てきとーどいんこ概論
てきとーいんこ経済論
| 1 需要はどこにあるのか? 諸君 久し振り! 初めての諸君 初めまして、去年から持ち越した見覚えのある 諸君 お久し振り。 年度を越えても 続行される講義なんて 前代未聞でかっこいい だろう(うっとり)。 え?去年中に講義終らんから 単位認定もしてもらえなかった? 当たり前だろう?講義は こうやって 今もりっぱに続行中なん だからな、単位を認めるわけにはいかないだろう? (新年度 休講続きでなんて楽な授業を選択したんだ、と思ってい た新顔にザワザワと動揺が走り始める。「え?去年の続きって 何さ?」「噂、ほんとだったのか」「…だから 選択するのやめよ うって言ったじゃん」「もう 講義選択変更も締めきり過ぎてるよ」) 強制しているわけではない、嫌ならやめてくれたまえ。じっとりとし た視線は引き続き組だね、それでも ここにいるのは意地なのか ねぇ? (見えない火花がバチバチと燃え、びびった大半の新顔が教室 から逃げるように退室した) ほんじゃ 今日の講義を始めるっ! さて。いんこを飼ったら 必然的に餌などのいんこ用食べ物を定期 的に購入することになる。 これはいんこ飼ってる間、継続的に発生する需要である。経済学 の見地からこれを専門用語でどー言うのかは あえて言及はしな いが。(って知らないんだろ?と心ん中でつっこむ学生達) んで、当然のことながら、ペットショップでは 継続して来店する購 買層に対して 戦略的にお客を魅惑するペット用品を取り揃え、 売上げアップに勤しむ。資本主義の基本である。 継続する需要が餌やら置き薬の類いであるのに対して、一方で ”なくてもいいけど あったら楽しいかも”と思わせるカテゴリーの 商品が要するに魅惑のペット用品である。いわゆる”いんこ用おも ちゃ”ってやつだ。これらがたくさん売れれば お店的にも嬉しい だろう、ってことね。 ところで 最近の消費者心理のキーワードって何だろう?当然この キーワードに沿った商品を提供すれば売れるわけだ。 私の出した答えは、”自然で優しいナチュラル志向”。くぅ〜、いい ねぇ〜〜。どうだ?異論のあるやつなんぞいたら挙手したまえ。 ふふふ、異論なし、のようだな。(当然 得意満面のでかい態度) それで、だな。このキーワードから導き出される”いんこ用おもち ゃ”ってどんなものかってぇと、優しいぬくもりの残ってる感じのす る無着色の木のおもちゃーっなんて、そのものズバリ!って感じ で良さげだろう? どだ、そこの君、いんこ飼ってるから しつこくこの講義に通ってる んだろう?君ならそんなおもちゃあったら 気持ちが揺り動かない かね? 私の話に肯定するのも嫌そうだが、図星なんで嫌でも肯定するしか ないっていう悔しそうな顔しているな、がははははっ(勝ち誇る笑い 声にびびった新顔数人がまた教室から逃げ出した)。 しかし、だ。店頭のいんこ用おもちゃコーナーをある日覗いた私は、 驚愕のあまり65秒間その場にフリーズしてしまった。 それは 明らかに私の揺るぎ無い理論を嘲笑しておった。 (しばし不気味な静寂) そのコーナーに燦然と置いてあったのは…置いてあったのは… (更に不気味な沈黙再び) …置いてあったのは…セキセイ…もどきであった。 (絞り出すように言った言葉から、この講師の悔しさが十二分に 伝わってきたので ここまで我慢して話をきいていた学生は、 喜びで胸が一杯になった(但し、あくまで胸の中でだけ)) それは、妙にリアリティーを追求しているにもかかわらず、微妙 に本物いんこと形の違う、プラスチックのいんこ型おもちゃで あった。止まり木に通してブラブラさせて使うようで セキセキも どきの下は輪っかとおもりがついている。 形の微妙さ加減が 違和感をかもし出し 私は一瞬クラリとなった。 更に変なのは、彩色だ。微妙とかそんなレベルではない。 全体は彩色しとらん素のプラスチィックの白色で、スプレーで 何故か!わざわざ!セキセイの顔の部分が赤色や青色なの だっ!セキセイの顔ってほとんど白か黄色なのに、コストかけ て色つけなくても地色の白でいいんじゃん?なんで わざわざ 青やましてやセキセイには存在しない赤色なわけ?なんで? そして頬毛がわりか何故か胸毛部分に大きな黒い点4つ。 私は思った。消費者ニーズは「自然で優しいナチュラル志向」な のは自明の理、これはその論理に真っ向から対立していた。 売れるわけがない、私は内心でつぶやき売り場を去った。 それからしばらくして。ある日のこと、帰宅した我が家のテーブルに ”それ”があって私はショックのあまりその場に腰を抜かしてしまっ た。 「な、なんでこんなものが、ここにあるんだっ!?」 家内が奥から出てきて 「うちのいんこ、喜びそうじゃない?」 とぬかしたんである。私は驚愕のあまり言葉を失った(ちなみに学生 はこんな人物に妻がいるということに驚愕の余り言葉を失ってしま った)。 「よ、喜ぶわけないだろがっ!」 「なぜそう言いきれるの?」 「なっ!だってこれナチュラル志向の商品ではないからだっ!」 「ほぉ〜、じゃきくけど いんこがナチュラル志向だと、いつ言っ たわけ?え?いんこがそう言ったわけ??」 「…」 「ナチュラル志向にこだわってるのは いんこじゃなくて あなた、 でしょ?」 今思い出しても あんときの家内は恐ろしかった、いや、そんな ことはどーでもいいことだ。 「喜ぶか否か、それはいんこが決めることなのよ」 「そ、そうだっ!いんこに決めさせる、望むところじゃーっ!(怒)」 2 購買客≠使用者の狭間 そして、一週間後、その”もどきおもちゃ”は いんこのかけがえ ない恋人になっていた。 変な胸毛がこれまた魅力倍増のよーであるのが むなしい。 うちひしがれる私の横で高笑いする家内と、世界は二羽のため♪ 状態しか目がいかないらしい我が家のアホいんこ…呆然…。 もしかしてうちのいんこの趣味が変なだけかも、と思ったら、きくと ころによると同じ状況が案外そこらじゅうで多発しているそうじゃ ないか。セキセイの好みって 理解の範疇を超えておる…(あん たに言われたくない、と残ってる学生は全員心ん中でつっこんだ) ペット用品メーカーにおける顧客とは、飼い主なのか?いんこなの か? 両方に満足できるものがそりゃいいんじゃろうが、案外そういう商品 って中途半端な印象になりがちなのだ。 しかるに、この”セキセイもどきおもちゃ”は使用者である所のいん こな希望に徹底的に答えた商品作りに徹したと言える。 一方で 飼い主である私の希望は、いまだナチュラル志向な”ぬく もりの木のおもちゃ”であって、実際 そういう商品も売り場に多く 並ぶようになってきているところを見ると、メーカーやショップの 「飼い主の要望対策」も進んでいるってことなのかもしれぬ。 んがしかし。我が家のいんこは 「鳥の要望に忠実な」商品を愛し 続けておるのは 紛れもない事実である。 かくのごとく、購買層と実際の使用者が一致しない結果、それぞれ 同じ目的でありながら商品が二極化している(多様化とはちょっと 違うと思われる)、のが実態ではなかろうか? そして私は この話で何故か思い出す、遠い子供の頃の夏の日 のことを。 舌が染まるほど真っ赤っ赤なジュース、キンキンに凍らせてズズ −ッとすするの美味しかったな…、で後で舌の色で親に買い食い したのばれていたっけな〜。(年齢ばれる話してんな、と心で毒づ く学生達) 今日の講義はここまで。では夏休みの課題”夏と私といんこ論” レポート50枚以上で提出。それじゃ また〜〜 (50、50枚っって言った!?驚愕の学生達の過酷な夏休みが 幕を開けたんである。) |