いんこに はまる 旅路

STEP5 旅路の向こうに・・・


そんなこんなで いんことの生活に笑い 泣き そしておおい
に語ったその後。
景色が一体化していくのだ。
空気は存在を主張しないけれど 必ずそこにたたずんで
人に不可欠なごとく いんこは 飼い主との生活に一体化
して いて当たり前の風景になっていくのだ。
家族の動向を見守り続けた家の中 思い出の品々が取り囲む
空間に いんこは まるで・・・。
まるで、全ての物と一体化したよーな顔をして 知り尽くした
よーな顔をして 飼い主の横にちょこんといるのだ。

数年前。一人暮しのおばあさんを通じて高齢化社会を考え
るドキュメンタリータッチの番組が放映された。
老人ホームの空きを待ちながら 年金だけで一人暮しを
続けるおばあさんの生活をカメラは淡々と追っていた。
横に 1羽のセキセイが寄り添っていた。
取材機材に驚くそぶりもみせず、おばあさんのまわりを
パタパタ飛んで遊ぶ姿は とても自然でさりげなく・・・。
ハーモニーを奏でるがごとく お互いの動線がついては離れ
離れてはまた交差する。

いつか。おばあさんが老人ホームに入居する日がやってくる。
それは 大都会の片隅でひっそり暮らすおばあさんが待って
る日であると同時に セキセイと別れる日になるのだろう。
その後 おばあさんとセキセイがどうしたのかは わからない
でも。その瞬間、セキセイは とても楽しそうだった。
おばあさんとセキセイは まるで 1つの流れのよーに一体化
し 何の変哲もないアパートの1室は やわらかな日差しに
包まれ・・・すべてが融合し 優しい調べがきこえてくるような
気がした・・・・。
重い現実と楽しそうに飛び回るセキセイのギャップに胸が痛く
なりながら それでも なお。
おばあさんとセキセイが 私にはまぶしかった。
涙が出そうになるくらい まぶしかった・・・・。

いんこにはまる旅路の終着駅、途切れた線路の向こうに
見える風景は何なのだろう?
走ることをやめた時 初めて見える風景がきっとある。
肩にいんこをのせて 線路の先端からその先は のんびり
風に吹かれて歩いていこうか?近くの砂浜に降りて 打ち寄
せる波音に 耳を傾け聞き入っていようか?

走り続ける人生の中で 出会い 喜び 苦しみ 笑って 泣
いて 別れていった いんこ達の思いが 風になり 波音に
なり 肩にいんこをのせた自分のまわりを包み込んでいる
のに気がついた時。
まぶしかった あのおばあさんとセキセイのように 自分も
いんことハーモニーを奏でることが出来るかな・・・・?


ちょっと立ち寄った近所の人と ひとしきり うわさ話に花
を咲かせた昼さがり。話が途切れ 麦茶を飲みながら
ふと 何気に気づいたように
「そういえば いんこ飼ってるんだもね。あら?肩の上に
のってたの?最初から のっていた??」
「最初から いたわよ、ね?」
視線を感じて肩の後ろから ぬうっと顔をのぞかせて いんこ
は 目で「うん。」とうなづいた・・・・

いつか。こんな会話が出来る日がくればいい。
今は まだ。いんこにはまる旅路の途中なのだから 喜びの
倍以上間違っては涙し 後悔する日々が続いていくのかもし
れない。でも それでいいのかもしれない。
それら全てを両手でしっかり抱えて いつか着く終着駅
に降りたてばいい。その先に一体 どんな風景が待っている
のか 楽しみにしながら、ね(^^)・・・・。


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