃ妻と色違
いのおもちゃいんこまでくどき始めた。れっきとした浮気だ。
どちらのおもちゃいんこも こんな彼に何も苦情を申し入れもせ
ず、この状況を受け入れちゃったので 結果 彼はおもちゃ妻
と愛人をあっさり手中に収めたわけである。
流石に図に乗りすぎではないだろうか?と私は思った。
調子ぶっこきすぎるとロクなことにならんことを 教えねばなら
ぬ、と思った飼い主は 調子こいた彼の度肝を抜く行動に出る
ことにした。
つまり。
おもちゃ妻とおもちゃ愛人を 彼のかごに二つとも取りつけてや
ったのだ。
わはははは!こちとら セキセイの昼メロにかけては 薀蓄語
れるだけの経験だけは 山のようにあるんだよっ!
この異常事態なかごに 彼を放り込んだらば さすがの彼も一
瞬固まった。私には「うっ」と彼がうめくのがきこえたし。
「何を遠慮してるのさ?ほれ 両手に花で 色男はいいねぇ」
と私は 悪魔のような微笑で 彼を妻と愛人の間に誘導した。
間にはさまれた彼が窮屈そうに身をよじると 妻と愛人がユ
ラユラと揺れて
「ねぇ 私のこと 今日も好き?」
と両側からかわいらしく 彼にささやいた。混乱しつつも 彼は
妻に向き直ると
「勿論 好きだよ」
と言いながら妻の頭をカキカキすると 背後から
「ねぇねぇ 私も私も」
と愛人が甘えてくる。おっとしまった、こちらもフォローしないと
やばいぞと 妻から愛人に向き直り
「愛してるよ」
といつものように囁こうとする、とまた 背後から
「ねぇ あなたぁ〜〜」
と妻が背中を叩くので また 振りかえる。すぐに愛人が
「いやぁ〜ん こっち向いて〜〜」
…以下 延々繰り返しである。
彼は とても忙しそうで 状況の把握も混乱ぎみだったが こ
こで かごの外から ついでなんで初恋の青い鳥ちゃんも登
場させてやるなんて 私って演出の天才かもね、わはははは
「随分 おもてになってるご様子ね」
とじっとりと 鳥ちゃんが睨みつける。あわてた彼は
「誤解だっ!僕の愛は君のものさっ」
かごごしの青い鳥ちゃんに 彼はかじりついて 弁解をまくし
たてようとした。すると 背後で妻と愛人が一斉に
「私達への愛は?」
と悲しそうにまた揺れた。
「振り向いちゃいやっ!」
と青い小鳥ちゃん。
「ひどいわっ、妻は私よっ!」
と妻。
「日陰の身を耐え忍ぶ私を哀れに思わないのっ?
と愛人。
三羽が同時に彼に詰め寄った。
「う…」
こんな時、男に事態を収拾する能力なんてありゃしない(偏見)。
「うるさい…やかましいっ!」
ガゴン!ガゴン!あろうことか 彼は妻と愛人を嘴でど突きや
がった。
それじゃまるで暴力夫じゃんかよ…と演出家は予想しなかった展
開に 彼の壊れっぷりを眺めるしかなかった。
ほんと 男って男って どーしてこーなのかねっ?(偏見)
とにかく 壊れた彼を修繕せねばならぬ。妻と愛人達の間には
どうやら一定の距離が必要なようだ。
初恋の鳥ちゃんは即刻退場させ、受難の妻と愛人から 彼を
ひきはがし、定位置だった別々のかごに戻した。
妻だけになった本宅に彼を戻すと 先ほどの修羅場がまるでな
かったかのごとく 彼は妻に優しく求愛を始めた。
男って ほんとご都合主義なのねっ(怒)!(偏見)
いい気になりすぎた彼に少し反省を求めようと画策したのに 逆
に暴君いんこを誘発してしもうたのは 演出家としての私の敗北
であった。
昼メロいんこを演出しよう、なんぞと思ったのが そもそも間違っ
ていたのだ。
そうだ、そうなのだ、タイプ3欲情爆発タイプのいんこをコントロ
ールするなんて 無理な話だってのは 始めっからわかってた
はずなのにっ!それなのに また 間違ってしまったのね。
変いんこは 一生変いんこなんであって 安易な演出なんて通
用しないぐらい きっと一生変なのだぁね…(投げやり)
注意!これは 正しいいんこの飼い方から 激しく逸脱してい
るので マネしないでね(^^)b←おいおいヾ(−−;