パリ放浪記7


目次

本日は中世美術館(旧クリュニー美術館)へ。
ここでのお目当てはもちろん『貴婦人と一角獣』タペストリーです。

きのうのオルセーではずいぶん並ばされたので、今回は朝早くから行動する上に、いつもの遠い駅から歩くのもやめることに。ところが、結局メトロを乗り過ごして一つ遠くの駅で降りてしまい、そこから歩く。何をやってんだか。とはいえ、別に中世美術館は行列なんて全然できていませんでした。
(ところで地下鉄には日本みたくうるさい車内放送がなくていいのですが、ぼんやりしてると乗り過ごします。そのかわりというか、時々楽器をかかえた人が入ってきて、おもむろにアコーディオンやらトランペット、バイオリンなどを勝手に演奏し、勝手に金を要求してくるのは、かなり迷惑です。なぜかみんな一度は『悲しみの天使』を演奏します)
で、MAUBERT MUTUALITEの方からクリュニーに向かって歩いていくと、ちょうど美術館の裏手に出て、そこから裏庭に入ることができます。ここは小さな公園兼、ちょっとした庭になっていて、たくさんの薬草ハーブ類が植えられています。ちょっとした『薔薇の名前』の世界で楽しいです。それに公園に置いてある中世モチーフの乗り物も可愛らしい。
でもここからは美術館の方には入れないので、いったん外に出る。

門をくぐると、そこは中世の世界。むきだしの石の建築と、古びた井戸とが、ここがパリの都心なんだということを忘れさせてくれます。
ここは一応美術館とはいうものの、THERMES DE CLUNYというぐらいで、元々はローマ時代の共同浴場があったところ。その浴場あとに美術館が建っています。
地下に降りていくと、その浴場跡を室内から見ることができます。僕が行ったときは工事中で、本当にただの工事現場みたいでした。他にもこの美術館の中にはひんやりとして、人気もなくて、陰性植物みたいにぼんやりできるちょっとした場所がたくさんあって、そんな場所からひとりで中世の棺を見つめていたり、窓越しに車通りの多いパリの街並みを眺めてみるというのも、なかなか楽しかったです。

さて見たかった『貴婦人と一角獣』のタピストリーは特別展示室にあって、円形の暗い部屋に6枚のタピストリーが取り囲むように並べられてあります。
色彩が思った以上に鮮やかで、特に『わがただひとつの望みに』のテントの青色が美しかった。これをじっくり眺めてから、嬉しくなって、ミュージアムショップで『貴婦人と一角獣』のガイド『LA DAME A LA LICORNE』と、中世美術館全体のガイド、絵葉書、ブックマークなどを購入。タピストリーと同じ柄の、ウサギ模様のクッションカヴァーが可愛かったので、それをお土産用と、あと組み立て式『貴婦人と一角獣』という変なものもあったので、それもお土産に。(そういえばサン・シャペルでも「組み立て式サンシャペル」が売っていて、思わず買ってしまった。どうやら組み立て式に惹かれるらしい)

少し前後しますが、夜ホテルに帰ってからこの『LA DAME A LA LICORNE』を読んでみる。
『貴婦人と一角獣』のタピストリーは全部で6枚あって、5枚が5つの感覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚を表し、残る一枚が『A MON SEUL DESIR』で「わがただひとつの望みに」、この一枚を最初の一枚と見るか、最後の一枚と見るかが問題なのだが、このガイドでは完全に最後の一枚と見る説をとっているようだ。それはギリシャ哲学に基づいた考え方で、悪い感覚に起因する情念から自由にならなければならないとし、最後のタピストリーの貴婦人は、自分のネックレスを宝石箱に戻し、5感を抑え、虚飾を捨てるという意味にとるらしい。確かに、6枚目を見ていると、貴婦人の動作からネックレスを小箱から取り上げていると見るのは不自然なのかもしれないが、とすると他の5枚の美しさや優雅さが説明できないような気がして、非常に気持ちが悪い。
というか、展示室が円形になっているので、僕はほとんど無意識に『わがただひとつの望みに』を最初の一枚と見て、そこから他の5枚を順番に眺めていました。結局、この最後の一枚については、決まった解釈がされていないために、こんな配慮もされているのかな、と考えていましたが。他にこのタピストリーを見た方はどう思われたんでしょうか。少し興味のあるところです。

******

クリュニーから出て少し南に下ると、このあたりは学生街ということもあって、街頭に並ぶ店にも活気があっておもしろそうな店ばかり。それにサンミッシェル通りの界隈には、如月さんに教えてもらったPUFやその他本屋もたくさんあるとのことで、実に楽しみです。
ただし今日はユキオさんがサンジェルマンデプレ方面で買い物もするので、PUFは明日ひとりで来ることに。場所だけ確認して、楽しみは明日に引き伸ばしです。

クリュニーからサンジェルマンデプレは歩いて10分ぐらい。サンジェルマンデプレの方には有名ブティックが集中していて、なんだかものすごい一画です。この日はユキオさんの買い物熱が僕の方にうつってしまったのか、僕も思わぬ買い物をしてしまいました。
腕時計を日本に忘れてきたので、今まで待ち合わせの時間などは道行く人に時間をききまくってしのいでいたのですが、それも面倒なのでスォッチで時計を購入。それから、カンペールではきやすそうな靴を見つけたので、それも思わず買ってしまう。フランスにまで来て、よりによってなぜスペインブランドのカンペールなのか(笑)。でもこっちでもずいぶん人気があるようで店の中は人でいっぱいでした。値段は日本で買うよりも少し安い・・・のかもしれないけど、そんなことはどうでもいいかもしれまへん。まさに衝動買い。
店はいちいち全て覚えていませんが、買い物をしながらポール&ジョーやらアニエスやらに行って、ヴァネッサブルーノに行こうとした途中に、再び無印良品発見。わりと繁盛しておりました。

その後セーヌ川に向かって歩いていくと、途中で小さな画廊のようなところがあり、あまり深く考えずにふらふら入っていくと、コクトーのデッサン画などを見ることができた。パリに来たんだなぁ・・・としみじみ実感。他にもいろいろ面白そうな画廊などありましたが、そろそろ閉店時間が近くて、お店の人達はもう半分帰りかけ。7時頃でも外はまだまだ真昼の明るさというのに、なかなか慣れることができません。

歩きに歩いて、シテ島まで渡ってしまい、コメディーフランセーズくんだりまでやってきたところで力尽きて、CREPERIEにて甘いフルーツクレープとこれまた甘いショコラを飲み、暗くなるまで休んでからホテルへ帰る。



戻る
次へ