「説明」

(江楼にて感を書す)
川のほとりの楼に登って月を眺めつつ、感慨を書きつけた詩。「江楼旧感」となっている本もあり、それならば思い出にふける 意味となる。
全体に去った人をしのぶ心が表れており、それは作者の亡き愛妾をさしているのではないかという説がある。
作者ははじめ、せつ西(揚子江と銭塘江の下流に挟まれた地方、ここでは恐らく今の江蘇省鎮江をさす)に住み、一人の愛妾を持って いたが、
受験の為都へ登っている間にこの地方の長官が彼女をみそめ、自分の屋敷へ入れてしまった。
これを聞いた作者は悲しみに絶えず、一首の詩を作って嘆いたが、長官もそれを見て感動し、妾を長安へ送り届けた。
再会した二人は抱き合って泣いたが、二晩のうちに女は死んだ。
作者は一生の間この女を思い続け、臨終の床にも女の姿が 現われたと伝えられる。


独り江楼に上れば思いびょう然たり
月光は水の如く水は天に連なる
同に来って月を弄(もてあそ)びし人は何処ぞ
風景は依稀として去年に似たり

ただ一人、川辺に立つ楼に登れば、思いは遥かな空へと馳せて限りもない。
月光は水の如く冴え、川の水は大空へと続いて 流れ行く。−−−一緒にこの楼へ登り、月を眺めた人は今はどこにいるのであろうか。
風景だけはどうやら、去年と同じように 見えるのだけれども。