私はただぼんやりと星を見つめていた。別に天体観測が趣味な訳ではない。ただやることがないから空を見てるだけだ。でも、そんな理由で星を見るってのも決して悪くはないだろう?
実は今、私と彼の二人で某ダム近くのキャンプ場にキャンプに来ている。
私はキャンプなんて小学生ぶりのことで、仕度にしろテントの設営にしろ要領を得なかったのだけども、彼はまるでボーイスカウトに入っていたかのようにテキパキと仕事をこなしていった。
こういう相反する性格だからこそ互いに惹かれ合うんだろうか?まぁ彼が私のことをどう思っているかは知りはしないけれども……。
『ねぇ!ボクのことどう想ってるの?』と思い切って聞いても気まずい誤解を産むだけだろう。そして、こういった噂はエーテル中を伝わる光の波よりも早く伝わるものだ。
「どしたのよさ」
とTシャツの上にオックスフォードシャツを羽織った彼がふらりふらりと私に近づいてきた。その姿を見ると、まるで彼の骨盤は豆腐で出来ているのかと疑いたくなる。その所為で背骨が固定されていないのだ。
「何してんの?」
『星見てんの』と我ながらあさっりした答え。
「ふーん。そっか星ねえ……。あっ、そだそだ。周りに聞えちゃダメな話だからちょっと耳貸してくれる?」
何々?と素直に彼の言うことに従ってみる。
「あのさ…今ゴム持ってる?」
……………え。……気まずい“誤解”じゃなく気まずい“事実”だったのね…。
「無いのー?ないと出来ないじゃん……」
―出来なくて良いのですよ…。
「…あやとりが」
………。…私はポケットの中を捜したが輪ゴムが一本も入っていなかった。まあ普通は入っていない。そのことを彼に伝える。
「そっか、それならあれでいいね」
と彼はテントに向かい、外に置いてあるクーラーボックスの中から米の入っている袋と野菜の袋を取り出し、その袋を縛っているゴム2本を外した。
びよーんびよーんと二本の輪ゴムを伸ばし遊びながら、そして豆腐の骨盤でふらりふらりとあの独特な歩みで戻ってくる。
「じゃあ見てて」
と言うと彼は普通の茶色い輪ゴムと赤い輪ゴムを絡ませ左手の親指、人差し指、そして中指にかけた。
そして右手の中指を茶色のゴムに引掛け引き、そして人差し指でも同じようにゴムをとる。
「星はいくつある?」
あっという間に一つの大きな星型が出来た。
そして彼の右手はまたゴムをいじり始める。
「星はいくつある?」
大きな茶色の星の中に赤色の星が出来たのだ。うへぇーと思って見とれていると彼はその表情を知ったからか、急ににやにやとしだした。
「じゃ見ててね」
と彼がいい、彼はその星から右手の人差し指、中指を抜いた。それと同時に左手の人差し指も器用に外し、その指でゴムをピンピンッとはじくと親指と中指に掛かる茶色のゴムに赤色の星が現れた。
彼は星型となった赤い輪ゴムを外し私に手渡した。
「これを全てのラバーに捧ぐ」
いつもは受け付けられない、こんな臭い台詞も案外すんなりと受け入れられる。ここが月明かりの下だからだろうか?
それにしてもloverとrubberか。ハリネズミのジレンマみたいなものかとくすりと笑う。
彼のほうを見てみると、じっと天を仰いでいる。……StarGazer
私も空を見上げる。どうやら今年は良い夏になりそうだ。……そう、まだ夏は始まったばかり。
商品情報
商品名:スターゲイザー
発売元:ミスターマジシャン
値段:2000円
※上の画像の絵はケン氏作