昼メロいんこ



赤は 特別な色なの。
赤は 私そのもの。
赤は 私からの特別な贈り物なの。
だから 私が認めない赤は 許さない。

オカメの彼女は その日もボーッと店内を眺めていた。ここに来て随
分な期間がたって すっかり店の古株に仲間入りだ。毎日 誰かしら
彼女の前にたちどまって「かわいらしいんだけどねぇ、もうちょっと小
さい雛が欲しいのよね」と馴染みの店員に話しかけるのは すでに
お決まりであった。ポロポリ餌食べながら  内心 そうね、私ぐらい
になると「刷り込み」は無理だものね、私はあんた達を親と勘違い出
来るほど もう小さくないものね。私は独りで 餌をりっぱに食べれる
もの。そしてやがて 向こうの雛うじゃうじゃコーナーから「まぁ なん
てかわいらしい!この子!この子にするわっ!あなたっ、どうかし
ら?いい?あぁ、ありがとうっ」とかなんとか 騒々しいドタバタがあっ
て 小さな箱を持った女と(私をかわいらしいけどねぇと、そう、けど
ねぇ、と言いやがった奴だ)、新品のかごとおそらく餌の入った大き
な袋抱えた男がいそいそと 店から出て行った。今回も店員は上手
いこと言って 餌やおもちゃを山ほど売りつけたようだ。餌を食べる
のをやめて 彼女は鳥用おもちゃ売り場を眺めた。そしてまた 自
分の住処についている 古ぼけた鏡をのぞきこんだ。

かわいいけどねぇ、という女の声がこだまする。私は日々成長してい
るんだから 今さら雛に戻れない。じゃあ どうすれば いいというの
だ?かわいいだけじゃ もう駄目なんだ。そう、美しくならなきゃいけ
ないのだわ、と彼女は思った。でも、彼女は自分がまだ美しくないこ
とを知っていた。まだ私は雛毛なのだ。くすんだこの色では美しいと
は言いがたいのは 鏡を見れば よくわかる。でも やがて換羽す
れば 私は美しい成鳥に変身するのだ。私の赤いほっぺも…。換羽
前だからまだ小さくて色もちょっと、ぼやけているけれど。換羽がすめ
ば 艶やかに赤い頬が男達を魅了し、皆、私の前を素通りするなん
て失敬なことしなくなるのよ、彼女は本気でそう信じていた。

だから、ある日。
「まぁ かわいい」
と立ち止まったカップルが 変身前の自分を連れ帰る事になる覚悟
なんぞ出来ているわけがなかった。店員は言った。
「そうなんですよ、この子はもう独りで食べることが出来ますから、何
の心配もいりません。いや 実際 オカメを初めて飼う方が雛への給
仕が上手に出来ないと、店に駆け込んでらっしゃることも けっこう多
いんですよ」
「ええ、そうです、その通りです。確かに独り餌になると馴れるまで時間
がかかります。でも 馴れないこともないんですよ。ゆっくり 慌てず、
少しずつ、これがポイントです」
店員はここで満面の営業スマイルで 悩む二人に時間を与える。ここか
らが勝負だ。雛の時期を逃した売れ残りを押し付けるまたとないチャン
スである。
「オカメインコってのは 本来は丈夫なんですけどね、雛の時だけは 
ちょっと 病気になりやすいんですよ。いえいえ、決して弱いわけでは
ないんですが 何せ 初心者の方ですと 適切な処置をとる経験がな
い。だから せっかくの雛を落としてしまうことも あるんです。でも 独
りで餌を食べるようになれば その心配はなくなるでしょう。アドバイス
させていただければ、このぐらいの子が オカメ初心者の方に 本来
はオススメしたいんですよ。それに、馴れなくても この子の羽模様、な
かなか素敵でしょう。眺めているだけででも楽しい羽色なんですよ」
店員が押しまくっていた。オカメの彼女は びっくりして 一体何がどうし
たのか 理解できずに三人の人間が自分の前から離れずに あーで
もないこうでもないと言うのを 身を細くして固まってきいてるしかなかっ
た。

「ほんと かわいいわ」
女の人が顔をかごに近づけた。その唇の赤い色がオカメの彼女の瞳に
飛び込んできた。私のほっぺもいつか あんな美しい色になるのだわ。
彼女は女の人の唇をじっと見つめ続けた。ふっと女の人が横を向いた。
隣の男の人に あの赤い唇が語りかけている。
「あなた、この子 私と今 目があったわ。こんなふうに見つめられたら
もう置いていけないわ」
「君がいいなら、僕は反対しないよ。いい子だと 僕も思うよ」
そして オカメの彼女は この夫婦に飼われることが決定したのだ。
新しいかごが 自分のために選ばれていた。そして いつも見ていた お
もちゃコーナーからも何点か選んでいる。
彼女はカラフルなひもがうねうねした おもちゃを試してみたかった。でも
店員はそれをすすめなかった。彼女はちょっとがっかりした。それでも 
支度はどんどん進んでいく。餌もどっさり買わされたのだろうか、袋がは
ちきれんばかりになっていた。

かわいいだけじゃ売れ残るものなのだ、と思っていただけに この展開は
意外すぎて彼女は正直とまどっていた。環境の激変 新しい同居人、換
羽前なのに飼い主が決まっちゃたのも謎のままだし、いや、それよりも。
私はここでちゃんと生きていけるのか?不安だらけの彼女は 新しいか
ごの中 呆然と止まり木にしがみついているしかなかった。
新しい飼い主達は 彼女を急がせることはしなかった。ゆっくり慣れてくれ
ればいいよ、と彼女の背中を見守った。

彼女は 基本的に前向きないんこだったので 目の前にある状況を受け
入れるまでさほど 時間はかからなかった。新居(かごのこと)も気に入
ったし、かごの中に取り付けられた鏡も気に入った。お店にいた時には
何代のいんこが使ったんだ?ってな古ぼけた鏡だったが、今はピカピカ
の新品鏡である。
この家に来てから飼い主となった二人は 飼い主バカをおおいに発揮し、
彼女に「かわいいね、キュートだね」を連発してたので、彼女もお店で売
れ残ってた時の苦々しさから解放され、「私ってやっぱ かわいかったの
ねっ。私の前を通り過ぎた何人もの人間のが アホだったのね。オー
ホッホッホッ」と高笑いするまでになっていた。彼女の高笑いは飼い主に
は「ウキョキョ、ウキョキョ」と聴こえていたので、飼い主達は やけに機嫌
がいいなぁとは思ったのだが まさか ここまで高飛車な自信を育てつつ
あるとは 夢にも思わなかった。
そして更に 彼女の想いはますます暴走していくのだ。
今でさえかわいいわたくし、換羽して美しく変身したら 飼い主はまばゆい
私に きっと気絶してしまうに違いないわ、今はまだ くすんだオレンジの
ほっぺも 鮮やかな赤い色のほっぺになるんだわ。飼い主夫婦は共働き
なので 日中 彼女は一羽で留守番である。店にいた当時の人通りの多
いにぎやかさからすると とても静かで最初はちょっと寂しかったけれど、
鏡を眺めて刻一刻と近づく変身の時を夢見ていれば時間が飛ぶように過
ぎてゆく。気がつけば「ただいま〜」と買い物袋を抱えた飼い主が戻って
くるのだ。彼女は 鏡をうっとり眺めては換羽を今日か明日かと心待ちに
していたのである。

そして遂に換羽が始まった。んが、しかし。換羽は 彼女の想像していた
ものと全然違っていた。彼女としては スポットライトを浴びながら
「変身〜〜」と叫ぶとくすんだ羽がバサバサと抜け落ち、中から世にも美
しい成鳥した彼女が現れ 周囲から「おお〜っ」とどよめきの声が上がる
(←どよめくのは 飼い主夫婦及びその友人一同)ーってなことを好き勝
手にイメージしていたわけだ。ところがどっこい、換羽ってそんなにすっぱ
りさっぱりきっぱりしたものではなかった。みみっちく チロリチロリンと
羽が抜けてくもんだから 最初 彼女は換羽が始まったことさえ気づいて
なかった。しかも出てきた新毛は、サヤとやらに包まれて毛穴から たけ
のこのごとくのびてくるもんだから 痛いがゆくて仕方がない。あげくにツ
ンツンとサヤに包まれた新毛は おせじにも美しいとは言えず、彼女は
「話が違うじゃないっ!」とかごの中で怒り心頭であった。いや、誰も変身
が一瞬だなんて彼女に教えていないんじゃけどもさ。鏡に写った頭やから
だのツンツンしたサヤは見た目も不気味なら 感触も不気味で 彼女の
ご機嫌は最悪であった。飼い主夫婦も「換羽って 相当ストレスかかるの
ね」と心配そうに彼女を見つめていたが、彼女の本心までは見抜いてい
るはずもなかった。

そんなダラダラ換羽の最中に、飼い主妻は用事で二週間、家を留守にし
た。その間 彼女は飼い主夫に世話をしてもらった。仕事から帰宅すると
飼い主夫は かごから彼女を出して遊んであげた。ツンツンと不気味な
感触のサヤもほぐしてくれた。そのほぐしかたは驚くほど上手で 彼女は
びっくりした。なんせ 自分で毛繕いしていて痛くて「ぎゃあっ!」と叫んで
はむなしい気分にさいなまれていたからだ。ほどよく サヤをほぐしてもら
うと 彼女はお礼に 飼い主夫の背中によじのぼり、そり残したひげをツ
ンツンひっぱってほぐしてあげようとした。テレビに気をとられていた飼い
主夫は「いっで〜〜っ!」と言って頭を振りまわした。とても喜んでくれて
いる、と彼女は満足げに思った。…ので ひげひっぱりが 毎日の楽しい
日課に加えられることになった。飼い主夫にとっては 迷惑な話であった
が それを伝える術がなかったので 飼い主夫は耐えるしかなかった。
ちとかわいそうだが 仕方あるまい。
飼い主夫と二羽(っていうか二人?)の日々は楽しく過ぎていった。飼い主
夫は 彼女が満足するまで 遊んでくれた。邪魔する者のいない二羽(っ
ていうか二人)っきりの世界…。不快な換羽も飼い主夫と過ごす時間は
忘れることができた。大きな背中で過ごすのが大好きだった。背中にのっ
て 飼い主夫の顔をじっと見つめたり 楽しみのひげひっぱりをやったり
鼻の穴にくちばしをつっこんだりすると 飼い主夫は 「いてっ」とか「こら
やめろよ〜」とか「くすぐったい」とかと 彼女に愛の言葉をささやいてくれ
た(と 彼女には聞こえていた)。それは 飼い主夫と赤い唇の飼い主
妻がささやきあってる光景と重なった。あの赤い唇のかわりに 私には
赤いほっぺがあるんだもの。いつしか換羽が終わり、鏡の中に 鮮やか
な赤いほっぺと、ツヤツヤした羽に包まれた美しい女性が写しだされる
ようになっていた。幸せだった。最高潮に幸せだった。彼女の小さな心
に恋の炎がともった。

飼い主妻が用事を終えて帰宅した時、すでに彼女の中では 彼女は飼
い主夫と婚約最中のラブラブだったので 飼い主妻が帰宅したことを
受け入れるのに 数時間 彼女は固まって考え込んだ。これは一体 ど
ういうことか?しかも 飼い主夫も飼い主妻の帰宅を明らかに喜んでい
る。愛しいあの人が喜んでいるのだから、私もこの状況を受け入れる
義務があるのよね。でも、どうして飼い主夫は喜んでいるのかしら?ど
うしてかしら…?と、飼い主妻がかご越しに顔をにゅっと近づけた。
「ただいま、私のこと忘れちゃったのかしら?相当 緊張しているみたい
だも…ん?あらっ!いやぁね、あなた 餌入れが殻だらけじゃないの。
ちゃんと気をつけて 餌入れてねって 言っておいたじゃないのぉ。い
んこは食べないと すぐに体調崩すって 言っておいたでしょ?うわっ!
水入れにフンだわっ。あーもー、駄目駄目、早速 お手入れしなくっちゃ」
そして みるみる かごの中は掃除され 新しい餌が入り 水も替えられ
すっかり かごの中が快適になった。そうか、と彼女はようやく納得した。
飼い主妻は私のお世話係りなんだわ。係りが帰ってくれば飼い主夫の作
業は当然減るから 私との愛の時間を増やすことができる。彼が喜ぶの
は当然のこと、私にとってだって喜ばしいことじゃない。そういうわけで
彼女は大喜びで 飼い主妻の肩に飛び乗って「うきょっ」と機嫌良く鳴い
た。
「ようやく思い出してくれたみたいね、やれやれだわね」
飼い主妻は嬉しそうに 飼い主夫と笑いあった。彼女の心の中を知らぬ
が仏とは まさにこのことなり、である。

そんなある日、事件は起きた。大好きな鏡の前には小さな餌入れが付いて
いて、彼女はその餌を食べながら 鏡を覗くのを楽しみな日課にしていたの
だが、その餌いれに あろうことか「それ」が入っていた。
許せないっ!彼女は怒りでブルブル震えるのを とめようともしなかった。
「それ」は赤い餌だった。そう、赤だったのだ。

赤は特別な色なのに。
私のほっぺを美しく彩る色なのに。
鏡は自分の美しさを確認する場所なのに。
よりにもよって!
その神聖な私の場所に 赤い色が侵食するなんて 許せないっ!

彼女は躊躇しなかった。「それ」を餌いれから 全てかごの下に落とした。
餌の入れ替えは、飼い主夫婦のうち 妻の分担だったから 「それ」をこ
こにいれたのは 妻の方だ。確認すると 普通の餌箱の方にも「それ」が
混じっていたので 彼女は 目に付いた数個を下に落とした。しかし 問題
は餌箱の方ではない、と彼女ははっきり感じていた。「それ」を鏡の前に
入れておく、それこそが問題であった。これは挑戦なのだ、と彼女は思っ
た。私が美しくなるのに嫉妬しているからこそ、鏡の前に「それ」を飼い主
妻は置いたのだ。やはり 私のお世話係りで戻ってきたわけではなかった
のだ。
いんこの世界に倫理とか道徳なんて言葉はない。「欲しければ奪え」それだ
けだ。だから 飼い主妻は戻って来たのだ。飼い主夫を奪い返す、その為
に。奪われてなるものか!敵が叩き付けた挑戦状を 私は真っ向から受け
てやるわっ!
ポトリ。ポトリ。落とす音を確認しながら 彼女は「それ」を鏡の前から排除
した。全部 落とし終わると 気分もすっきりして鏡を見た。美しい赤のほっ
ぺの自分が そこにいた。赤は私そのものなの、彼女は鏡につぶやいた。
その夜、仕事から帰宅して 彼女の様子を見た飼い主妻は 驚いた。
「赤い餌が全部 かごの床に落ちているの。なんで赤ばっかりなのかしら?
赤はビタミン強化餌だって ペットショップで言うから せっかく買ってきた
ものなのにぃ〜」
そして、彼女はいんこ友人にこのことを尋ねてみた。友人は呑気に答えた。
「落とすのが 面白いんじゃないかしら〜?」
「確認の為に もう一度 赤い餌混ぜて 鏡の前に置いてみるわ」
と飼い主妻。
「今度は どうするのか 楽しみだね〜」
呑気な友人なんて 役立たない顕著な例である(呑気な友人=これ書いて
る張本人)。

翌日。彼女は当然のごとく 怒りに包まれて 鏡の前で 赤い餌をにらみつ
けていた。飼い主妻が再び挑戦状を彼女に叩き付けてきたからだ。飼い主
夫をとられたことへの恨みだろう。でも 飼い主夫は 私の方を選びつつあ
るのは間違いない。確かに まだ ちょっと煮え切らないように 飼い主妻
に気を持たせた態度でいるけれど、いづれ、私は実力行使に出てやる。
そうよ、卵をポロッと産んでやるのだ。いわゆる今はやりのできちゃった結
婚ってやつね。でも、出来れば 事を荒立てることなく 問題解決したいじ
ゃない。諦めの悪い飼い主妻に 彼女は苛立ちを覚えつつあった。
ポトリ。ポトリ。またポトリ。
静かな怒りが 餌を落とす音になって 部屋の中に響いた。鏡の前は綺麗
になった。しかし、苛立ちは収まらない。どうしてだろう?と下を向いて、落
とした赤い餌が目に飛び込んだ途端、彼女は 怒りが沸き立った。床一面
赤い餌が点々と模様のように 転がっていた。許せないっ!床に飛び降り
ると 彼女は 赤いそれをバリバリと噛み砕いて飲み込んだ。ちょっとだけ
気持ちがすっとした。ついでに 都合の良いことといえばいいのか、悔しい
ことといえばいいのか、この赤い憎き餌は 案外旨いことが判明。そうい
うわけで。彼女は バリバリと床に散らばった赤を全て 腹の中に入れて
やった。征服感と満腹感が彼女を満たし、そして 赤い餌のなくなった床を
彼女は爽快な気分で見回した。
と。いやだわ、まだ ポチっと赤いものが 床に落ちている。彼女は腹いっ
ぱいだったけれど そんなことにおかまいなしにそれを咥えた。途端に 不
気味な食感が口中に広がった。
「何よ、これーーっ!」頭を振り回して ねっちゃりしたそれを 飛び散らかし
た。赤い餌ばっか食ってりゃ フンの色だって赤くなる。赤い餌を消失させる
べく 必死に拾い食いしながら 彼女は赤いフンを何個も生産しては 床を
赤く彩っていたってわけだ。はっきり言ってマヌケである。しかし、彼女は
そんな論理なんぞ知ったこっちゃないわけで 赤い餌の合間合間に赤いフン
を口にしては かごの外まで飛び散らかせてゼェハァ 疲労困憊でぐったり
してしまった。
その日のいんこ友人達と飼い主妻の会話。
「赤い餌 嫌いなわけじゃないみたいで 皆食べてしまったみたいなの。あ
げくに赤いフンしてあらぬ方向に吹っ飛ばしているんだけど これって ど
ういうことかしら〜〜?」
「う〜〜ん、赤い餌の謎かぁ」
「まるで ミステリーの謎解きみたいよねぇ〜」
いんこ友人達は 次々に自説の謎解きを披露し、笑いあっていた。ほんっと
つくづく呑気な人々である。
とはいえ、飼い主妻はいっしょに笑いながらも 何かが違うような気がしてな
らなかった。女の勘である。

そしてそれは現実となるのだ。飼い主夫が出張で二日間 家を留守にした。
いつも遊んでもらう放鳥時間、彼女は異変に気がついた。私のダーリン
(←彼女の脳内ではすでに既成事実化していおった)がいないっ!どこな
のっ!二人の大切な時間なのに、どうしてなのっ?あなたっ!どこなのっ!
あなたっ!あなたあぁぁぁぁぁぁっ!!!
彼女の絶叫は「びょえ〜〜〜っ、ぎょえ〜〜っ、んぎゃ〜〜〜っ、ぎょーー
ーっ!」と部屋の外まで響き渡り、飼い主妻は 途方にくれてしまった。
近所から苦情が来ないかと不安になるほどの叫び声に 飼い主妻は彼女
にオロオロ話しかける以外すべはなかった。
「ねぇ、寂しいのはわかるけれど、私もいるじゃない?ね、遊びましょう?」
一瞬、彼女は飼い主妻を見つめ、ふっと目をそらすとまた
「いやぎゃ〜〜っ!ぎょえ〜〜〜っ、いやぎゃあぁぁぁぁ!!!」
と再び 愛しい飼い主夫を求め 鳴き喚き続けたのであった。飼い主妻は
悟った。彼女はマジだ。本気なのだ。飼い主夫を探し求め 鳴きわめくそ
の姿に 愛らしいいんこの面影はなかった。そこにいたのは「女」だった。

二日後、彼女の行動をぐったりしながら飼い主妻は 帰宅した飼い主夫
に報告した。
「あの子、あなたに恋しているわ」
「おいおい、オカメインコに嫉妬して どうするんだよ」
飼い主夫は 呆れたように軽く 飼い主妻の言葉を受け流すと
「お〜い、元気だったか、いっしょにテレビで野球中継見ような」
そう言うと 喜びで胸いっぱいの彼女をその大きな背中にのせて 野球観
戦に没頭してしまった。歓声とどよめきの中継を 飼い主夫は楽しみ
そして 背中の彼女もいっしょになって 鳴いて応援して楽しんだ。
飼い主妻は怒った声で 飼い主夫の背中に言った。
「私が嫉妬してるんじゃないのよ、問題はあなたの背中にのっかてる彼女の
気持ちの方なのよ!」
飼い主妻が 飼い主夫に軽くいなされているのを 彼女は気づかぬフリをし
ながら 心の中で ニタリとほくそえんでいた。
飼い主妻から 奪い取ったのを 彼女は確信したんである。

赤い唇はもう 気にならない。
彼は 私の赤いほっぺを 愛するの。
赤い餌も 気にならない。
だって 私の赤いほっぺが 世界で一番 美しいのだから。

それからまた 数日後。飼い主妻は また頭をひねっていた。
「どうして 赤い餌落とすのやめちゃったのしら?っていうか 随分 喜んで
ボリボリ食べてるわ。どうゆうことかしら?」
彼女は 赤い餌をボリボリ食べながら 内心つぶやいていた。体力つけてお
かなくちゃ。これから 私とダーリンの愛の巣を作って 卵うまなきゃいけな
いんですもの。ダーリンにも ちゃんと言っておかなきゃね。卵うんだら交代
で卵温めるんだから、今のうちにいっぱい食べて いっぱい大好きな野球
中継 楽しんでおいてね。結婚して 卵生まれたら 野球中継もしばらく 
おあずけなんだもの。愛してるわ、ダーリン。

この飼い主夫婦とオカメ彼女の今後は 一体どうなってしまうのか?それ
は誰にもわからない…。


今回のお話のモデルは mamiさん御夫婦とオカメインコのcocoちゃんです。
このお話を書くに当たり エピソードを使用することを快く了解していただい
たことに感謝します。mamiさんのサイトはこちらです。
ちなみに、実際のエピソード、1に対して この話は作者が妄想で10倍ほど
にまで膨らませまくっておりますので、ご了承下さい。
尚、いんこ友人ということで 実際にこのサイトで「赤い餌の謎」の話題で
盛り上ってくださった方々を 本文で「呑気ないんこ友人」とばっさり言いき
っておりますが なんせ これは昼メロいんこ、憎悪と嫉妬のストーリー
の中で いんこの言い分として「ほのぼのな事」は呑気以外 どう言えば
いいのさっ?とのこと、どうか ご了承下さいまし(^^;;。

 


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