春 望

〔説明〕
757年春、長安に拘禁されていた時の作。荒廃した都にも、また春がめぐってきた。
国敗れて山河あり、
城春にして草木深し。
時に感じて、花にも涙を灌ぎ、
別れを恨んで鳥にも心を驚かす。
烽火 三月に連なり、
家書 万金に抵(あた)る。
白頭 掻けば更に短く、
渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す。
国都は破壊しつくされて、昔の姿をとどめているのは、山河だけだ。城内にも春がめぐってきて、いまや草木がこんもりと
生い茂っている。この先行き多難な時局を思うと、美しい花を見ても涙がこぼれるし、親しい人々との別れを嘆いては、鳥の声にも胸騒ぎがする。
のろしの火は三月にわたってもやまず、家からの手紙は万金のねうちがある。白髪頭は掻けば掻くほど短くなって、
もう簪(かんざし)も挿せなくなりそうだ。
国都;長安を指す