私の通っている学校では終業式に一斉に理系の生徒全員に、化学史を題材にしたB4のわら半紙5枚程度の英文が配られる。
それを全文訳し、英文でレポートを書くのが毎年恒例の夏季課題である。

終礼前、私が彼の机までいき課題を一緒にやらないかという同盟話を持ちかけた。中学の頃からこうやってきたからもう習慣といえるかもしれない。
無論、彼も快く了承してくれた。

そして彼との約束の日に、近くの図書館の自習室へと行った。
きっとこの図書館の少し強めの冷房はクーラー嫌いの彼には少しつらいだろう・・・。と考えながら自習室前におかれているソファに腰をかけた。
約束の時間まで、まだ時間は十分にある。私は鞄の中から課題のわら半紙を取り出した。
見出しに「Discovery of proton.」とかかれている。「陽子の発見」か・・・。
どうせ今年はアンダーソンやラザフォードのことをゴチャゴチャ書いているんだろうな。と考えていると向こうのほうから彼が汗を拭きながらやってきた。

 「ああこんな冷房がガンガンの中、汗を拭かないと風邪をひくよ・・・ああ寒いし暑いし。」

となんだか不機嫌のような、またその状態を楽しんでいるかのような言い方である。

そして彼もソファに腰をかけた。彼は私が手に持ってる英語のプリントを見たいためか寄ってくる。寄ると暑いので寄らないで欲しいのだが・・・。

 「ふぅん、Protonの発見・・・ヨウコさん話ね。あー、そうだヨウコさんで思い出したんだけど少し付き合ってくれるかな?」

ああ、マジックですね。本当に用意周到である。無論、見せていただく。私がokの返事を出すと彼はポケットの中から一組のカードを取り出した。

 「ここに一組のカードがあります。今からちょっとした実験をします。じゃ、このデック持って。」

そうして彼から私へと青色のカード一組が渡された。カードを持ちながら彼の次の指示を待つ

 「では、今からそのカードを一枚づつ表向きに置いていってもらいます。そして一枚好きなところだけを裏向きでおいてください。いいですか?」

そうして私が置き始めようとしたとき彼が

 「ああそうそう、私の予言カードは・・・ダイヤの3です。」

と私の目を見つめながら言った。

そして私はソファの前の机の上にカードを指定されたとおり置いていく、一枚一枚丁寧に。
もう少しで半分ぐらいだな、と思ったときに私は裏向きのままカードを一枚置いた。そしてどんどん置いていくがダイヤの3は出てこない。
私が裏向きに置いたものが本当に彼の予言どおりダイヤの3なのだろうか。

そして全てが配り終えた。ダイヤの3は結局出てこなかった。

彼はニコニコしながらデックを引っくり返しリボンスプレッドし、一枚だけ表向きになっているカードを示した。

それは紛れもなく赤いダイヤの3だった。

彼に私の行動が読まれていたんだろうか・・・。

 

 「あー寒い。こんな中じゃ英和辞典も陽子も電子も動きが止まってしまうわ・・・ねえ、僕のうちでヨウコさんの訳をやらない?」

 

私には図書館の空調よりも彼のヨウコさんネタのシャレのほうが絶対零度級に寒いと思った。

 


商品情報

商品名:プロトンデック

 

発売元:ミスターマジシャン

値段:2000円

 

 

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