送杜少府之任蜀州

〔説明〕
(杜省府の任に蜀州に之くを送る)
杜省府という人物については全く分からない。省府とは県の尉(検察・警察を指揮する職)
を呼ぶときに使う言葉。
蜀州は今の四川省にあるが、行政区画としてのこの地名は、王勃の死後暫く経ってから作られたものらしい。
「蜀川」としている本もあるが、これも正式な行政区画の名としては用いられなかったようである。
ともかく杜某という人が
蜀州の地方の県尉に任命され、任地へ出発するのを見送るにあたって作った詩である。
この赴任は、杜にとっては気の進まぬ
ものだったにちがいない。詩の中には彼の心を慰める気持ちがこめられている。
城けつ 三秦に輔たり
風煙 五津を望む
君と離別の意
同(とも)に是(こ)れ官遊の人
海内 知己を存せば
天涯も比隣の如し
為す無かれ 岐路に在りて
児女と共に巾をうるおすを
この長安城の宮殿はひろびろとした三秦の地方を従えてそびえ立つ。そこから私たちは、風と霞に隔てられた五津のかなた
ーーーー君の旅行く蜀の空を望み見ている。
ここで君と別れる私の気持ち、それは口に言わずとも君は分かってくれるだろう(同様に
、去り行く君の心も私にはよく分かるのだ。)君も私も、ひとしくふるさとを離れて流れ歩く役人暮しの身なのだから。
しかし、広い国の中に本当に自分を理解してくれる人がある限りは、たとえ空の果てに身をこうとも、隣り合わせに住んでいるような
もの、、互いの気持ちは何の隔ても無く通いあうのだ。
この別れ道に立ってわが身の上を嘆きながら、女子共のように袖を絞るのは
もうやめようではないか。
《備考》 三行目の「海内・・・比隣」は、よく「励ましの言葉」として用いられる。