傷
大切な人を失った時、どうなるのか考えるだけでおかしくなりそうだった。
動きたくない。何もしたくない。でも、自分の部屋にいたくない。
まわりをみれば、視界に入ってくるのは貰ったぬいぐるみや想い出
のつまったものばかり。ベッドに入ると彼の言葉や笑顔が哀しい程
鮮明にフラッシュバックしてきて、どうしようもない。
さっぱりしようと思い立ってシャワーを浴びても、鏡に映った自分
の身体には彼が残した感触が残っていてどうしようもなく泣き崩れ
る。あたしの意識はいつも彼を探していて、あたしの身体はいつも
彼の体温を求めている。もうどうしようもないくらいあたしは彼の
色に染め上げられてしまった。
もう離れないって何度も約束した。ずっとずっと好きだよって、だ
から安心してねって言ってくれた。いままで彼が言ったフレーズが
次々に頭の中で何度も響いて、遠ざかってく。彼といた日々が泡の
様に消えていく。何かしていないと、とたんに涙が溢れてくる。
どうして、どうして、何故?
何のために二人で頑張ってきたのだろう。こんな結末になったら、
全然意味がないわ。ただ、勉強をするために一緒に居たの?
長い長い幻...。出口の見えない長い迷路。何処で迷ったの?
あなたは何処へいってしまうの?あたしを置いて、何処に消えてしまうの?
二人でいた日々は本当に素敵な毎日だった。傍にいるだけで幸せだった。
人を愛することはどうしてこんなに素敵なんだろうって、
心からそう思った。あなたもそう思っていると信じてた。
やさしい彼、甘える彼、笑った彼、真面目な彼、男らしい彼...。
全部知ってる、あたしの大切な彼。あたししか知らない彼。
もう取り返しの付かない深い溝なのかしら。
埋めることのできない深い深い溝...。
これから新しい恋をする気にはならない。
我儘かも知れないし、勝手だし、おかしいと思うかも知れない。
でも、あたしの身体に深く深く刻み込まれた彼のしるしは、もう誰にも消せない。
永遠に。