9/3 君はいづこへ…
きゃぁ〜っ!
キッチンから、突如聞こえてきた奇声に、
心臓を素手で掴まれたくらいにビックリして、
キッチンに駆け込む。
どうしたっ!
最初ゴキブリでもでたかと思ったが、
3年暮らしていて、
一度もお目に掛かったこともないし、
第一、まる子が、
ゴキブリごときで騒ぐわけがない
ので、
よっぽどのことが起こったのだろう。
見ると、ガスレンジの前で、
彼女はボォ〜然としていた。
目の前には、小さなフライパン。
その中には、朝食用に焼いていただろう、
ベーコンエッグ。
なんの変哲もない、
フライパンだし、ベーコンエッグだし。
?
どうかした?
あまりにも普通の光景なので、
ますます謎は深まるばかり。
問いかけに答えもせず、
放心状態で、フライパンを見つめるまる子。
ボクも吸い込まれるように、
小さな、小さな、フライパンを覗き込むと…
あっ、
殻が入ってる。
そこには、割りたての殻がまるまる半分、
で〜んと乗っかってた。
なぁ〜んだ、殻が入っちゃっただけじゃん、
大げさだなぁ。
そんなもん、とっとと取ればいいだろ、
な、
カリメロ君。
取り除いた、玉子の殻をまる子の頭に乗せて、
キッチンを出て行こうとすると、
「入ってない…」
と、まる子がつぶやいた。
え?なんか言った?
「入ってない!」
あんだって?
「だから、入ってないのっ!」
何が?
「黄身が」
うっそー!
話には、聞いたことがあるけど、
実際にそんな玉子に出会うとは、
想像ダニしてなかったよぉ〜。
と、悔しいのと嬉しいのの半々の気持ちで、
再度フライパンを覗き込む。
…
ほんとだぁ。
こんなことって、あるんだね。
こんなことって、あるんだね。
すごー。
…
待てよ。
なんか変。
…
白身もホトンド無いじゃんか。
さては、
全てはフライパンの下に…。
ない!?
無いぞ!
そんなことって、あるかいな。
そんなことって、あるかいな。
うそー。
…
消えたのである。
殻を残して、何もかも。
まさに、いるーじょん。
プリンセス、まる子ぉ〜。
である。
観客の割れんばかりの拍手を受けて、
キッチンを後にするまる子。
彼女と入れ替わりで入ってきたのは、
あの、
マギー司郎。
「あのね、さっきのはね、手品でもなんでもないの。」
「えっ?なんでかって?」
「だって、彼女、」
「ガスレンジの中に玉子
落としちゃっただけなのよね。」