飼い主のぼやき


クリスティ「ゼロ時間へ」・・・

 

ぼやきノート

アガサ・クリスティの推理小説に「ゼロ時間へ」と
いう作品がある。
何の関係もない人々が たぐりよせられるように
ある日 ある場所に集まってきて・・・そして 事件
が起きるのだ、それが ゼロ時間なのだ・・・
こう語った老弁護士が死んだ。それは 始まりに
すぎなかった・・・

私は アガサ・クリスティの推理小説が好きだ。何
度読み直しても 楽しい。筋は当然 わかっている
ので 寝しなのお供に最適のアイテムになっている。
「ゼロ時間へ」は なかでも お気に入りの作品であ
る。十数回目かの読後感も やはり同じ感想であっ
った。なんつーか タイトルからしていい。「ゼロ時間
へ」・・・くう〜 かっこいい〜〜。

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ダイエーがリーグ優勝を果たした時、女は たまたま
テレビで見ておった。別にダイエーのファンではないし
優勝セールも 近所にダイエーがないので 行くつもり
もなく 「王監督 よかったね」ぐらいで ぼうーっと 
画面をながめておった。

メールが着信していた。女の友人からであった。
心うきうきでメールを開く。
「うちのいんこが 雛々孵しました〜〜」
友人のところのいんこカップルが 紆余曲折の末
遂に 雛を孵したのかぁ!女 早速 おめでとう
メールの作成にとりかかる。
このカップルの旦那いんこは 女も知っている
ペットショップからやってきた。あの店のいんこ
が 友人のところへくることになった経緯も
知ってるだけに 女 感慨もひとしおであった。
「いいなぁ いんこの雛〜〜」

「明日 会社顔ださなきゃならん」
うかぬ顔で 男がいった。
「え〜 だって 祝日じゃない 最近 休日出勤続い
て 疲れてるんでそ?」
女 男を責めたてる口調で言い返す。それがまた
男の疲れを倍増させた。
「・・・んなこと ゆっったって」
ダイエーの優勝セール開催のCMが にぎにぎしく
テレビから流れておったが 2人の会話は どよん
どよんと落ち込んでいった。

ペットショップに新しいセキセイの雛が 入荷した。
1週間前 やってきた売れ残りの雛にとって どや
どや新顔が入ってきた時 窮屈になった不満と
擦り寄って温かさが補えるうれしさが 半々の複雑
な思いであったが じき馴れた。もう 寝ようっと。

翌日。
「ね いっしょに会社の近くまで 車に乗っていかな
い?」
男が女に提案した。
とにかく 疲れて腰が重い。なんぞ 腰をあげるき
っかけが 男は欲しかったのだ。
「近くのデパートで待っていてよ、帰り また いっしょ
に帰ってこないかい?」
「そーいえば。ダイエー近所だったよね?セールやっ
てるから 覗いてみようかな?」

ダイエーのセールは 人でごったかえしていた。
洗われる芋の気分で 人ゴミにもまれ なんだか
わからないうちに 買い物袋を下げた格好で女は
喫茶店に入ると コーヒーを頼んで ふうっとため息
をついた。
「私 何買ったんだっけ?」
袋には いんこ用のえさが 入っていた。
留守番いんこは まっくらの部屋で きっと うとうと
眠ってるに違いない。
と 電話が鳴った。
「会社出たから。道路で待ってて」
男からであった。

「そろそろ 閉店の準備しようか?」
「ちょっと 早いけどね。」
そんな会話の意味は わからないけど セキセイ
の雛は これから ガラガラ音がして しばらく
すると 真っ暗になって あとは 寝るだけなのを
経験的に知っていた。もう ここに来てから10日
ほどたつのだ。今日は 日中 餌もらってる最中
飛んでみたらば 気持ちよかったな。でも あわ
てて取り押さえられてしまった、ちぇっ。明日も 
飛んでみようっと。
そんなことを考えながら 雛は うとうと 眠りにつ
いた。。。。

「そういえば いんこ仲間の所に雛が孵ったんだ
って。 あっという間にいんこ屋敷になっちゃった
よ、友達のうち(笑)」
車に乗り込んだ女は とりとめもない話を 次々
に繰り出していたが ふと そういえば。
その旦那いんこの出身店が この近くだと 思い
出した。
「そうだ ね あの店 寄っていかない?」
女が言った。道沿いにその店はあったから 寄ろう
と思うのは 簡単だった。
「開いてるかな?うわっ シャッター下ろそうとして
いるな。」
男は 店に寄るつもりが 自分にあったのか なかっ
たのか 考える暇はなかった。
シャッターが閉まりかけているーその光景が 男に
車を停めさせたきっかけになった。

閉店の準備をしていた店の人が手をとめて
「いらっしゃいませ」
と声をかける。
入ってきた男女は ちょっと店内を見まわすとすぐ
「セキセイの雛 みせてください」
といった。
「こちらですよ」
店の人は 手元のダンボールにかかっていた布を
めくった。

せっかく うとうとしかけていた雛は 突然 また
明るくなったので びっくりした。
いつもの顔と 覗き込む 知らない顔。こーいう状況
は 何度も繰り返してきたので もう慣れっこだった。
次に布をかけられる時 空間が ちょびっと 広くなる
のだ。それだけさ。しかし せっかく 眠りかけてたの
に ちょっと 不愉快。

知らない顔が2つ こちらを覗きこんでは 何やら
逡巡している。
とっととしてくれよー こちとら 眠いんだよっ!雛は 
どんどん 不機嫌になっていった。
と その時。
「これにしよう。」
男の声がしたとたん 「え?」
捕まえられたのは 自分だった・・ぎょ・ぎょえ〜っ!!

何の関係もないことが からみあうように 一点に収束
していく。

「あ、ゼロ時間だ。」
選んだ雛(というには もう 随分 大きくなっておった)
を 店の人に 箱に入れてもらい 渡してもらったとき
女は クリスティーの「ゼロ時間へ」が 頭をよぎった。

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な〜んて 随分 ご大層に書いてみたけれど。(笑)
結局 うちにくるいんこ達って「ちょっとした気まぐれ」
で「つい」「その場の勢い」で きちゃう傾向らしい。
あんまり 計画的とはゆえないな(−−;。

まあ そんなわけで 我が家にセキセイの新入り坊主
がやってきた。
その夜 小さな籠に移された 小坊主は 肩で ハァ
ハァ息をして 不安のどん底にいたようだ。
当初、呼吸器系に疾患でも 持ってるのかと心配した
もんだが その後 すっかり 我が家の生活に馴れ
もといた2羽のいんこを 若さでねじ伏せて圧倒しまく
っているのを 目撃するに至って 単なる杞憂であった
ことが 証明されたんである(^^;。


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