「説明」

この詩は上元元年(760)の春のある日、諸葛孔明の廟を訪ね、孔明を懐かしんで作ったものである。
前半は叙景で、三句目の 「自」と四句目の「空」は、人間世界とはかかわりなく、季節のめぐるさまを示し、後半への布石となっている。
後半は 人間の歴史のはかなさを述べたもので、孔明の事跡と、業半ばにして、世を去った無念さをうたう。

丞相の祠堂何れの所にか訪ねん。
錦官城外 柏森森
階に映ずる碧草自ずから春色
葉を隔つる黄り むなしく 好音
三顧頻繁なり 天下の計
両朝開済す 老臣の心
出師 未だ捷(か)たざるに身先ず死し
長く英雄をして 涙襟 に満たしむ


蜀の丞相諸葛孔明の祠堂はどこに尋ねたらよいのだろうか。錦官城外、柏の木々がこんもりと茂っている所がそれだ。 祠堂の階段に映える緑の草は、春が来るに任せて美しく萌え葉かげの鶯は聞く人も無いままに、美しい声で啼いている。
昔、蜀の劉備は三度も孔明を訪ねて天下を安定させる策を問うた。孔明はこれに心を動かされて、劉備・劉禅の二代に仕え、 創業、守城にと老臣のまことをつくした。
しかし、魏を討とうと兵を出し未だ戦いに勝たないうちに、彼の命は尽きてしまい 長く後世の英雄たちに涙を流させ、襟をぬらせることになった。