パリ放浪記6
目次
本日はきのうおとついと行けなかったオルセー美術館へ。
例によって、少し遠い駅で降りてそこから歩く。アンヴァリッドからセーヌ沿いにオルセーへ。
ホテルからブラブラ歩いている途中の広場でちょっとした手洗い場のようなものがあって、そこでユキオさんは水を飲んでいましたが何ともなかったようです。
パリの水は不味いし石灰分が多いから日本人は絶対生水を飲んだらいけないってのが定説のようですが、パリの人はわりと平気で水道の水を飲んでいるようですね。まぁ、実際不味いので勧められたもんじゃありませんが、そこは汚水の都大阪もさして変わった事情ではなく、そんな神経質になる必要もないのでしょう。
でも、広場の水を飲むのは、僕もちょっとどうかと思った(笑)。
で、オルセーに到着すると、持ち物検査待ちで、いきなり長蛇の列。日差しは暑いし、なかなか列がはけないので、美術館に入る前に体力消耗してしまいました。
中に入ると、これまた広い美術館ですが、さすがにルーブルほどということもない。これなら何とかまわれそうだ、という変な安心感が(笑)。
ユキオさんと夕方ごろにロダンの彫刻前で待ち合わせをして、別行動に。
先日ユキオさんに買ってきてもらったオルセー美術館のガイドを手に、いざ出陣!
ルーブルほどではないとはいえ、かなり広いことには違いないので、美術館をまわる前にガイドを買っておくのもよいかもしれません。それぞれの絵について知りたい時は物足りないかもしれませんが、僕みたいに迷う人には便利な地図も載っているし(笑)、インデックスも見やすいのでお勧めです。
僕がまず行ったのは、1階にあるモローの部屋。ここにはモローの作品が三つ展示してあります。
ひとつは『ガラテア』。
今から6年前、中学生の時に京都でやっていたギュスターブ・モロー展に行って、その衝撃以来、僕はずっとモローの絵を愛しているのですが、そのときにこの『ガラテア』と非常に似た構成の『ガラテイアとポリュフェモス』という水彩画を見ました。今にして思えば、あんな素晴らしい作品を集めたモローの展覧会というのは、少なくとも数十年は日本ではないのでしょうね。
(海外でのモロー展というのは、1974年にロスとサンフランシスコで、1994年にメキシコで行われていて、日本では1964年と1995年に2度も行われているのは、日本人としては嬉しい)
ガラテアに片想いする一つ目の巨人ポリュフェモスを、モローは三つ目の男として描いています。海のニュムフェであるガラテアの身体にまとわりついているのは、細密な海の無脊椎動物や海藻たちで、その透明感と繊細さが素晴らしい。
実物を見ると、写真よりも「乳白の娘」という意味の、ガラテアの白い裸身が暗い画面にくっきりと浮かび上がっています。
ユイスマンスは今は残念ながら失われてしまった『ヘレネ』(『ガラテア』と共にサロンに出品したとされている)と、『ガラテア』を、阿片吸飲者の頭の中に浮ぶ夢幻境と評していたのを思い出す。
二つ目は『イアソンとメディア』。
イアソンが王女メディアの魔力を借りて怪物を倒したばかりの場面で、足元には鷲の姿をしたグリフォンが殺され、肘に蛇を巻き付けたメディアがイアソンを見つめている。背後に飛びかう極彩色の鳥たちや、柱を飾り付ける宝石類などの装飾性が素晴らしい。この絵をじっと見ていると、だんだんイアソンの顔が女の顔になり、メディアの顔が男の顔になってくる。メディアの魅力と、それに暗示される暗い未来の予感。
モローが書き残したイアソンについての記述。
「英雄の心はその若さのただ中にある。若さ、それは戦争のファンファーレのように響きわたる。獲物も栄光も、愛すらも、彼のためにあるのではない」
最後に『オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘』。
これはもうあまりに感激して動けませんでした。素晴らしい!(こればっかり言ってますが)。
禁を破って黄泉の国で振返ってしまったオルフェウスは、女たちに八つ裂きにされて死んでしまう。そのバラバラになった身体は川を流れ、彼女は竪琴の上にオルフェウスの首を拾い上げ、優雅に首を傾けてその首を見つめている。
(後日、モロー美術館へ行った時にこの習作を何枚か見ましたが、この首の傾きにもモローは相当こだわっていたことがよくわかる。姿が全く同じで、傾きだけの違うものがいくつもある)
宗教的ともいえる静謐な雰囲気と、全体的にたちこめている暗鬱さ。
この部屋から出て裏手ぐらいに、エミール・レヴィの『オルフェウスの死』があります。
これもまた女たちに八つ裂きにされるオルフェウスをテーマにしていて、こちらはモローの静謐さとは逆に、動的な画面。モローがサロンに『オルフェウス』を出品したのと同じぐらいだから、当時オルフェウスの死というのは画家の好むひとつのテーマだったのでしょう。
この絵もすごくて、オルフェウスは本当に八つ裂きにされています。女たちに鞭打たれ、鎌で首を切られようとしているし、それに重なるようにして影からひとりの女が手を差し伸べているから、あ、助けようとする女の人もいるのかな、と思ったら、この人もオルフェウスの首に手をかけそこからは血がダラダラと。オルフェウスは地面に顔をつけてうなだれ、竪琴の弦は切れて、桂冠はしおれているし、さんざんです。でも、おもしろい絵ですね。
モローの部屋の隣にある、ピュヴィス・ド・シュヴァンヌの部屋に行き(彼の絵を直接見たのは始めてですが、素晴らしかった)、ドガの部屋、折衷主義のけったいな日本の仏壇みたいな箪笥を見て、パリの街をガラス張りの足元の下にミニチュアで作ってあるのはすごくおもしろかったけど、微妙に怖くてその上を歩けず、ドーミエの部屋でひとくさり笑い、アングルの部屋(『泉』を見ることができます。素晴らしい!)、ドラクロワの部屋を見てまわり、モネやマネなど印象派の部屋を見ている途中で時間切れ!
合流場所へ行くと、ユキオさんは数日前に来てるというのもあるけど、ほとんど見てまわれたそうな。うーん、僕は1階部分も全部見終わってないというのに。これじゃあ、予定が何日あっても足りないかもしれないので、もう少しペース配分とゆーものを考えた方がよいのかも。
ミュージアムショップで、僕もオルセーのガイドを買い、絵葉書や、中世モチーフのぬり絵をお土産用に購入。あとドガの踊り子の操り人形という変なものもあったので、これもお土産用。
少々美術館疲れしてしまったので、外に出ると非常に気持ちがいい。
メトロでサン・ルイ島の近くまで行き、ベルティオンでアイスを食べる。さすがにものすごい行列ですが、おいしい。ベルティオンのカフェもあるようでしたが、こちらは閉まっていました。
セーヌ右岸に移動して、たまたま入ったカフェで食事。フルーツサラダにヨーグルト、パンとジャム食べ放題。ジャムジャンキーの僕には嬉しいメニュー。
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